コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

おいでませ、助太刀部!! ( No.273 )
日時: 2012/07/27 17:10
名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: L3t15YTe)

「ただいま」

お袋がくれたアドバイスを活かすべく、早歩きで家に帰り、寮の自室の扉を開ける。

「おかえりー」

案の定、先に帰ってきていた相斗が出迎えてくれた。
どうやら、買い物に行ってきてくれていたようで、キッチンに置いてある白い袋からチラチラとオレンジや緑色が見え隠れしている。
出来れば、野菜は野菜室に入れておいて欲しかった。
牛乳とかを買ってきていた場合、放置というのはシャレにならない非常事態なのだが、どうやら野菜とちょっとしたお菓子しか買ってきていないらしい。
ギリギリだが、セーフライン上に乗っかっている。

「翔、今日の晩ご飯はポトフが食べたいなぁ」

相斗が珍しくリクエストをしてきた。

スーパーの袋の中をよく見ると、確かにポトフの材料が見事に揃っている。
まさか、ポトフ食べたさに、買い物に行ったのだろうか。

「分かった。 今日の晩ご飯はポトフとなんか適当に肉と野菜炒めたやつでいいか?」

相斗が布団の上でゴロゴロと寝転がりながら、コクコクと頷く。
もう作り始めようかとも思ったが、時計はまだ17時ちょうど程度を示している。
作り始めるのには、まだ少し早い。

「どーんっ! 2人とも今日休んでたから、出張しにきたよっ!」

もうこれ以上ないくらいに綺麗なタイミングで、扉からストレートのショートヘアの茶髪をなびかせながら、助太刀部の部長——深間秋牙が勢いよく飛び込んできた。
俺はもちろんだが、相斗も驚いているようで、目をぱちくりさせている。

「それと、最近、二人とも悩んでるみたいだったから、チーズケーキ買ってきたよっ!」
「なんで?」

寮の部屋への訪問もどうやって許可を取ったのか不思議だが、悩んでいる人にはチーズケーキという発想の方が不思議だ。
不思議そうな表情をしている俺と相斗を傍目に、深間がまるで我が家のように小皿やフォークを取り出し、チーズケーキを食べる準備を始める。

もしかして、自分が食べたかっただけなのではないだろうか。

「じゃあ、ありがたく戴くよ。 ところで、どうやって男子寮に入ってきたんだ?」
「翔が食べるなら僕ももらうよ」

深間の好意に甘えてチーズケーキを食べ始めると、今まで様子をうかがっていた相斗も食べ始めた。
深間が買ってきてくれたチーズケーキは濃厚で舌触りもよく、とても美味い。

「朱里さんに言ったら、通してくれたよっ。 美味しいでしょっ?」

さりげなく相斗の隣に座って、俺たちと同じチーズケーキをむしゃむしゃと頬張っている深間がそう言った。

ケーキは美味しいが、やっぱり朱里さんが獣盛りの男達の巣窟に何もなしに女子を通してくれるというのは、にわかには信じがたいと思ってしまう。