コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- おいでませ、助太刀部!! ( No.275 )
- 日時: 2012/08/27 10:48
- 名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: wzYqlfBg)
「翔!!」
チーズケーキを食べて帰った秋牙さんに言われた通りに作戦を実行してみようと、疑問が解決したらしく少し機嫌が良い翔に質問をぶつけてみようと思い、彼を呼び止める。
「ん?」
さっきチーズケーキを食べたばかりだというのに、買いだめしてあった棒アイスを食べている翔が、やはり上機嫌なようで、弾んだ声で応え、こちらを振り返った。
「……あのさ! ちょっと気になることがあるんだけど、答えてくれるかい?」
「いいけど……。 まぁ、質問次第だけどな」
僕の勇気を振り絞った発言に、翔は既に本体を食べたアイスの棒をかじりながら軽く返事をしてきた。
こちらの緊張感は翔には全く伝わっていないらしい。
「……最近、何か悩んでるの?」
秋牙さんの作戦は至極単純明快だった。
「考えても分からないなら、直接聞き出せ!」という身も蓋もない手段だが、言われてみればダイレクトに聞くのが一番手っ取り早い。
自分だけであれば、この手の手段は思いつきこそするかもしれないが、実行に移そうという勇気はなかなか起きない。
しかし、今回は「秋牙さんのアドバイスだから」という苦し紛れながら立派な理由が有るため、少し勇気を必要としたが、なんとか尋ねることができた。
まぁ、翔が答えてくれない、っていう可能性だって十二分にあるけれども。
「べっ、別に何もねぇーよ?」
……なんて分かりやすいんだ。
「何かあるんだね? 僕にも言えないことなのかい?」
僕が詰め寄ると翔の方は罪悪感を感じたのか、苦虫を噛み潰したかのような表情を浮かべた。
翔は罪悪感をつつくと簡単に言うことを聞いてくれるのだ。
これは光さん達に拾われてからの十年ちょっとの間に学習したことで、どうやら、使っていないだけで忍さんや佑香さんも気づいているらしい。
「……秘密」
少し迷った後、結局翔は答えをぼかしてそう答えた。
翔が答えをぼかすなんて他人のプライベートについて問いかけた時くらいなもので、かなり珍しい。
個人的なことで教えてくれなかったのは、小学生の頃に聞いた「恋」だなんだの話くらいなもので……。
「ん……?」
僕の声を聞いた翔が少し不思議そうな顔でこちらを見たが、すぐに何も無さそうだ、ということでもそもそと布団の中に頭を戻す。
それにしても、いつの間に布団に潜っていたのだろうか。
そんな新たな小さな疑問と一緒に、さっきからずっと考えていた疑問について考察してみる。
過去に翔が教えてくれなかった数少ないもの——恋について。
————つまり、まさかとは思うが、今、翔は恋をしているのではないだろうか。