コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

おいでませ、助太刀部!! ( No.277 )
日時: 2012/09/15 21:24
名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: rc1iwi.s)

「風葉と岡崎のお弁当が全く同じ」

四人揃って円になるようにして座り、やっとのことでお弁当箱を開けた伊野さんが僕と翔のお弁当を見比べてそう言った。
それを聞いて、秋牙さんも「あっ! 本当だっ」と驚きの声をあげた。

「だって、俺がまとめて作ってるからな。 まぁ、今日のはほとんど兄貴がやったけど」

本当にいつも翔に頼りっぱなしだったりする。
そもそも僕がまともに作れるものというのは、困ったことに卵かけご飯くらいしかない。

「……チッ」
「……伊野さん?」
「何?」

澄ました顔でこちらを見た伊野さんだが、今さっきのあからさまな舌打ちはなんだったのだろうか。
翔と秋牙さんは気にしていないようだが、僕にとってはすごく気になる。

「舌打ちしたよね?」
「してない」

キリッとした表情で即答した伊野さんだが、さっきの舌打ちについて追求してみると、また新たに舌打ちをされた。
これは間違いなく僕にむけて打たれたものだろう。

「伊野さんって、思ってたよりストレートだねぇ……」

僕のお弁当からメインのおかず鶏肉のトマト煮をかすめ取ろうとしていた翔を手で払い、秋牙さんに同意を求める。
しょぼんとした表情をしている翔を傍目に、秋牙さんはおにぎりを食べながらコクコクと頷く。

僕だってこのトマト煮を一番の楽しみにとっておいたのだから、我慢して欲しい。

—*—*—*—*—*—

「ふーっ!! たくさん食べたよっ」
「見てたから知ってる」

ポンッと自分のお腹を叩き、屋上のコンクリートの床にゴロンと横になった深間に、伊野が小さくそう言った。
深間はにかっと笑い、「そうだねーっ」と返す。

こうやってみると、なんとなく伊野や相斗が深間に惹かれたのか分かる気もする。

うっかり非日常に身を投じてしまった身としては、なかなか馴染みがたい空間ではあるが、それでもここには留まりたいと思ってしまう。
同じような境遇にある中子や月海もやはり理由は分からないらしいが、ついついここに留まりたくなる、と言っていた。

「今日は天気もいいし、暖かくてよかったね」

相斗がそう言ってこちらに笑みを向ける。

「あぁ、そうだな」

すぐに非日常に引き戻されてしまうとしても、今しばらくは「日常的な非日常」を。

こいつらと一緒に馬鹿騒ぎしながら、味わっていこう————