コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 俺様メイド?!! ( No.4 )
- 日時: 2011/01/13 18:38
- 名前: 山下愁 (ID: GlvB0uzl)
第1話 2部
それから、翔が運んできたスコーンやプチケーキなどを堪能した優亜は、かなり満足だった。
甘いものが好きな優亜は、翔が作ってくれたお菓子が気に入ったらしい。翔も喜んでいた。
「翔さんは、何で私の専属メイドになったんですか? なるなら、お母様やお父様では?」
優亜は、翔に訊いてみた。
すると翔は、苦笑を洩らして、質問に答える。
「本当はそのつもりだったのですが、私が無理を言って……。同じ歳の優亜様なら、話しやすくて……」
そうなんですか、と優亜は返答した。そして、翔の淹れた紅茶を啜る。
すると、優亜は手を滑らせて、翔のメイド服に紅茶をこぼしてしまった。
白いエプロンには、大きな染みが出来てしまう。
「あ、ゴメンなさい翔さん!」
「気にしないでください」
慌てて拭こうとする優亜を、翔は止めるように言う。
「でも、せめてシャワーを浴びてきてください。メイド服は洗いますので!」
「悪いですよ。私はメイドなのですから、このぐらい——」
「ダメです!」
優亜はビシッと言い放った。
翔が驚いたような表情を作り、首を傾げる。
「あたしが悪いんですから。いいから浴びてきてください」
優亜はそう言って、ほほ笑んだ。
翔は悪そうな顔を作り、観念したような声で告げた。
「分かりました。では、失礼します」
優亜にそう告げると、翔は部屋を出て行った。
***** ***** *****
優亜は、翔のメイド服の替えを持って、浴室まで来ていた。
2、3度軽くノックをして、扉の向こうにいる翔に声をかける。
「翔さん。新しい服、持ってきましたよ」
だが、返事はない。
まだ浴びているのだろうか。女同士なのだから、入っても構わなさそうだ。
優亜は浴室のドアノブを捻り、開けた。
そこに居たのは、上半身裸で短パンを穿いた髪の長い少年がいた。
「え」 「あ」
2人の時間が、止まった。
翔のように黒い長い髪を持った少年は、ごしごしと髪を拭いていて。
優亜はそこにいる少年を見て、フリーズを起こしていた。
何でこんなところに男が?
震える口を無理矢理開いて、優亜は少年に尋ねた。
「あの、あの、翔さんは……?」
すると、少年はため息をついて、タオルを肩にかける。そしてにこやかな笑顔を作ると、優亜に向かって、ただ一言。
「何かございましたか、優亜様?」
この声。翔の声?!!
優亜は、少年の笑顔に目が向けられた。
まさかまさか。翔って——
「男?」
「そうだけど、何か?」
えぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!
「何で、男が、メイドの格好をしてんのよ!」
「別に良いだろうが。個人の自由だろ、世の中にはな、女装が趣味の奴とかがいんだよ」
メイド服を着た翔は、椅子に座って足を組み、偉そうに言い放つ。
優亜は翔を睨みつけたまま、金切り声でどなっていた。
「あたしを騙していたの?!!」
「まぁ、実質そういう事になるなぁ。正直言うと、騙される方が悪い」
翔は悪魔的なほほ笑みを見せ、優亜に言った。
優亜の怒りのバロメータ、臨界点突破。
「騙すなんて最低よ!」
「最低? どうとでも言え。仕事なんだよこっちは」
翔はそう言うと、優亜の目の前に立ち、髪に触れる。
優亜は反射的に翔の腕を払い、2、3歩下がった。涙目で、翔を睨みつけたまま。
「まぁ、そんな事しても無駄だけどね。あんたに俺を辞めさせる権利はない。お前のお父さんにでも言うんだな」
どうせ信じてくれるはずがないけど、と付け足す翔。暇そうに欠伸を1つした。
優亜はベッドから枕を持ってきて、翔に向かって投げつけた。
攻撃を華麗にかわし、翔はため息をつくように優亜に訊く。
「何、俺が嫌ですか?」
「嫌に決まってるでしょ! あんたは男なのよ?!!」
「それがどうしたよ。あ、分かった。あんた男が嫌いだな」
翔に図星を言われて、優亜は顔を真っ赤にする。
それを見た翔は、くすくすと笑いだす。
「〜〜〜〜////!!! 何よ、男なんて!」
「男なんて、何?」
「?!!」
いつの間にか翔に腕を掴まれて、ベッドに押し倒されていた優亜。
結っていないさらさらとした黒い長髪から覗く翔の表情は、余裕の笑み。優亜が逃げないように両腕を頭の上で縛りあげる。
流石男子。握力が強くてほどけない。
「じゃぁ、この状態から何をしてほしい?」
「離れてよ、変態。鬼畜。女装趣味!」
優亜は翔に向かって、罵声を浴びせる。
すると、翔は優亜の腕を持つ手に力を入れた。ギリッと音がする。
痛みに耐えるように優亜は、ギュッと硬く瞳を閉じた。
翔は優亜の肩に顔をうずめて、耳元で低く囁いた。
「別に何もしねぇよ、馬鹿。期待したか?」
優亜の腕を放し、翔はベッドに倒れこんだ。そして、大きく伸びをすると、優亜に告げる。
「眠いからさー、枕持ってきてー」
「自分で持ってきなさいよ! ていうか降りなさいよ!」
「じゃぁいいや。これで寝る」
おやすみ、とだけ告げて翔は寝始めた。
優亜は顔を真っ赤にして、翔に枕を投げつけた。起きなかったが。
「何よ、何でドキドキしてんの。心臓……っ」
優亜は自分の胸を押さえて、ぼやいた。
きっと、びっくりしたからだろう。