コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 俺様メイド?!! ( No.7 )
- 日時: 2011/01/14 17:46
- 名前: 山下愁 (ID: GlvB0uzl)
第2話
朝。晴れた青い空に、まぶしい朝日。
それに交じって、心地よい声が優亜を呼ぶ。
「優亜様。朝でございます、起きてください」
「う〜……。後5分」
優亜はその声に対してそう告げると、ごろりと寝がえりを打つ。
声はため息をついて、優亜の耳に向かって囁いた。
「早く起きないと、キスするけど」
「起きます起きます。止めて止めて!」
優亜は叫んで飛び起きる。
白いベッドの横で笑っていたのは、メイド服に身を包んだ翔の姿だった。
翔はにっこりと笑っていた。
「おはようございます。優亜様」
優亜は、荒い息を整え、翔に向かってどなる。
うん。朝からうるさい限りです。
「何であたしの部屋に入ってくるの?!!」
「それは、優亜様を起こす為に——」
「入ってこないでよ、男のくせに!」
優亜は吐き捨てるように言うと、ベッドから降りた。
翔はすぐに優亜の制服を持ってきて、頭を下げる。そして、黙って部屋から出て行った。
流石に言い過ぎたのか、少し悲しそうな顔をしていた。
「……良いのよ、あいつなんか」
自分に言い聞かせるようにつぶやくと、優亜は制服に着替え始めた。
***** ***** *****
誰もが学校へ登校する、日常的な光景。優亜は安心したように、息を吐いた。
10分前の事。翔が自分の学校へ同伴するとか言いだしたから、断るのに必死だったのだ。
何とか翔は食い下がったが、まさか男の姿になって来るとかないだろうかという仮説が頭によぎり、優亜は辺りに視線を巡らす。
黒髪に中国人っぽい少年は今のところはいない。
「大丈夫かなぁ……」
優亜はそうつぶやいたが、すぐに頭の中から翔の姿を消した。
「ハイ、授業を始めるぞー。まずはテキストの16ページを開いてー」
英語の先生(男)が、教室に居る生徒全員に呼び掛けた。
優亜は英語の教科書を開き、英文に目を落とす。
レッスン2では、女の子と男の子の軽い会話が入っていた。これぐらいなら、優亜でも読める。
「じゃぁ、この英文の応用をやってもらおーう」
英語の先生はチョークを持ち、英文を黒板に書き始める。
黒板が一面英文だらけになった所で、英語の先生は書くのを止めた。そして、生徒に視線を投げる。
読めない。
まったく読めない。
何が書いてあるのかもさっぱり分からない。
優亜は当たらないように、顔を伏せた。
「じゃぁ、1番。相崎、読んでみろ」
「え。あ。ハイ!」
勢いよく答えたが、まったく分からない。
留学でもしてたんですか先生! まったく分かりません!
「あの、分からないんですけど……」
「ん? 簡単だぞ、なぁ?」
先生がそう訊くと、生徒はざわつく。
恥ずかしいと思った優亜は、うつむいて顔を真っ赤に染める。
「相崎。放課後、先生と一緒に勉強しよう? な?」
「ぅぅ……」
すると、がらりと教室のドアが開いた。
ドアの向こうに居たのは、ピンクの包みを持った翔の姿だった!
先生は焦り、翔に向かってどなる。
「き、君! 何しに来たんだ、ここは学校だぞ!」
「優亜様。お弁当をお忘れになって行きましたよ。私とした事が……本当にすみません」
翔は申し訳なさそうに謝ると、優亜の机にピンクの包みを置いた。ちなみに、先生は丸無視で。
優亜は包みを受け取ると、翔に訊いてみた。
「翔、あの英文……読める?」
「……読めないのか?」
低く小さな声で、翔は訊いた。
恥ずかしそうな顔をして、優亜は頷いて見せる。
翔は1度英文を見やると、言葉を紡ぎ出した。
「『ジョンとメアリーは空港でトラブルに巻き込まれました。そこで添乗員さんに尋ねました。
「どの飛行機に乗ればパリまで行けますか?」
「パリ行きの飛行機にお乗りください」
ジョンとメアリーは、何だ簡単な事だと言って笑いあいました。』……で、いかがでしょうか?」
スラスラと日本語訳を言った翔に、先生は舌打ちをした。
優亜はホッとして、胸をなでおろした。
「心配ですので、私も授業に出ます。よろしくお願いしますね、先生」
翔は笑顔で言った。『先生』の所だけ、低くして。
優亜は思わず絶叫してしまった。