コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 俺様メイド?!!-クライマックス突入!!- ( No.100 )
- 日時: 2011/04/01 15:31
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)
第17話
「んっ————」
窓から差し込む陽の光で、優亜は目を覚ました。
見た事のないベッド。そして見た事のない天井。一瞬、ここどこだと思ったがハッと気づく。
「翔の、家か……」
そんな事を思い出したら、いきなり恥ずかしくなった。真っ赤になった顔を押さえ、大きなため息をつく。
しかし、ため息をついていても仕方がない。さっさと起きて学校に行こう。
優亜は制服に着替える為、ベッドから出ようと上半身を起こした。
「ん————」
すると、自分の隣から声が聞こえた。
視線を向けてみると、そこに寝ていたのは————翔?!
「え?!」
自分の目を疑った。何故なら、翔が自分の隣で寝ていたという事実が目下に広がっているからだ。
とりあえず、優亜は混乱している頭で選択肢を選ぶ。
選択肢その1→とりあえず寝かせておく。
選択しその2→ベッドから蹴り落とす。
迷わずその2を選んだ。
「えいっ!」
掛け声と共に、優亜は翔を蹴り落とす。
寝ていたのに蹴り落とされた翔は、ボーと起き上がる。まだ眠そうな瞳をこすり、大きな欠伸をして、優亜に笑いかけた。
「オハヨ、可愛い子ちゃん♪」
途端に、翔は優亜に抱きついた。
いきなり抱きつかれた優亜は、ピシッと石化してしまう。
「ん? もしかして、ちゅーがなきゃ起きられない?」
「きゃぁぁぁぁああぁぁぁぁぁ!!!!」
優亜は甲高い悲鳴と共に、翔の頬をグーで思い切り殴った。
手に残る硬い感触。当本人は口から血を流しながら床に叩きつけられたが、何故かそれでも優亜に抱きついてくる。
もう1度殴ろうと、優亜が拳を作った次の瞬間。
「何してんだ、兄貴」
ドスのきいた声と共に、フライパンが翔の頭に落ちてきた。
ふと、視線を上げると、そこに居たのは機嫌が悪そうな正真正銘の翔だった。
あれ? じゃぁ床で気絶している翔は誰?
「痛いなぁ。もう少し、お兄ちゃんに優しく出来ない訳?」
「貴様みたいな馬鹿はいらん。失せろ」
ズバッと冷たい声で言い放った翔(本物)は、スタスタと部屋から去って行った。
床に胡坐をかき、痛そうに頭をさする翔(偽物)は、優亜に笑顔をみせた。本当に翔と似ている。
「えっとぉ、俺は瀬野大地。あの不機嫌で俺様な瀬野翔の兄でぇす」
よろしくね、と言って大地はピースサインを作った。
いや、いきなり言われましても。
***** ***** *****
いい匂いがするダイニング。優亜、翔、大地が『無言で』朝食を口に運んでいた。
あくまで『無言で』は協調である。
「で、兄貴は何で優亜の隣に寝てたんだ?」
ギロリ、と翔は大地を睨みつける。好きだからなのか、優亜が他の男と居るとメチャクチャ不機嫌になるのだ(ただし、博は別。メイドの自分が好きだと分かっているから)
睨みつけられた大地は、慌てて弁解をする。
「気付かなかったんだよぉ。真面目に。その可愛い子が寝てるなんて」
「黙れ。たとえ兄貴だろうとヤクザの若頭だろうと総理大臣だろうと優亜と一緒に寝た男はブチ殺す」
箸を短剣のように握り、翔は大地に刺そうとした(危ねぇな、おい)
このままでは殺人が起きてしまうと思ったのか、優亜は急いで大地から翔を引き剥がした。
「待ってよ。あたし、何もされてないから。ね?」
なだめるように笑顔を作る優亜。
翔はチッと舌打ちをして、自分が使った食器を真紅に片付ける。そして早足で自室へと入って行った。
バタンッと乱暴にドアが閉じられたと同時に、大地は深いため息をついた。
「ハァ……。昔はいい子だったのに」
「えっと、翔ってあんな性格だったのは、昔からじゃないんですか?」
「違う違う。きっと俺らの性」
朝とは全然違う笑みを浮かべ、大地は説明する。
「翔は人に興味を示さないでね、狼みたいな性格だったんだ。けれど、家族の事はきちんと気にかけてくれた。でも……俺らはあまり構ってやれなかったからね」
あはは、と笑う大地は、どこか悲しげだった。
優亜が何故そんな顔をで笑うのか、と訊く前にメイド姿の翔が現れた。
ガッシリと優亜の腕を掴み、そしてスタスタとダイニングを出て行く。
「うぁ、ちょっと翔?! どこへ————」
「学校だけど。遅刻したいんなら俺は止めないよ」
「ハゥァ!? だ、大地さん行ってきます!」
「ハイハイ行ってらっしゃい」
2人が家から出て行き、大地は誰も居なくなった部屋で1人つぶやく。
「あの子が相崎優亜ちゃんか……。クスクス」
声は明るいのに、大地の表情からは笑顔が消えていた。