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- Re: 俺様メイド?!!-クライマックス突入!!- ( No.104 )
- 日時: 2011/04/02 21:46
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)
第17話 2部
「ねぇ、優亜さん。今日は優亜さんの家がある方向から反対の方から登校して来ましたが、一体何があったんです?」
雛菊は猫のぬいぐるみを巧みに操りながら、机の上に突っ伏す優亜に訊いた。
当本人、優亜は朝から大地に抱きつかれ、ブチ切れた翔を止めるのに大変だったらしく、精神がもう擦れ擦れ状態。
翔はと言うと、まだ機嫌が良くなっていないらしく、腕を組んだままブスくれた表情で優亜の横に立っていた。
「ちょっとね……家出中かな?」
「家出ですか。親と喧嘩でもしたんですか?」
小鳥のように首を傾げる雛菊に言ってやりたい。本当は大輔と結婚するのが嫌だから逃げているんだよ、翔の家にお世話になっているんだよと。
だが、そんな事を言ったら隣に居るブスくれ女装メイドが何を言ってくるか分からない。
「え、えへへ。まぁ、そんなとこかな?」
優亜は自分の命の為に、嘘をついた。
その言葉に納得したのか、雛菊は笑顔で「大変ですね、仲直りできると良いですね」と言った。
いえ、本当は結婚をしたくないだけなんだけど。
「……ねぇ、優亜。思うんだけど」
と、いきなり後ろから零音が声をかけてきた。
零音は翔を指差し「何があったの?」と訊いてきた。翔が不機嫌なのに気付いたらしい。
「翔、いい加減機嫌を直してよ。美人の顔が台無しじゃない」
優亜は傍でブスくれる翔に、注意するように言った。
しかし、翔はギロリと優亜を睨みつけ、フイッとそっぽを向いた。何か、まだ機嫌を直していないみたい。
「翔さん!! 機嫌直してくださいよぉ、朝から優亜が何をやったのか知りませんがぁ」
博が満面の笑みで、翔の機嫌を取るように話しかける。
翔は博も優亜と同じように睨みつけ、スタスタとどこかに行ってしまった。
本当に機嫌が悪いみたい。もうどん底なぐらいに。
優亜は、教室からドシドシ去って行く翔の後ろ姿を見て、盛大にため息をついた。
***** ***** *****
昼時になっても、翔の機嫌はあまり良くなかった。だが、朝よりかは少し機嫌が良くなっているのか、いつもの丁寧口調で博の告白をよけ、雛菊や零音とも仲良く話している。
しかし、優亜と目が合うと翔はすぐに視線をそらすのだった。
「翔さん、優亜と目が合うとそらすね。優亜が何かやったんでしょ」
恵梨が卵焼きを口に運びながら、諭すように優亜に言う。
心当たりがありまくりな優亜は、ただ黙って恵梨の話を聞いていた。
やっぱり朝の事なのかなー。
「優亜、何をしたのか分からないけど。謝った方が良いよ?」
「そうだよね。やっぱり、謝った方が良いよね……」
反省するように、優亜はしんみりとした声で言う。
その声を聞いた恵梨は、優亜の腕を掴み、そして翔の腕も掴んで廊下に放りだした。
「ちょっと、恵梨?! 何を——」
「あのね、全員分のお茶を買ってきて。翔さんも手伝ってくださいよー」
扉越しに居る恵梨の声は、少しだけ笑っているように思えてきた。
優亜は不満そうに顔を歪めたが、仕方なく購買の方に歩みを進めた。その後ろに、翔も不機嫌そうについて行った。
2人が廊下に居なくなった事を確認し、恵梨はほくそ笑む。
「これで、あの2人が仲直り出来るといいわ」
「え? 優亜さんをただパシっただけじゃないんですか?」
雛菊はおにぎりを食べながら、扉に張り付いている恵梨に訊いた。それがボケなのか本気なのか分からない。
恵梨は「違うわよ」と返事をして、自分の席に戻った。
「優亜が何かしでかしたんなら、謝るのが道理って物でしょ?」
「おぉ、流石学年1位。考える事は伊達じゃないな」
「……優亜と翔さん、仲直り出来てると良いね」
「そうですねぇ。あの2人が笑いあっている所を見るの、すごい和みますものね」
一方、優亜と翔の方は————
「……ねぇ、まだ怒ってる訳?」
優亜は隣で不機嫌そうに歩く翔に問いかけた。
「怒ってるに決まってんだろ」
舌打ちと共に言葉を吐き捨てた翔。本当に不機嫌。優亜に対してだけど。
「そりゃぁ、大地さんに気付かなかったあたしも悪いけど……」
「お前に対して怒ってる訳じゃねぇ。兄貴に対して怒ってるんだ」
ふと、優亜が顔を上げて翔の様子をうかがうと、しょんぼりとした表情を浮かべた翔が自分の隣を歩いていた。
「嫉妬してただけなんだ、兄貴に。俺だって、優亜の隣に寝た事もないのに……そんな事しやがって。あーもう、俺らしくねぇ!!」
頭をぐしゃぐしゃ掻き毟り、翔は廊下を猛ダッシュで駆けだす。1番に自販機の前にたどり着き、バキッと(何の罪もない)自販機を殴った。
「翔は、大地さんが羨ましかったの? その、あたしの隣で寝てた事について」
「あぁそうだよ!! 羨ましかったに決まってんだろうが!」
顔を真っ赤にして大告白をする翔。
本当の事を聞いた優亜は、にっこりと笑った。
「嬉しい、そう思ってくれてたなんて」
にっこりと笑いかけられたのが恥ずかしかったのか、また顔を赤く染め翔はそっぽを向く。
「さ、さっさとお茶買って行くぞ。全員、待ってるからな!」
「うん。そうしよっか」
全員分のお茶を買う為に、優亜は自販機にお金を入れた。
————あたし、翔が好きなんだな。
————だって本当の事が聞けて、嬉しかったんだもん。
————いつか、告白出来るといいな。