コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 俺様メイド?!!-クライマックス突入!!- ( No.107 )
- 日時: 2011/04/05 16:35
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)
第17話 3部
「え? 優亜って今、翔さんの家に泊まっているんだ」
ペットボトルのお茶に口をつけながら、博は驚いたような声を上げる。
あの後、仲直りが出来た(であろう)2人は、笑顔で教室に戻ってきた。そして優亜は親と喧嘩している事と、翔の家に匿ってもらっている事を打ち明けた。
実際、結婚から逃れる為に匿ってもらっている事は言えない。言ったら何か指摘されそうで怖い。
「まぁ、俺が言える事は親と早く仲直りしろよって事だけだ。でもいいな、優亜は」
「何がいいのよ」
羨ましそうに言う博に、優亜は首を傾げた。
「だって、翔さんのあんな姿やこんな姿を見放題……//」
「まるで変態ですね」
自分のどんな姿を想像されたのか分からないが(というか分かりたくもないが)、翔はにっこりとした笑顔でズバッと言い放った。
博はハッキリと言われたのがショックだったのか、机に突っ伏してシクシク泣き始めた。
そんな博を見て、優亜は明後日の方向を見て苦笑するしかなかった。
言えない。翔が男だって事……。
「にしても、燐さんと雫さんは最近見かけませんね。お2人に何かあったのでしょうか?」
お茶のペットボトルを握りながら、雛菊は訊く。
2日前、自分を助けてもらった以外で優亜も燐と雫を見ていない。自分の家があるからと言って、翔に押しつけられたきりだ。
かと言って、2人が弱い訳でもないから心配はしていないのだが。
むしろ2人は強い。単体だけでも戦争を渡り歩けるんじゃないかと思うぐらいだ。
「大丈夫ですよ、あの2人だってお強いですからね」
「まぁ、翔もそう言ってるし……。そうっぽいよね」
「そうですよ。しぶとく生きてると思いますよ、特に燐さんの方」
翔が冗談交じりにけらけらと笑いながら言った時だった。
1つの風と共に、トンッという軽い音が聞こえた。
視界をよぎる黒髪——そして執事服とメイド服。
「酷いですね、優亜様を心配してここまでやって来たというのに。何がしぶとくですか」
燐は肩をすくめ、呆れたようにつぶやく。もちろん、窓のサッシの所で。
同じように雫も、ため息をつきながら翔に、
「誰がしぶとく生きているんですか。それはあなたでしょう?」
冷たく、かつ無感情にさらに無表情で言い放った。
2人そろってズバッとツッコまれた為、翔は何も言い返せなかった。ただそっぽを向いて舌打ちをした。
「燐さん、雫さん!! 無事だったんですか!!」
優亜は2人が戻ってきてくれて嬉しいのか、キラキラと表情を明るくした。
燐はにっこりとした笑顔を浮かべ、そしてペコリとお辞儀をする。
「優亜様もご無事で何よりでございます」
「それより優亜様、お体の方は大丈夫ですか?」
格好良くお辞儀をした燐を押しのけ、雫は優亜に問う。
質問の意味が分からない優亜は、とりあえず首を傾げた。何故かため息をつかれた。
「優亜様、あなた様はいくらなんでも天然すぎます。年頃の女子が男と1つ屋根の下、と考えると私は夜も眠れませんでした。本当に大丈夫なんですね、大丈夫なんですよね?」
「あ、の。雫さん? ここ学校……」
と、言うが早か、優亜はとある1つの事に気付いた。
ここには全員居るではないか。翔が男だと知らない友人が全員。
優亜は完全に思考停止した。あー、終わった。
すると、翔がクスクスと笑うのが耳に届いた。
「もしかして、兄さんの事ですか? そうですよね、今日も優亜様に抱きついておられましたし。ですがご安心を。私が責任を持って撃退しておきました」
にっこりとしたほほ笑みで翔は言う。
ハァ? と雫は返事をして、
「何を言っているのです。それh「あれ、翔じゃん♪」
反論しようと思ったら、燐に口をふさがれどこからか降ってきた声に邪魔された雫。
誰だ、とつぶやき皆は声の方を向いた。
「や。皆、お元気かな?」
清々しい程に綺麗な笑みを浮かべた大地がそこに居た。
優亜は持っていた箸を落とし、翔は大きなため息をついた。
「あのね、翔にちょっと伝えなきゃいけない事があってさ。わざわざ学校に来たんだよ」
「わざわざ来る必要はなくても、携帯があるでしょう? 勉強してください」
「いやぁ、俺さ携帯ないの。つか壊れた? あはww」
「……笑ってないでください。疲れます」
けらけらと笑う大地に、翔はまたもため息をついた。
「あ、もしかして翔のお友達? 初めまして、俺は瀬野大地。妹の翔がお世話になってます」
「お兄様でございましたか!! 俺、結城博と申します。妹さんを俺にください!!」
「ゴメンね。俺が手塩をかけて育てた妹はやれないわ。つーか出直してこい」
大地はけらけらと笑いながら博の告白を流した。
それで、と翔は1つ咳払いをしてから話を切りだす。
「兄さん、用途は何でしょうか?」
「あぁそうそう。今日、ちょっとお仕事が入ったから本家に戻るよ。だから今日は2人で仲良くやってくれ」
あは、と笑って大地は窓から飛び降りた。
「優亜様。今日のお夕食はハンバーグにしましょうか」
「和風が良いな。お願い」
「かしこまりました」
のん気に夕飯の話をしている場合だろうか。