コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 俺様メイド?!!-クライマックス突入!!-人気投票実施 ( No.116 )
- 日時: 2011/04/11 18:34
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)
第17話 4部
5時限目である。優亜達は校庭で体育をしているので、翔達が見張るまでもない。というか見張ろうとしたら、優亜に全力で拒否されてしまい代わりに雫が見張りに行っている。
誰1人居ない教室で、翔と燐は居た。
「で、あなたは優亜様の事をどう思っているのですか?」
沈黙を破ったのは、燐の声だった。
翔は教壇を背にして「何が」と答える。
「とぼけないでください。あなたは、優亜様をどう思っているのです?」
「……お前はどう思っているんだ?」
メイドの時と声が違う、本来の声で翔は凜に問うた。
「僕は優亜様が好きです。いつも優亜様を考えてしまう、そんな感じなんです。愛しています。この気持ちは、誰にも譲りません」
堂々とした声で、燐は告げた。
答えを聞いた翔は、くるりと燐に背を向けた。
「……別に良いんじゃねぇの? 俺は関係ないし、優亜とお似合いなんじゃ————」
「僕はそんな答えを聞きたいんじゃないんです。きちんと、あなたの答えを聞かせてください」
話をそらそうとする翔の言葉を遮り、燐は問い詰めた。
「……俺だって、俺だって!! 優亜が好きだ、あぁ好きだよ大好きだよ!! 本当は誰にも渡したくねぇ、俺だけを見てほしいんだ!!」
やけくそで叫んだ翔の胸倉を、燐が掴んだ。
「だったら、何故その事を告げないんです? あなたも男なら、女に告白出来るようになったらどうなんですか!!」
そっぽを向き続ける翔から手を放し、燐は舌打ちをした。
再び訪れる沈黙。その沈黙を破ったのは翔だった。
「俺が、あいつと合うか?」
「何を言って——」
燐が翔の方を向いた時、一瞬目を疑った。
黒板の前に居たのは、確かに翔だった。だが何故、一瞬だけその悲しげな横顔が東に見えたのだろう。
「昔からあいつの事は見ていたんだ。だけど、俺とあいつじゃ釣り合わない。分かっているんだ、んな事は。俺は諦めた、あいつの隣で男としているのを」
ツイ、と身を翻して、翔は教室から出て行った。
喧騒と人の声が残る廊下に座り込み、翔は静かに涙を流した。
これでいい。自分のこの恋を、捨てる事にしたんだ。
分かっているさ。そんなのがダメなんだと、自分も優亜に気持ちを伝える方がいいのだと。
しかし、本当の姿を知った時、優亜に引かれるぐらいなら本当の姿を隠した方がいいのだ。いつかバレるなら、一生バレずに傍に居た方がいい。
「ゴメン、優亜。俺が本当の俺として隣に立つのは、一生無理だ……」
そこに居ないはずの優亜に、翔は語りかける。
「でも、俺はちゃんと好きだから……。他の奴と、幸せになる事を願う、から……」
————果たして、その答えは正しいと言えるのだろうか。
彼が選んだ答えもまた1つ。そして彼女が抱える彼への思いは、一体どうなるだろうか?
「……馬鹿な人」
そんな翔の姿を見て、燐はただ一言つぶやいた。
***** ***** *****
そして放課後、
「翔。帰ろ」
優亜は子供のような笑顔を浮かべ、翔の手を取った。
その行動に翔は一瞬だけ苦しく何かを我慢するような顔を浮かべたが、無理矢理な笑顔を作って手を振り払う。
「申し訳ありません。今日の晩御飯の買い出しがありますので共には帰れません」
「えー、じゃぁあたしも手伝う」
ぷぅと頬を膨らませてついて行こうとする優亜を、翔はトンッと押した。
衝撃によろけ、優亜は数歩退がった。
「燐、優亜様の護衛を頼みます。私の家は知っているでしょう?」
教室の隅でボーと立っていた燐に声をかけ、翔はスタスタとどこかに行ってしまった。
その背中を掴もうと優亜は手を伸ばしたのだが、哀れその手は空を掴む事しか出来なかった。
「……帰りましょう、優亜様」
「うん。ゴメンね、燐」
にっこりと笑みを浮かべたはずなのに、どこか苦しいのは何故だろう。