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Re: 俺様メイド?!!-クライマックス突入!!-更新再開 ( No.133 )
日時: 2011/05/13 17:06
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)

番外編 第3話


 あの日以来、優亜は自分を助けてくれたあの青年を探すべく、城の書庫に籠りっぱなしだった。
 住民登録表(城に置いてあるもの)を読み、覚えている限りで青年の顔を探す。しかし、青年の情報はどこにも載っていなかった。どうやら、あの青年は流れ者らしい。
 優亜はため息をついて、ページから目を上げた。

「このまま、見つけられないのかな……?」

 静かで、そして寂しそうな声が書庫の中に響く。
 すると、外から叫び声がした。何かと思って、優亜は窓の近くまで行く。
 そこで見つけたのは、あの時助けてくれた青年が護衛隊に連れられて城の中に入って行くところだった。

***** ***** *****

 それは、ほんの10分前の事である。
 青年はいつもよりか遅い10時に目が覚めた。眠い目をこすり、ボロボロのベッドから這い出る。
 カーテンが閉まった窓に近付き、カーテンを思い切り開ける。朝日が大量に差しこみ、暗かった部屋が一気に明るくなった。
 青年は顔をしかめた。低血圧なので、朝が嫌いなのだ。

「もう1度、寝るか……」

 シャッとカーテンを閉め、再び眠りにつこうとベッドに向かったその時、突然ドアが叩かれた。
 叩かれた、というよりは何かに殴られた音の方が近い。
 青年は面倒くさそうにドアへ向かい、外の様子をうかがった。
 殺風景な廊下に、血の跡がある。それらを目で追うと、その先に大家が倒れていた。

「ババア!!」

 青年は大家に駆け寄った。
 誰かに頭を殴られたようだ、額から血を流している。

「ババア、しっかりしろ!!」

「んだようるせぇな……。ん? お、お前……大家さんを……!!」

 青年の隣にある部屋のドアが開き、中から男が出てきた。
 男は倒れている大家と青年を交互に見て、そして口を大きく開けてわなわなと震えだす。どうやら青年が大家を殴ったという事になっているらしい。
 青年は首を振って否定の意を示した。

「俺はやってねぇ!!」

「だったら、そこに落ちてる鎌は何なんだよ?」

 震える指先で、青年の向こうを示す男。
 青年はその方向に目をやると、そこには血の付いた鎌が落ちていた。それは青年がいつも愛用している柄の赤い鎌である。
 何故ここに落ちているのかが分からない。だが、青年は「やってない」と叫んでいた。
 しかし、男は信じてもらえず廊下に据え置かれていた電話を手に取り、どこかに連絡し始める。
 身の危険を感じた青年は鎌をひっつかみ、その場から走り出した。
 階段を駆け降り、入口をダンッと開ける。そして青空が輝く外へと逃げ出した。

「やって、ねぇっ……ての」

 裏路地に逃げ込んだ瞬間、ドンッと誰かにぶつかった。

「痛ェ……、何するん……ッ!」

 青年の目に映ったのは、城の護衛隊隊長の博と、副隊長の雛菊・カシアルだった。
 博は首を傾げて、息を荒げている青年に問いかける。

「どーかした? 何かあったのか?」

「隊長、この人おかしいです。何か罪でも犯したような、そんな感じがします」

 雛菊は鋭い視線を青年に注ぐ。
 「そんなもんか?」と博は頭を掻き、答えた。
 青年は2人に背を向け、逃げ出すように走り出す。護衛隊になんか捕まったら殺される騒ぎじゃない。
 誰にもばれずに処刑されるなら、青年は必死になって逃げないだろう。というか、青年は犯罪など犯してはいないのだ。
 ただ、この罪が優亜にばれたくないから逃げるのだ。

「待ちなさいよー、何があったのか話してくれてもいいんじゃないのー?」

 博が後ろから追いかけてくる。
 青年はチッと舌打ちをすると、手に持っていた鎌を握り直し、博と向き直った。

「……お前ら、お偉い護衛の人は……俺の話なんざ、聞かないだろ」

「んー、話してくれるの? じゃぁ」

 後から追い付いた雛菊は、警戒するように剣を抜いたが博に「収めな」と言われる。
 渋々雛菊が剣を収めたところで、博はにっこりと笑った。

「とりあえず、城においでよ。お話ぐらいは聞いてあげる。それからだよ、俺らを殺すなり逃げるなりするのは」

「……分かった」

 青年は鎌を下ろし、素直にうなずいた。