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Re: 俺様メイド?!!-クライマックス突入!!-更新再開 ( No.145 )
日時: 2011/05/21 15:47
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)

番外編 第9話

〜翔視点〜

 もうすぐこの国は終わるだろう。
 娘を愛しているが為に、国を1つ壊滅させてしまったのだから。
 当然、その国には恋人やら愛人やらそんな類の奴が居たのだろう。革命を起こされ、王家が滅ぶのは当たり前の事だ。

「……翔、窓を閉めてちょうだい」

 喧騒を遮る為に、俺は優亜様の命令に従い窓を閉めた。
 ガラスの向こうに見えるのは、護衛隊共が革命軍と闘っているところ。

「翔、私は殺されてしまうわ。民衆は私が婚約者の国を滅ぼしたと考えているもの」

 優亜様は端麗な顔を愁いの色に染め、静かに言葉を紡いだ。
 俺はただ、黙って優亜様の傍に仕える事しか出来ない。
 そう、俺はただのメイドだ。今は『あいつ』じゃないんだ。『あいつ』のようには戦えない。

「優亜様。私は、他の皆の様子を見に行ってきます。くれぐれも部屋の中から出ないように。もし何かあれば、大声で私の名を呼んでください」

 1度だけ優亜様をしっかりと抱きしめ、俺は部屋を去った。
 馬鹿な革命軍め、優亜様はそんな事をしないと分かっているだろう。
 窓の方を見やると、革命軍の先頭に斧を持った黒髪の女性が居た。
 あいつの名前を、俺は知っている。雫・ルートゥルスだ。
 ……なるほどな。あいつは優亜様の婚約者が居られる国に、思い人が居たはずだ。何度も道で人に言っていたのを聞いた事がある。
 そうか、王家を滅ぼそうと考えたのはあいつか。

「やってくれるじゃねぇか。雫・ルートゥルス」

 窓枠を思い切り掴み、少しだけへこませた。
 あ、ヤベ。これ弁償物だろうか。だとしたら今の俺の給料で、何とかなるものだろうか。
 ……無理、だろうなー。

「ん? おー、優亜様のメイドさん。名前はー、そうだ。翔や!!」

「……睦月・オルディア様。一体何のご用でしょうか、傭兵ともあろうお方がどうしてこのような場所に居られるのです?」

 傭兵ならば、革命軍と戦っているだろうに。
 睦月は苦笑しながら、ここにいる訳を話してくれた。

「燐さんを探してはんの。あの人、どこに居るんか分からへんからな」

「……革命軍と戦っていらっしゃるのでは?」

 俺がそう言うと、睦月は笑いながら否定した。

「それはない。あの人は勝たない相手とは戦わないんや。どーせ、金だけもらって後はずらかろうぜみたいな感じやないの?」

 なんて卑怯な奴らだ。こんな奴ら、傭兵の風上にも置けない。
 ……いや、俺の考えが間違っているのだろうか。傭兵だって人、忠誠を誓ってもいない雇われ兵だ。
 金さえもらえれば誰にだって従い、戦に出て、国を滅ぼす。この世界に居る傭兵は大体がそうだ。
 だが、1人だけ違う奴が居た。それが『アズマ』だ。

「アズマさんなら、絶対諦めないで革命軍と戦ってたと思うんやけど。おい達は違うからなー」

「分かりました、あなた方がそう言うなら私にも考えがあります」

 俺はメイド服のポケットから袋を取り出し、睦月に投げ渡す。
 いきなり袋を投げ渡されて不審に思ったのか、睦月はしげしげと袋を眺めていた。

「俺の全財産だ。お前にくれてやる」

「……何が目的なんや? メイドさんがおいを雇うなんて、何を考えてるん?」

 睦月が怪訝そうな目で俺を見てくる。

「それでお前と燐・エタルナを雇う。だからそれで、優亜様を守れ」

「何を考えてるんや?! お前、おいに死ねって言ってるような感じと同じやぞ。それでええんか?!」

 睦月は袋を握り締めながら、必死の形相で反論してくる。
 知るか。何の為の傭兵だ、ただ金をもらって戦うならば戦で死んでこい(←理不尽発言)

「……冥土の土産として、俺の通り名を教えてやろうか」

「ハァ? そんなもんどーでも………………え、マジで、ホンマに? 嘘でしょ?」

 これで懐柔は完了だ。
 革命軍が優亜様まで迫ってくるのには、まだ時間がある。それまでに、


「今日のおやつを作ってこなければなりませんね」