コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 俺様メイド?!!-クライマックス突入!!-更新再開 ( No.152 )
日時: 2011/05/23 17:37
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)

第18話 第2部


 夕日が差し込む華月学園1−Aの教室。そこには、恵梨達がきちんと居た。

「優亜が連れさらわれたって……それ、本当?!」

 恵梨が燐に向かって叫ぶ。ちなみに、この場に翔は居ない。
 燐は苦しそうな表情を浮かべ、小さくうなずいた。
 その途端、雛菊が恵梨を押しのけて燐の胸倉を掴んだ。

「あなたは……優亜さんと一緒に帰っていたんじゃないんですか? 1人で優亜さんを帰らせたのですか?!」

「違います。優亜様は……元々家に居た人にさらわれたんです」

 燐は雛菊の腕を払いのける。

「どーゆー意味だよ。誰なんだよそいつ、ぶっ殺してやる!!」

「俺の兄だ」

 博の言葉が終わると同時に、タンッという音がして夕焼け空を背負った翔が現れた。
 さっきのような泣き腫らした瞳ではなく、今にも誰かに襲いかかりそうな感じの目をしていた。

「どういう……事なの?」

 零音が翔に訊く。
 窓枠から飛び降り、翔はハッキリとした口調で答えた。

「俺の兄がさらっていったんだ。どうしようも出来なかった、あの場に俺は居なかったから……」

「ちょ、待ってください。翔さんのお兄さんと翔さんとどういう関係が、あれ?」

 混乱する頭で博は言葉を紡ぐ。
 翔は不安そうな表情を浮かべる皆に、笑顔を見せた。


「兄がやらかした事を始末するのは、弟の役目ですから」


 そう言い残し、タタッと教室を出て行く。
 皆の時が止まった————。


「……ねぇ、燐さん。訊きますけど、翔さんって」

「ハイ。正真正銘の男ですよ?」

「……嘘でしょ」

「本当ですよ。でしたら、今度彼に確かめてください」

***** ***** *****

 日が落ち、睦月は今日の晩御飯の支度をしていた。
 すると、台所でテレビを見ていた弟が、いきなり声を上げる。

「兄ちゃん電話ー」

「ん? 誰からや? 直樹ー、ちょっと取って」

 弟から携帯を受け取り、睦月はコールボタンを押す。

「ハイ、もしもし。堂本ですー」

『睦月か?』

「あ、東さん……?」

 少し声が震える。あの写真に写っている『東』ではなく、自分が知る『東』からかかってきたのだ。
 最強の不良『東』——言わずもがな、正体不明の謎の不良だ。
 どんな姿で居るのも分からない。この街最強の不良——自分から電話をかける事はあっても、相手からかかってくる事はなかった。
 もしかしたら、あの写真に写っていた東がかけているのかもしれない。

「どないしはったん? 東さんから電話をかけてくるなんて、珍しいな」

『あぁ。ちょっと頼みたい事があってな。俺の家の場所を教えてやる、俺の制服を取ってこい』

「制服? まぁいいけど、どこへ届ければいいんや?」

 睦月は電話越しに首を傾げた。
 電話の向こうに居る東は、至って冷静な声で場所を告げた。

『七尾財閥のマンションさ』

 プチッと電話を切り、睦月は立ち尽くした。
 七尾財閥と言えば、あの写真の東が雇われている場所だ。そんな所にわざわざ行きたくない。行きたくないが、

「……ハハッ。おもろい事を考える人やな。ホンマに」

 何故か睦月は笑っていた。それはもう、楽しそうに。

「直樹ィ!! 兄ちゃん、これから出掛けてくるわ! 閉じまりしときィ!」

「え、ちょ。兄ちゃんいきなり?!」

 睦月は家を飛び出し、東が住んでいる家までのルートを頭に描き出す。
 走って行ける距離だ。この前、鍵ももらった。

「やってやる……。東さん、おいはあんたについて行くで!!」

***** ***** *****

「なぁ、優亜ちゃん。こっちのドレスの方が可愛くない?」

「可愛くない」

 ベッドの上でぶすくれている優亜は、短く冷たい言葉を発した。
 大地はピンクのドレスを手にしてにっこり笑っていたが、優亜の言葉を聞いてドレスを床に叩きつける。

「ねぇ、まだご機嫌斜めな訳ですか。俺が七尾坊ちゃんに雇われてるからそんなに機嫌が悪いの?」

「えぇそうよ。あたしに黙ってた訳ね。それで無理矢理結婚させる気なのね!!」

 優亜は目にいっぱい涙をためながら、金切り声でどなった。
 対する大地は肩をすくめて見せる。

「だって言う必要もないじゃない。何で俺の仕事を言う必要があるの?」

「……教えてほしかったよ。こんな事になるなら、いっそこの恋を諦めた方が良かった……」

 すすり泣く優亜。大きな瞳からポロポロと涙がこぼれる。
 この恋を諦めたくないと決めたのに、好きだと言うはずだったのに。そう思った時だ。

「あ、あ、あ、東さん!!」

 いきなりドアをばタンッと開き、黒ずくめの男が飛び込んできた。

「何よ、一体」

「し、侵入者? いえ、客です!」

「客? 追い返しなよ」

 男は首を振った。
 大地の頭に、ある仮説が浮かぶ。その事を考えると、見る見るうちに顔が青ざめて行った。

「め、メイドが1人で……乗り込んできました!」