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Re: 俺様メイド?!!-クライマックス突入!!-更新再開 ( No.157 )
日時: 2011/05/28 19:09
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)

第18話 7部


 優亜は大地に押しつけられたピンクのドレスを着て、渋々身に着けていた。
 ふと、窓の外を見ると明るいネオンの色がガラスから溢れている。
 不意に涙が目に溜まるような感じがした。

「会いたいよ……」

 頭に思い浮かべるのは、いつも助けてくれた『彼』——。
 その時、部屋のドアがノックされる音が響く。

「優亜ちゃん。入るよ」

 入って来たのは大輔だった。白いスーツに身を包み、髪を七三に分けている。
 優亜は大輔をまるで虫でも見るかのような目で睨みつけ、視線をそらす。

「う〜ん、やっぱり可愛いね。僕のマイスウィートハニー」

「うざい」

 優亜は辛辣な言葉で一蹴する。大輔の方を一瞥もせずに。
 大輔はため息をつき、優亜の隣に立ち彼女の細い肩に手を乗せる。

「大丈夫だよ……僕は優しいから、ね」

「何をする気?」

 優亜は乱暴に大輔の手を振り払い、逃げるように距離を取る。
 払いのけられた腕をじっと見つめ、大輔は笑った。

「何って……僕と優亜ちゃんはいずれ結婚するんだから、既成事実に決まってるじゃないか」

「キモい」

 優亜は苦々しい顔でバッサリと言い捨てる。
 流石にこれには大輔もムカついたらしく、パンパンと2回手を叩いた。
 すると、大地がドアを開けて入って来た。優亜が誰よりも知る友人達を背負って。

「恵梨、博、雛菊、零音!! 燐さん、雫さんに睦月先輩まで……!」

 自然と声が震えているのが分かった。
 大地は、優亜に笑いかけて背負っていた恵梨達を床に落とす。
 ドサドサと鈍い音がして、皆が床に叩きつけられた。

「どうして……」

「決まってるじゃないか。害虫退治だよ。僕らの愛を邪魔する奴は、誰であろうと許さない」

 何も言わない大地の代わりに、大輔が答えた。
 優亜は大輔を睨みつけ、

「酷いわ……!」

 と、言った。
 だが、大輔は笑うのを止めなかった。
 優亜の腕を引き、抱き寄せようとする。

「東。誰も来ないように見張っていろ」

「分かりました」

「嫌ッ!! 誰か助けて!!」

 だが、その声は誰にも届く事はなく、むなしく宙に浮いているばかりだった。

***** ***** *****

 大地はしめられたドアに背を預け、ゆっくりと天井を見上げる。
 最上階のスウィートルーム……そこが、優亜達が居る部屋だ。
 大地は、静かに天井へ手を伸ばす。
 先程、優亜の友人達をボロボロにする時に言われた言葉を思い出す。

(……君は、弱いんですよ)

(それだったら……東の方がよほど強い)

「誰だよ、東って」

 大地はから笑いを浮かべる。
 どうせ戦うならば、彼とが良い。
 メイドであり、そして自分の弟でもある『彼』——

「んぁ?」

 突如、大地の前に足が見えた。
 ただの足じゃない。振り上げられた、蹴る為の足だ。
 避けようと思ったが、足の方が早すぎて避けられなかった。

「ぐぁ」

 すごい勢いで腹を蹴られ、木製のドアを破壊して部屋に転がり込む大地。

「東?! い、一体どうしたのだ!」

「蹴られただけッス、大丈夫……多分」

 埃が舞い、部屋を煙だらけにする。
 その煙の向こうに、誰かが居た。
 シルエットから見えるのは、ワンピースみたいな何かを着ている女の人。やがて、煙が晴れると誰かが姿を見せる。
 白と黒を基調としたメイド服。頭には純白のヘッドドレスをつけ、漆黒の髪を左下に結んでいる。
 細い足で飛び散ったドアを踏み砕き、広い部屋に踏み込む彼——。

「お、お前は……!!」

 優亜の顔が自然と明るくなる。
 大輔は苦々しげに舌打ちをして、大地は苦笑を洩らす。

「どうも。相崎家のメイド、瀬野翔です。優亜様をお迎えにまいりました」

 翔は、にっこりと笑顔を見せた。