コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 俺様メイド?!!-クライマックス突入!!-更新再開 ( No.159 )
- 日時: 2011/05/29 14:32
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)
第19話 2部
「……俺は、昔の『俺』とは違うんだ……。ただ、破壊するだけの、奴とはもう違う……!」
ゼェ、ハァと肩で息をしながら、途切れ途切れに言葉を紡ぐ翔。
大地は怪訝そうに眉を寄せ、首を傾げる。
「どう違うの? 現に、翔は今にも負けそうなんだけどさ。相棒も居ないようじゃ、俺には勝てないよ」
まぁ、居ても勝てないけどねと大地は付け足す。そしてスーツの裏から折りたたまれた棒みたいなのを取りだした。
その棒を真っ直ぐに直し、先端に曲がった刃を取りつける。
柄が銀色の、立派な鎌になった。
「さぁ、翔。これで終わりにしてあげるよ。大丈夫、殺すとかそういう真似はしないから。その長い髪をバッサリ切ってあげて優亜ちゃんの隣に居れなくなるぐらいに恥ずかしい姿にしてあげる」
黒い笑みを浮かべながら、翔に歩み寄って行く大地。
「翔、逃げて!! あ、あたしはどうせ……このナルシストと結婚するんだし……!」
「俺が嫌だ」
優亜の言葉に、翔は短く否定する。
「どうして……翔は女装メイドなのに……。というか、翔が女装している理由も分からない……」
「隠し通さなきゃいけないものもある。貫きとおさなきゃいけない嘘もある。だが、」
翔は睦月が握りしめている黒い学ランに目をやり、フッと口元に笑みを浮かべる。そしてもう1度、大地の方を一瞥した。
じりじりと寄ってくる鎌を持った大地——その姿はまるで東のようだ。
優亜はドレスの胸の部分をギュッと握りしめる。
緊張でドキドキする心臓を押さえ、翔に逃げてほしいと願っていた。
「今の状況で、そんな事は言ってられないな」
言葉が終わると同時に、翔は駆けだした。
大地の横を通り過ぎ、優亜を抱きかかえる。そして部屋の隅に追いやられていた恵梨達の元へ駆け寄った。
「おい。おい、睦月。起きろ」
翔はペシペシと睦月の頬を軽く叩く。
睦月はうっすらと目を開け、ボケーとした様子で翔を見上げた。
「あれ、瀬野さん……? どうして? 何で?」
「そんなのはどうでもいい。学ランを渡せ」
「ハイ? これ、東さんのやけど……」
「いいから!」
翔は睦月の腕から学ランをひったくった。
メイド服の上から学ランを羽織り、スカートの下から折りたたまれた柄の赤い棒を取り出す。真っ直ぐに伸ばし、先端に鎌の刃を取りつけた。
皆は目を疑った。
壁に埋め込まれていた大輔も目を覚まし、翔の姿を見て息を詰まらせた。
鎌を持った大地は、翔の姿を見て軽く笑い飛ばした。
「あはは。よく俺が間違えられる訳だよ。不良の東って」
ニット帽をかぶり、そして邪魔な髪を学ランの外へやり準備は完了した。
黒い学ランに赤い鎌、髪を左下へ結びニット帽をかぶった翔。まさにその姿は、不良の『東』——。
「なっ……。翔、さんが?」
「……嘘だろー」
恵梨や博、雛菊、零音も目を見開き。
燐と雫も息を飲み。
睦月も呆然とした様子で翔を見上げていて。
そして優亜も、口を大きく開けて翔を見ていた。
「翔が、……東?」