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Re: 俺様メイド?!!-クライマックス突入!!-更新再開 ( No.162 )
日時: 2011/05/29 16:21
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)

最終話 2部


 音は優亜の携帯からだった。
 ポケットから携帯を取り出し、携帯を開く。ディスプレイには知らないメールアドレスが映っていた。

「誰?」

 零音が首を傾げる。
 恐る恐る、優亜はメールを開く。
 メールの内容は、口調からして大地からのようだ。

『優亜ちゃんへ☆

 元気かなー? 元気じゃないよね、分かってるよ弟が居なくなっちゃったもんね。
 それも優亜ちゃんが好きなのねー。ゴメンね、うちの馬鹿弟が☆』

「あの人、七尾のボディーガードをクビになってましたよね?」

 雛菊が怪しそうにメールを睨む。
 優亜は携帯を操作し、メールの続きを読んだ。

『でもでも、優亜ちゃん。元気を出しなよ。
 そんな優亜ちゃん達に良いところを教えてあげる。街の丘の上に行ってみな?』

 そこでメールは終わっていた。
 優亜は携帯を閉じ、皆の目を見る。

「どうしよっか?」

「……危ない目にあったら私どもが助けます」

 雫が仏頂面で言った。燐もそれに同意する。
 優亜は携帯をじっと見つめ「丘に行こう」と言った。

***** ***** *****

 丘へつながる森の道を抜け、視界が開ける。
 どこまでも高く、そして澄んだ青い空。その下には1本しか木が立っていない。
 丘には誰の居ないようだ。

「……優亜様、本当に丘へ行くように言われたんですか?」

 燐が優亜に訊く。
 もう1度優亜はメールを確認して、そして頷いた。

「おーい、似非東ー。出てこいー」

 博が高い空に向かって叫ぶ。
 すると、睦月が博をいきなり殴った。

「痛い?! 何するんだよ、睦月先輩! いきなり殴るなんて酷くない?!」

「東さんは似非ちゃうわ! 訂正せい!」

「大地の方だよ、大地の! 年上を呼び捨てで言うのは良くないと思うけど、今はどうだっていい!」

 今度は博と睦月の舌戦が始まる。
 そんな2人の言葉を遮るかの如く、また優亜の携帯に着信が入った。
 もちろん、それはメールで大地からである。

『丘に行ったー?

 じゃぁ、さぷらいず☆ぷれぜんとだよぉ!!


 俺、今ね実家に帰ってるんだけどそっちにとある人を行かせたから。
 皆で仲良くしてあげてね? 頼んだよ!

 あ、ちなみにそいつはね——』

 ザァッと風が、皆の頬を撫でる。
 優亜はふと視線を上げ、そして携帯を落とした。


 皆の前に立っていたのは、1人の女性だった。


 青空に映える黒髪を左下で結い、ピシッとしたメイド服に身を包んでいる。身長はやや高く、まるで男性ともいえるような高さだった。
 彼女の小さな顔には、大きな茶色がかった瞳に高い鼻筋、桜色の唇が神が作った彫刻ともいえるような絶妙なバランスの位置にある。
 優亜は彼女——否、彼の事を知っていた。
 それは、優亜の家に仕えるメイドであり、最強の不良であり、自分の好きな人である彼。

「久々だな、お前ら」

 凜とした声が、丘に響き渡った。
 女性は柔らかな笑みを浮かべ、きっちりと一礼をする。

「最強の不良『東』にして、相崎家のメイド瀬野翔——否、東翔。地獄の底より、生還しました」

 にっ、と少年みたいに笑う翔。
 その言葉が終わらないうちに、優亜は駆けだしていた。
 涙を浮かべ、翔に思い切り抱きつく。

「馬鹿翔! 心配させないで!!」

「馬鹿って何だよ馬鹿って。せっかく戻って来たのに、無事だったのに」

 翔は苦笑いを浮かべた。
 優亜は自分の涙を拭い、子供のように笑って見せる。


「もうどこにも行かないでよね。あたしだけの、俺様メイド!!!」





 私は恋をした。

 それは、甘ったるくて普通の恋愛じゃない。

 少しだけスパイスの利いた、相手がメイドの彼と恋をした。

 俺様で自己中で——だけど、何よりも私を守ってくれるメイド。

 ————『俺様』なメイドに。




 俺様メイド?!!-完璧メイドは男の娘?!- END