コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 俺様メイド?!!-完璧メイドは男の娘?!- ( No.41 )
日時: 2011/02/10 16:46
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)

第9話

 ピピピッという電子音が響き、体温計に『36度9分』と表示される。
 風邪を引いた。
 自分として、不甲斐ない。

「う〜……。風邪だけは引きたくなかった」

 優亜は鼻をすすり、体温計を放っておく。そして、さっさと制服に着替えた。
 微熱程度なので、学校には行けそうだ。ただ、足元が少しフラフラするだけ。
 というか、翔にだけは絶対にバレたくなかった。絶対に笑いそうだ、あいつなら。お前だっせーとか言いそうだ。

「くっ……。何としても、平常を保たないと……っ!!」

 そこまで嫌なんだ、優亜。風邪を見つけられるの。
 すると、部屋のドアがノックされた。ドアの向こうから、声もする。

「優亜様。お着替えになられましたか?」

「げっ! ヤバイ、来た!」

 優亜は素早くブレザーを羽織り、部屋を出る。
 いきなりドアが開いた事に驚いたのか、翔が大きな目をさらに丸くしていた。

「あの、何をそんなに急いでいらっしゃるのですか?」

「だ、大丈夫だから! そんなに急いでないから!」

 優亜は慌てた様子でそう言うと、さっさと1階に下りて行った。
 危うくバレるところだった。翔にバレると、馬鹿にされるか心配されるかの2択だ。多分、前者だと思うけど。
 ……素直に、風邪を引いたと伝えて甘えたらどうだろうか。
 そんな考えが優亜の脳裏によぎったが、頭を振って消した。

「大丈夫大丈夫。あたしは、元気だけが取り柄なんだから!」

 ガッツポーズを作り、食堂に足を踏み込んだ。

***** ***** *****

 どうしよう。すごい気持ち悪い。
 優亜は机に突っ伏し、腕をはみ出したまま動かなくなった。
 何か体の節々が痛いし、ダルイ。疲れた。視界が霞んで、ほとんど見えない。

「……大丈夫?」

 心配に思ったのか、零音が優亜に訊いた。
 優亜は零音に笑顔を向け、首を縦に振る。

「大丈夫よ、心配しないで」

「でも、顔色悪い。保健室、行く?」

 ついて行くよ、と零音は言ってくれたが、優亜は首を横に振った。
 そこまで迷惑はかけたくない。そう考えたのだろう。

「優亜、風邪でも引いたんじゃないの? 大丈夫な訳?」

「平気だよ。だって、1度も風邪を引いた事無いもん。少し、お腹が痛いだけ」

 痛くはないけど、体がダルイ。そんな事を言えない優亜は、近付いてきた恵梨に、無理矢理の笑顔を見せる。
 そんな笑顔、いつまで持つのだろうか。
 幸いにも、翔は学校にはついてきていない。家の仕事が忙しいので、今日は行けないと言っていたのだ。
 これで帰れば、翔に迷惑をかけるとでも思ったのだろか。

「優亜さん、せめて何かをお飲みになられたらどうでしょう? お茶なら買ってきますよ」

「うん。ありがとう」

 心配してくれた雛菊に笑顔を向け、優亜はまたも机に突っ伏した。
 ヤバ、吐くかもしれない。

「トイレ行くか? おんぶしてく?」

「大丈夫だって。そこまで悪くない」

 いえ、悪い。ものすごい悪い。
 だけど、そこは耐える優亜。今まで耐えてきたんだ、しっかりしろ!
 ん? あれ、視界が霞んで————あれぇ??


 意識のなくなる寸前、聞こえたのは零音の悲鳴だけだった。


「優亜! 優亜!!」
「……優亜、しっかり!!」
「誰か、誰か家に連絡! すごい熱!」
「優亜さん?!! 大丈夫ですか、優亜さん!!」