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Re: 俺様メイド?!!-完璧メイドは男の娘?!- ( No.44 )
日時: 2011/02/11 17:17
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)

第9話 2部

 額に冷たい感触が走り、優亜は目を覚ました。
 揺らぐ視界の向こう、見た事のある天井が広がっていた。自分のベッドの天井である。
 いつの間に家に帰ってきたのだろうか。

「はれ……?」

 優亜は上半身を起こし、ベッドから出ようとした瞬間。
 手に何かが触れた。
 何か、こう……サラッとした何かが、優亜の手に触れたのだ。
 その正体は、翔の髪だった。乱れた黒い長い髪が、ベッドになびいていた。

「翔……?」

 優亜は首を傾げた。
 当本人、翔は眠っている。何か、すやすやと眠っていた。
 体が妙にスッキリしているから、風邪は治ったのだろうか。

「調子良いなぁ、これなら学校行っても——」

「よくありませんよ」

 いきなり部屋に雫が入ってきたので、優亜は少しだけ飛び上がってしまった。
 何だろ、何か言ってから入ってきてくださいよ!
 そんな事を言っても、雫は聞いてくれなさそうなので、優亜は言うのを止めた。

「あなたは、丸1日寝てたんですよ。一晩中翔が看病していてくれていました、感謝するべきですね。彼に」

「翔が?」

 1番馬鹿にしそうな奴なのに、何故自分を看病してくれたのだろうか。
 そこが謎に思った優亜である。
 答えてくれたのは、雫でもなく、翔でもなく、燐だった。

「翔さんは、優亜様を心配しておられました。優亜様が危ない彼氏を作った時も、翔さんは心配しておられました。今日だって、風邪をひいているのに学校に行った優亜様を追いかける、と言いだしましてね」

 優亜は、寝ている翔に視線を移す。
 いつもの涼やかで、端麗な顔つきからは想像出来ない、子供の様な寝顔。
 思わず笑ってしまった。ここで、翔が起きていたら、確実に笑われるだろう。

「ありがとう、翔。看病してくれて」

 優亜はそう言って、眠っている翔の頭を撫でた。
 返事をするかのように、翔は寝返りを打ったのだった。

***** ***** *****

 部屋を出たのち、雫は燐に訊いた。

「あの時の事、優亜様に言わなくてよろしかったのでしょうか?」

「えぇ。良いんですよ、優亜様は気付かなくて」

 燐は、楽しそうにけらけらと笑った。
 そう。あの時——、優亜が高熱を出して、家に帰って来た時だ。
 真っ先に優亜に駆け寄ったのは、翔だったのだ。

『しっかりしろ、優亜!!!』

 必死に叫ぶ翔。しかし、優亜はそれでも起きない。
 そんな優亜を、翔は一生懸命看病した。寝ずに、一晩中。
 一部始終を全て見ていた燐は、本当に健気な人だと言い、笑っていたのだ。

「優亜様は幸せ者ですね、本当」

 燐はいつもの笑顔を浮かべて、つぶやいた。
 その表情を見た雫は、少しだけ首を傾げる。

 何故か、燐が悲しそうだ。

 いつもの笑顔。なのに、どこか悲しそうな表情を浮かべている。
 雫はそう思い、言葉を紡いだ。

「燐、何か隠していません?」

「何かって——何をです?」

「今の燐、どこか悲しそうでした。何かを隠しているんじゃないですか?」

 雫は仏頂面のまま、燐に訊いた。
 燐は1度無表情を浮かべ、直後また笑顔に戻す。

「何でもありませんよ、何でも——」



 で、次の日。

『ゴメン、……げほっげほっ。風邪引いたから、仕事休む……』
「え?! だ、大丈夫なの翔!! あたし、看病しに行こうか?!」
『マジ来るなお前は。じゃーな』

 ブツッ。ツーツーツー。
 翔に風邪がうつったとさ。めでたしめでたし。

翔「めでたくねぇよ、バカ作者」


第9話 END