コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 俺様メイド?!!-完璧メイドは男の娘?!- ( No.49 )
- 日時: 2011/02/20 21:41
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)
第10話 3部
いや、いやいやいや。これは家庭科の授業とかじゃなく、どこかの軍の3分クッキングだ。
何で高校の家庭科の授業で、豚の裁き方を教えているんだ。というか、包丁はどこからパクってきた。
「優亜……帰ろ」
零音が怯えたように、優亜に向かって言った。
実際のところ、優亜も真っ直ぐ帰りたい。出来る事ならば、翔を今すぐ呼んで全滅してもらいたい。
だが、それが出来なかったのだ。
理由は、優亜の足がすくんで、動かないのである。
恵梨は楽しそうに見てるし、博はつまらないので立ちながら寝てるし。雛菊は猫のぬいぐるみとお話しているし。
真面目に聞いて怯えているのは、優亜と零音だけらしい。
「帰りたいけど、足が動かないんだよねぇ」
「……実は、私も」
「本当? どうしよう。あと、30分もあるよぅ」
正直泣きたくなった。
こんなグロテスクな授業と知っていたら、燐の真実なんか丸投げして、ベッドに身を任せていたかもしれない。
優亜は、チラッと窓際に視線を移す。
退屈そうな睦月の後ろ、誰もいない空白の席。おそらく、誰かが居た席だろう。
まさかとは思うが、あの席に座るのが東——とか?
「な、訳ないかぁ」
優亜はため息をつき、黒板に目を戻した途端。
廊下の方から、悲鳴が聞こえてきた。
「何だ?」
ゴツイ先生は、教科書から目を離し、ドアの方を見やる。
刹那、颯爽と教室のドアが開いた。
皆の視界に入る、長い黒髪少年。機嫌が悪そうな表情を浮かべ、優亜達を睨む。
「東、さん?」
睦月が、少年の名を呼んだ。
「何だ、東か。早く席につけ。もう授業は始まっているぞ」
「うるせぇな肉。俺に話しかけるんじゃねぇ」
東と呼ばれた少年は、そのままスタスタと優亜の方に向かっていく。
優亜はビクッと怯えたように震え、東を見上げた。
「あの、何でしょうか?」
「来い。お前らもだ」
「え、どうしてですか? まだ授業中ですのに——」
雛菊の質問が終わらないうちに、東は優亜の腕を引っ張って教室を出て行った。
それを追いかける4人。
「何しに来たんだ、東は」
「さぁ? あの子に、何か関係でもあるのかねぇ」
睦月は東が出て行った方向を、ただじっと見つめていた。
一方、優亜達は東に連れられて、廊下をスタスタ歩いていた。
「で、何しに来たんだよ」
「何って……久遠燐の事を調べに来たんです。放してください!!」
優亜は東の手を振り払い、威嚇の様な態度を見せる。
東はそんな優亜を見て鼻で笑い、冷たい声で告げた。
「久遠燐は、この黒金高校の元生徒会長——いわゆる、元ヤンだ」
「そんな事は分かってんだ!!」
「じゃぁ、他に何が知りたいんだ」
東は、博を睨みつける。その眼光は、鋭く輝いていた。
鋭さに負けた博は、そのまま何も言わずにうつむいていた。
「お前らに、それ以上語る必要はない。とっとと帰れ」
「あの、本当にそれだけなんですか? 燐さんは、それだけなんですか?」
優亜は、背を見せた東に向かって訊いた。
面倒くさそうに振り返った東は、たった一言、言い放つ。
それはまさしく、冷酷な一言。
「俺には関係ないね。あんな奴、もう卒業しちまってんだから」
「ッ……!!」
優亜はその言葉を聞いた瞬間、東に平手打ちを叩きこんだ。
目に涙をいっぱいためて、東に向かって叫ぶ。
「最低……!!」
優亜は駆けだした。東から逃げるように、涙を残して。その後ろに、4人が続いた。
東は、そんな5人を静かに見ていた。別に追いかけもしなかったし、どなりもしなかった。
ふいに、東は無表情な顔に笑みを浮かべる。何かをたくらむような笑顔ではなく、純粋な笑顔だった。
平手打ちをされた頬をさすり、つぶやく。
「本当、訳分からねぇ奴だ」
※え、東はどうなったの? 優亜は?!
変なところですが、第10話はEND!!