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Re: 俺様メイド?!!-完璧メイドは男の娘?!- ( No.50 )
日時: 2011/02/24 14:08
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)

第11話

「来ないで!! 来たら、ここから飛び降りるんだからぁ!!」

「お止めくださいお嬢様!! そこから降りてください!!」

 木の上でギャンギャンと叫ぶ、1人の金髪少女。何と言うか、お嬢様雰囲気を醸し出している。
 その少女は、今まさに木の上から飛び降りようとしていた。
 理由はそう——お見合なんかしたくないからだ。
 ビルの3、4階はありそうな高さから、少女は「えいっ」という掛け声とともに飛び降りた。
 迫る地面。ブチ当たりそうになった瞬間。体が止まった。
 下に居る執事が支えてくれたのだろうかと思ったら、全然違う人がそこに居た。
 黒い髪をサイドテールで結び、茶色がかった大きな瞳が自分を見下ろしている。黒いパーカーを羽織り、女の子の様な細い腕が自分を支えてくれていた。
 少年、翔は少女を下ろし、ため息をつく。

「何? 自殺志願者?」

「なっ……。あなた、わたくしが誰だかおわかり?!」

「分かる訳ないだろうが。助けてやっただけでも感謝しろよ」

 翔は舌打ちをするように言い、買い物帰りなのか地面に投げ捨ててあった買い物袋を拾い上げる。
 今日は非番。なので、男の姿で散歩していたのだ。

「じゃーな、自殺志願者さん」

 ぶっきらぼうに言い捨て、翔は去って行った。
 その背中をずっと見ていた少女は、翔に熱い視線を送っていた。どうやら、翔に惚れた様子である。
 少女は傍に居た執事に向き直り、そして高らかとこう言った。

「わたくし、あの人と結婚します!!」

 名前も分からないのに、何故そう言うのだろうか?

***** ***** *****

 相崎宅。今日は土曜日なので、学校はお休み。
 優亜は5月の終わりにある、中間テストに向けて勉強していた。もちろん、恵梨達とも一緒である。

「えーと……、酢酸の化学式って何だったけ?」

「CH3COOHだと思います」

「雛菊ちゃん、頭良いねぇ。恵梨、抜かされんじゃないの?」

「負けないもん」

 優亜の冷やかしに、雛菊は苦笑した。隣で勉強していた恵梨は、頬を膨らませて言う。
 零音は、博に古文を教えていた。

「うーん……少し疲れたね。休憩しますかー」

「さんせーい。うぅぅ、頭が痛い……」

「……後で、たっぷりと教えてあげる」

 零音の教え方は、かなりのスパルタらしい。
 優亜は翔の元におやつを取りに行こうと思い、部屋を出た瞬間——
 下の階から、叫び声がした。

「だから、ダメなんです。本人の意思がなくては、そんな事は出来ません」

「じゃぁ許可を取るから、本人を出しなさいよ」

 何だろうと思い、優亜は階段から下の階を覗いた。
 玄関で、雫と金髪少女が言いあっている。何かをするのに、許可を求めているようだ。

「雫さん、何をしているんです?」

「優亜様……いいえ、何でも——」

「だから、言っているでしょう? 瀬野翔さんを出して下さいと」

 少女は、雫に言いよった。眉を寄せ、イライラしたように睨み上げる。
 対する雫は、頑として首を縦に振らなかった。

「え、翔に用事があるの?」

「ありますわ。ですから、このわたくしが出向いてあげましたのよ?」

 胸を張って言う少女は、まさにお嬢様。雰囲気から醸し出されるお嬢様オーラがすごい。
 優亜は首を傾げて、その少女に訊いた。

「何で翔に用事があるんですか? 主のあたしにも教えてください」

「あら、あなたが主? ふぅん……。わたくしの方が、翔さんにふさわしいわ」

 少女は自信満々に、高らかな声で言った。

「わたくしは松竹梅七海(ショウチクバイ/ナナミ)ですわ。ですから、翔さんを出して下さらない?」

「私に、何か用事でしょうか……?」

 翔はおずおずと玄関に現れ、松竹梅七海と名乗った少女に尋ねた。
 すると、七海は瞳を輝かせて、翔に抱き付いた。

「翔さん!! わたくしと、お見合いして下さらない?」

「「「「「ハァ?!!!!!」」」」」

 その場にいる全員(翔除く)は、目を剥いて驚いた。
 抱きつかれた翔は、まるで石像のように固まっていた。