コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 俺様メイド?!!-完璧メイドは男の娘?!- ( No.52 )
- 日時: 2011/02/25 16:42
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)
第11話 3部
現在地:とある倉庫。
優亜に、不良の手が伸びる。
今すぐ不良共を張り倒してここから逃げたいが、そうはいかない。手錠によって拘束されているからだ。
ご丁寧に優亜は、足も拘束されていて、逃げる事すら出来ない。
男に見下ろされているのにも虫唾が走るのに、触れられるなんてもってのほか!!
「触らないでッ!!」
男嫌いのくせして、不良に本気頭突き。
昼間なのにお星様を見る羽目になった不良は、額を押さえて優亜の髪の毛を引っ張った。
「この女……余計な事をしやがって……!!」
不良は犬歯をむき出しにして、優亜を睨みつけた。そして、開いている方の手で、優亜に張り手を叩きこむ。
ビシッと痛々しい音がして、優亜は地に叩きつけられた。
頬が痛い。どうやら、口の中が切れたようだ。
「ひゃははは!!! 良家のお嬢様を殴るって最高かもなッ!!」
「出来る事ならこのままホテル連れ込みたいけど……犯罪になりたくないし、ボロボロに出来るだけでもいいかぁ」
「おい、次は俺だぞ!!」
不良共は、交替で優亜に張り手を叩きこむ。
もう何度目か分からない。意識は朦朧、頬の感触はない。というか、あちこちを殴られていてもうダメ。
誰か……助けて。
優亜は、心の中で悲痛に叫んだ。
「優亜ッッッ!!!!」
ガシャンッッという破壊音と共に、メイドが飛び込んできた。
不良共の視線が、一斉にメイドに集まる。
夕日を背にして現れたメイド——翔は、優亜を見つけるなり、不良に向かって叫んだ。
「てめぇら……ッ!!」
1歩踏み出した所で、翔は七海に止められる。
翔は、七海を睨みつけ避けて優亜の元に行こうとしたが、七海がそれをさせなかった。
腕をつかみ、七海は言う。
「翔さん、お願い。わたくしと一緒に来てください……」
「放せ。てめぇには興味無い」
「放しません。もしここで、拒否をするというのなら……あの娘を殺します」
翔は面倒くさそうに、七海を一瞥した。
必死の表情で、七海は翔に言う。『自分と一緒に居て』と。
それは、独占欲の言葉。手に入るなら、誰だって殺すという意味。
「優亜を殺して、俺を縛りつけようっていうのか……?」
「えぇ。わたくしは、あなたが好きなんです。手に入れるならば、何だってします」
真剣な表情で、七海は言う。
翔はため息をつき、七海の腕を振り払った。そして、優亜の方に視線を移す。
翔と優亜の距離は、およそ10メートル。今から走れば間に合うだろうが、優亜が殺されてしまう。
「翔……!」
優亜は、助けてとそこまで叫びたかったが、ナイフが煌めいたので言えなかった。
翔は小さなため息をつき、七海に言う。
「分かった」
短く吐きだされたのは、了承の言葉。
七海の瞳が輝いた。優亜の瞳が震えた。
え、嘘……。翔が、従った?
「嬉しい……」
うっとりとした表情で、七海は翔に抱き付いた。
翔は、もう1度だけ優亜に視線を投げる。
その顔は、とても悲しそうで——
「待ってッ!!」
優亜は叫んだ。今出せる声の限り、力いっぱい叫んだ。
七海の目が、怪訝そうにひそめられる。
「どうしたんですの? 翔さんは、もうわたくしの——」
「あたしだって、あたしだって……!!」
「翔の事が好きなんだからッッッッ!!!!!」
辺りが水を打ったように静かになる。
あれ、今大変な事を言った……よね? どうしようどうしよう!!
なんて事を考えていたら、翔の高らかな笑い声がした。
「いやぁ、女装男子がこんなにもモテるなんて思わなかったわ。少なくとも、気持ち悪がられると思ったんだけどな」
笑いながら、優亜の元へ駆けだす。
ヒッと声を上げた不良共を、残らず蹴り倒す。優亜の手錠を引きちぎる。
「ま、俺はそんな事、どうだっていいけどな」
まだ倒れていなかった不良の1人が、ナイフを構えて翔の後ろに立っていた。
優亜が叫ぶのが早か、翔はバク宙で距離を取る。
怒号と共に、不良は翔に向かってナイフを振り上げた。だが、翔は蹴り1つでナイフの刃を折った。
ボキンッと音がして、刃は遥か向こうの地に突き刺さる。
「汚い手で、優亜を触りやがって……!! 覚悟しろ!!」
翔は飛び上がり、不良の顔面に回し蹴りを叩きこむ。吹っ飛んだところで、翔は踵落としを決め込んだ。
座り込んでいた優亜をおぶり、翔は七海に向かって言葉を吐き捨てた。
「俺、ハッキリ言ったらタイプじゃないんだよね。お前」
最後まで辛辣。流石翔。
***** ***** *****
帰り道。
夕焼け空がやけに綺麗で、思わず見とれる程だった。
「で、俺が好きなんだって?」
「嘘に決まってんでしょ。言葉のあやよ」
優亜は、そっぽを向いた。しかし、手は翔の首にひっかけたまま。
そんな優亜を見て、翔は苦笑を洩らす。
「またまた、そんな嘘をついて。心臓は騙せないぜ?」
「なっ……。うる、さいわね!!」
ギャンギャンと叫ぶ優亜。
でも、本当は嘘じゃないんだけど。
まだこの気持ちは、伝えるべきじゃないよね……?
愁「まぁ、翔はライバル多いですよ。男の格好すればモテるし」
翔「そういうこった」
優亜「え、えぇぇ?!!」
第11話 END!!