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Re: 俺様メイド?!!-参照400突破記念でお題募集- ( No.65 )
日時: 2011/02/28 16:12
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)

第13話

 昔むかし、とある国に1人の娘がおりました。
 娘は、自分に仕えるメイドに憧れておりました。ですが、娘はお嬢様。とてもメイドにはなれません。
 そこで娘は、自分の事を知らない海外へ行く事にしました。
 もちろん、メイド服を着て。

***** ***** *****

 市之宮雫は、夕飯の買い出しを済ませたので、家への道を歩いていた。
 今日は月に2度の非番。独りで暮らしている雫は、家事全般出来る。まぁ、翔には及ばないが。
 ふと雫は、店のウインドウに映った自分を見る。
 相も変わらず仏頂面。もう少し笑えたら、と自分でも思う。
 ニコリともしない頬を押さえ、雫はうつむいた。
 いつからだろう。笑えなくなったのは。

「もう少し……笑顔で居られたら……」

 翔だって、男のくせにヘラヘラ笑っている。もう少し真面目になった方が良い。燐だってそうだ。
 じゃぁ自分は? 自分は何故、彼らみたいに笑えない。
 答えは、分かっている————。

「市之宮雫様」

 名前を呼ばれたので、雫は振り返った。
 そこに居たのは、黒い服を着てサングラスをかけた——ごつい男の人達。
 雫は手に持っていた箒を構え、男の人達に向かって叫んだ。

「何しに来たんです?!!」

「私達は、あなた様を迎えに来ました」

 箒を下ろす事を止めず、雫は首を傾げた。そして、ふと在る事が頭をよぎる。
 まさか……。
 考えるが早か、雫は荷物を落として走りだした。人と人の間を縫うようにして走り、男達から逃げる。
 男達は、逃げる雫を追いかけた。
 夕暮れ時。彼らの鬼ごっこが開始された。

***** ***** *****

 10時ぐらい。相崎家。
 すでに優亜は寝ていたが、翔と燐は起きていた。明日の朝食を何にするか決めているのである。

「ご飯かパン、どっちが良い?」

「和食か洋食ですか……。優亜様はどちらが好きでしょう?」

「洋食だが、今日の朝はパンだった。じゃぁ、明日は和食で」

「それで良いですね」

 話が決まり、2人は寝ようとした時だ。
 ピンポーン————……。
 チャイムが鳴る。こんな夜遅くに、誰が来たのだろう。
 警戒するように燐は、執事服からピストルを引き抜き、翔は鎌の柄の部分だけを装備して、玄関へ向かった。
 月夜しか入らない、薄暗い玄関。燐は、ドアに向かって訊いた。

「どちら様でしょうか?」

「私です、市之宮雫です」

 必死に叫ぶ雫の声を聞き、燐は急いでドアを開けた。
 今まで全力疾走していたのか、雫は肩で息をしながら座り込んでしまった。

「どうしたんです? あなたは今日は、非番でしょう?」

「助けてください」

「……何があったんです?」

 翔が怪訝そうに眉をひそめて、雫に訊いた。
 すると、雫は一瞬だけ強張った表情を見せると、こう言葉を紡いだ。

「追われているんです」

「誰からですか? ヤクザなら、燐が追い払ってくれますよ?」

 翔は冗談交じりに言っていたが、雫が真剣な表情をしていたので冗談を言うのを止めた。
 冷たい空気が張り詰め、雫は誰に追われているのかを告げた。

「私の、使用人に。追われているんです」

「使用人? ……あなた、まさか——」

 燐が何かを言う前に、雫は小さくうなずいた。


「私は、ノルウェーにある良家のお嬢様、なんです」