コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 俺様メイド?!!-参照400突破記念でお題募集- ( No.66 )
- 日時: 2011/03/01 15:50
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)
第13話 2部
暗い夜を照らすかのように明るい大広間。燐は、翔と雫と自分の為にコーヒーを淹れて、各々の前に置いた。
心を安心させるかのような、そんな温かさ。
「で、お前はノルウェーのお嬢様だとか言っていたが……大統領の娘か何かか?」
いつもの丁寧な口調とは打って変わり、翔は凜とした声で訊く。
コーヒーを飲みながら、雫は首を横に振った。どうやら違うらしい。
だとすると、普通の良家のお嬢様だ。優亜みたいに。
「……それで、雫さんは何故、使用人に追いかけられているんです? 理由があるんじゃないんですか?」
「ハイ。おそらく、私を連れ戻しに来たのでしょう」
静かに言葉を吐き出す雫は、微かに震えていた。
2人が雫を問い詰める事はなく、ただ黙って雫の話を聞いていた。
「私は、侍女に憧れていたんです。他人の為に奉仕する、それが羨ましくて仕方がなかった——」
「それで、あなたは日本に渡って来たんですか?」
燐が訊いた質問に、雫はゆっくりとうなずく。
自分はお嬢様。侍女に憧れを抱くなんて——身分が違いすぎる。だから、日本に渡ってきたのだ。
そこで、翔が口を開いた。
「じゃぁどうして、使用人はお前らを追いかけているんだ? 連れ戻して何をしようってんだ」
「おそらく、婚約者と結婚させるのでしょう」
ピタリと。2人の時が止まった。
それは、雫がお嬢様で婚約者と結婚させるという話を聞いたからではない。雫が涙を流していたのだ。
仏頂面の雫からでは考えられない、綺麗で透明な涙。本当に悲しいと感じているのだろう。
「私、ノルウェーには戻りたくないんです。ずっと、ずっとここに居たいんです」
「……あー、だったらよぉ……」
翔が1つ、提案をしてみる。
「日本に好きな人が出来たからそっちには戻りたくない……ていうのは、通用しないのか?」
「……通用すると思います。けど、それが何か?」
翔は悪役の如く、ニタリと笑う。どこかいたずら小僧のような感じを醸し出しているが、この際放っておこう。
何かを思いついたらしい翔は、作戦を2人に告げる。
「じゃぁ、作っちまおうか。彼氏って奴を」
「「……ハイ?」」
そうなるのも当たり前。話がまったく見えない2人は、同時に首を傾げるしかなった。
翔の作戦はこう。
雫に彼氏が出来たから、そいつを使用人どもに見せる。
↓
使用人どもに話をつけてもらう。
↓
帰らなくてもいい!!(と、思う)
↓
ミッションコンプリート!!
「誰にも迷惑はかけないし、お前はここに残れる。まさに一石二鳥じゃねぇか」
「でも、彼氏役はどうするんですか? 誰がやってくれるのです?」
翔は、隣に居る奴を指した。
それは、のん気にコーヒーを飲んで「彼氏役って誰がやるのだろうか」とつぶやいている燐だった。
にっこりと翔は笑みを作り、燐の肩を叩いた。
「ま、頑張ってくださいよ。燐さん」
「へ? まさか、僕ですか?!! 翔さんがやればいいでしょう?!」
「嫌だ。私、雫さんよりも歳が下なんです」
「恋愛に年齢なんて関係ありません。言いだしっぺがやるもんです」
「あーあー何も聞こえないー。聞きたくないー」
翔は子供のように耳をふさぎ、何も聞かないフリをする。
仕方なく、燐はため息をつき、「やります」とうなずいた。