コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 俺様メイド?!!-参照400突破記念でお題募集- ( No.67 )
- 日時: 2011/03/02 19:14
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)
第13話 3部
と言う訳で、作戦実行。
燐は執事服とは変わって、スーツを着ている。雫は黒いスカートと、白のTシャツというシックなコーディネートだった。
翔はいつも通りのメイド服。優亜にも事情を話したら協力すると言ってくれたので、黄緑色のパーカーと白のハーフパンツという姿で尾行していた。
「何で僕なんでしょう……僕じゃ役者不足なんじゃ……」
「作戦なんですから無視してください」
雫の冷ややかな一言。その場の雰囲気が、氷河期に変わる。
何か今すぐ飛び出して止めろ、とか叫びたかった翔だが、あえて我慢しておいた。自分の作戦が台無しになる。しかも自分のせいで。
優亜は心配そうに2人を見ながら、つぶやく。
「大丈夫なの、あの2人。とっても仲が悪そうなんだけど」
「燐さんだって、やる時はやるんです。まぁ、元ヤンだからどうとも言えないですけど……」
翔も心配そうにつぶやいた。表情が浮かない、かなり心配している様子。
一方、2人だが——
「ちょ、もう少し離れて歩いてください。邪魔です」
「雫さん痛いです。さっきから僕の足を蹴らないでください」
こんな舌戦を繰り広げているのだが、大丈夫なのか作戦は。
すると、「雫様」と名前が呼ばれたので、2人は同時に振り向く。
そこに居たのは、コワモテヤクザ顔のお兄さん(つまり、使用人)だった。ついに現れたな使用人!!
雫が燐の手を握りしめる。不安と恐怖で、少しだけ震えているのが伝わってきた。
燐は雫の手を握り返し、堂々とした口調で使用人に言う。
「僕、雫さんとお付き合いさせてもらっている、久遠燐と申します」
「……お付き合いだと?」
使用人の眉がひそめられる。おぉ、これは迫力があるな。
ここで翔の予想なら、『奥様と掛け合ってみます』みたいな事を言われるはずなのだが、それは予想を遥かに逸脱した。
「こんなひ弱そうな奴が、雫様の彼氏な訳ないだろう」
この言葉にはブチッと来たらしく、燐はスーツの下にあるピストルに手をかけたが、ふとある事を思い出す。
それは、どんな事があっても銃とかナイフとかは出すな、という翔の言葉である。
出来るだけ殺人なんて言う事件を避けたい翔は、武器を扱う燐にきつく言っておいたのだ。
燐は何とかこらえ、笑顔を作った。刹那、
使用人が吹っ飛んだ。
雫の回し蹴りが横っ腹にブチ当たり、使用人は横に飛んで行った。ついでに言うと、コンクリートに激突した。
不安、恐怖と言う感情を抱いていた雫の雰囲気が一転し、殺気と闘気に満ち溢れていた。
「燐に謝ってください——」
「し、雫様……!!」
雫は涙をポロポロと落としながら、使用人に向かって叫んだ。
「謝りなさい!!」
もう1度、使用人に回し蹴りを叩きこむ。
傍で見ていた燐は、口をあんぐりと開き、ただ茫然と立っていた。
「燐は、燐は強いんです。あなたなんかよりも、ずっと!!」
「嬉しい事を言うねぇ。なぁ、燐」
後ろから蹴りを入れられ、燐は覚醒する。
翔がまるで子供の様な笑みを浮かべて、燐に言った。
「やれよ。それが彼氏の役目だろ」
「彼氏役ですが、ね!!」
燐は使用人に1発、頭突きをくらわせた。
見事にヒットした使用人は、そのまま気絶。地にフラフラと倒れてしまった。
「ま、作戦は失敗——かな」
翔が残念そうに言う。
後から優亜が駆けつけてきて、「大丈夫ですか?」と訊いていた。燐も雫も、大丈夫と告げる。
雫は、ふと燐を見上げた。
相も変わらずへらへらと笑う燐。だが、少しだけカッコイイと思ってしまった。
「燐」
「何です?」
雫は、にっこりとほほ笑んだ。
あのいつもの仏頂面ではない、綺麗な笑顔で。
「ありがとうございます」
お礼を言った。
数日後、お見合いの話はなかった事になり、雫はメイドを続ける事を許されたのだとか。
めでたしめでたし?