コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 俺様メイド?!!-参照400突破記念でお題募集- ( No.69 )
- 日時: 2011/03/05 20:33
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)
第14話 2部
星屑祭りの天気は、見事なまでに晴れ渡った青空。華月学園は大もり上がり。
優亜達のクラスは——
「お帰りなさいませ、ご主人様〜」
いつもの声よりかワントーン高めの声で、お出迎えするメイド。ちなみに笑顔。
当然、ここにも男子が混ざっている訳であって、男子も女子もメイド。全員メイド。流石メイド喫茶。
「大丈夫、優亜。少し疲れているんじゃないの?」
お疲れ気味の優亜に、恵梨は訊いた。彼女のお盆には、『メイドさんのとろける☆ぱふぇ』が置かれていた。ネーミングセンス悪いとか思ったそこのあなた。気にしないで。
優亜は首を横に振り、笑顔で答える。
「全然。大丈夫よ」
いつもの無理をするような言葉。表情は疲れ切っているのに、その笑顔は優亜の疲れを感じさせない。
すると、誰かが名を呼んだので、優亜はその方向に駆けて行った。もちろん、笑顔で、
そんな優亜を見かねた恵梨は、小さなため息をつき、メイド服のポケットから携帯を取り出した。
誰かの番号を呼びだし、スピーカーに耳を当てる。
彼なら、今日は学校は休みのはず——。
「あ、もしもし? 深江です」
***** ***** *****
お昼時。喫茶店なので、昼時はかなり混む。
疲れに限界を感じていたのか、優亜の笑顔は消えていた。こんなに人が来るとは思わなかった。
そこへ、優亜を呼ぶ声がした。
「優亜さん。大繁盛ですね」
「雛菊ちゃん——と、零音ちゃんも!!」
白い着物を着た雛菊と、鮮やかな水色の浴衣を着た零音が来店した。
2人を見たおかげで疲れが吹き飛んだのか、優亜は笑顔を浮かべる。
「休憩?」
「ハイ、そうなんです。お化け屋敷も大繁盛しました」
「……屋台も、大盛り上がり」
雛菊は手に持っていた猫のぬいぐるみを嬉しそうに振り回し、零音はいつもは見せない笑顔を浮かべてた。
「じゃぁ案内するね。2名様ご案内してください」
「かしこまりました。こちらへどう、ぞ——って、雛菊と零音かよ!」
「その声は博さんですね。まぁ、お似合いですこと」
優亜達の前に現れたメイド——博は目を剥いて驚いた。現在、彼の格好は金髪のロングに漆黒のメイド服である。よく男の子が着れたもんだ。
雛菊は笑いをこらえているのか、微かに肩が震えている。零音はいつも通り、無表情。
恥をこらえながら、博は2人を席に案内した。
その背中を見送った、次の瞬間。
「おい、そこのメイドさん」
どこか聞き覚えのある、がっしりとした声。
一瞬震えた優亜は、おそるおそる振り返ってみる。
でかい身長。金髪碧眼に、くわえられた棒付き飴。まごうことなき黒金高校の、堂本睦月である。
「ど、うもと。睦月——」
「ちぃと距離置かれてるなぁ。まぁ、ここに来る時も先生達に何度か止められたけどな」
睦月は、けらけらと笑って流す。少しだけ、漆黒の学ランが汚れていた。おそらく、止められた先生達を返り討ちにしたのだろう。
すると、奥から恵梨が現れた。
「睦月先輩、優亜を連れて遊びに行ってください」
「ちょ、恵梨?! 何を言ってんの!!」
反論しようとした優亜の背中を、恵梨は軽く押した。
綺麗な笑顔。今まで見た事のない、綺麗な笑顔で。
「私はね、優亜に倒れてほしくないの。疲れても、言葉にしないんだから。誰かが遊びに誘わないと、優亜はついて行かないでしょ?」
それに、と恵梨は言葉を続ける。
「男にも慣れてほしいしね☆」
「恵梨こら!! それはどういう意味?!」
あー、早く行って!! と睦月は恵梨にどなられ、優亜を引きずってメイド喫茶を後にした。
メイド服を着たままで出てきてしまった為、着替えてもいいかと睦月に訊こうとした途端。
「これ着とけ」
睦月は学ランを脱ぎ、優亜にかぶせた。
埃っぽい学ラン。喧嘩の跡だらけで、どこかボロボロの感じもするが、メイド服はきちんと隠れる。
ぽけーと立ち尽くす優亜にデコピンをして、睦月は照れくさそうに笑った。
「まぁ、本当は東さんもおれば良かったんやけど。東さん、どこに居るかも分からんし……勘忍な」
子供のように睦月は笑った。
優亜も、いつも男子に見せない笑顔を、友達にだけ見せる鼻の様な笑顔を見せた。