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Re: 俺様メイド?!!-参照400突破記念でお題募集- ( No.71 )
日時: 2011/03/07 19:41
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)

第14話 4部

 睦月は流石不良とも言うべき程のスピードで、決勝まで勝ち進んできた。
 ある時はラグビー部の奴をねじ伏せ、またある時は空手部の奴に背負い投げを叩きこみ。そしてある時は、パソコン部の奴を一睨みしただけで降参させてしまう程だった。

「すげぇな、睦月さん」

 いつの間にか休憩になったのか、博が平然とした様子でリングを見ていた。メイド服姿で。
 元々男の博だが、翔の様に華奢なので案外似合うのだ。何か腹立たしい。
 優亜はその場から立ち去ろうとして、背を向けた。メイド喫茶が心配になってきたのだ。

「何や、優亜ちゃん。メイド喫茶が気になるん?」

 汗をかいた顔をTシャツの襟元で拭きながら、睦月は優亜に問いかける。
 何も答えず、優亜は睦月の質問にうなずいた。
 すると睦月は、ポムと優亜の肩に手を置く。

「じゃ、メイド喫茶まで送ってく」

「え、あの……。睦月先輩、決勝戦は?」

「あんなの、まだ時間あるし。おいも少し疲れたしー」

 子供のような声を上げる睦月。
 優亜は睦月の手を振り払い、テクテクと先に行ってしまった。
 怒らせたのだろうかと心配になった睦月は、頭をガシガシと掻きまわす。そして、近くに居た博に訊いた。

「優亜ちゃんって、おいの事を嫌ってるん? やっぱり、おいが男やから?」

「違いますよ。ありゃ——照れてるんじゃないんですか? 優亜は男嫌いで、男に慣れてないから」

 持っていたペットボトルのジュースをゴミ箱に入れ、博は優亜を追いかけた。
 1人になった睦月は、欠伸をして空を見上げた。
 東は、一体どこに居るのだろう。自分より、東の方がこのゲームに似合うのに。
 神出鬼没。今でも学校に顔を出してくれるのは僅か。これでは竜年になってしまうだろうか——。
 いや、彼ならきっと、どこかで人を助けているに違いない。睦月はそう考える事にした。

「さて、優亜ちゃん追いかけるか」

 睦月は一言つぶやき、廊下を駆けだした。

***** ***** *****

 メイド喫茶に行くと、何やら中が騒がしい。一体何があったのだろう。
 白い引き戸を開き、中の様子をうかがう。
 何か、白い学ランを着た男子達が暴れているようだ。あ、何か女子もいる。

「ちょっと、何をしているの?!」

 優亜は引き戸をガラリと開け、白学ランの人達に叫んだ。
 ピタリとフリーズする時。1番前に居た、茶髪で金色のメッシュを入れた男子生徒が、優亜に近付く。
 今すぐグーで殴りたかったが、優亜はこらえた。右腕が何かプルプルしている。

「へぇ、可愛いじゃん!! ね、君も一緒に飲もうよ!!」

 その茶髪男子は、優亜の腕をつかんだ。
 ゾワッと寒気が走り、思わず優亜はつかまれた腕を振り払った。そしてそのまま茶髪男子に平手打ち。
 乾いた音が響き、男子の頬が赤くなる。

「あたしに触らないで、汚らわしい!!」

 優亜は涙目になって叫んだ。
 だが、茶髪男子は笑ったのだ。楽しそうに、子供のように笑ったのだ。
 何が面白いのかと訊く前に、茶髪男子は優亜に言う。

「俺、君を好きになっちゃったな。ねぇ、名前教えてよ」

「嫌!! 放してぇ!!」

 再度腕をつかまれ、優亜は振りほどこうとする。
 その時だった。

「女の子に、何してんねんボケコラカス!!」

 茶髪男子の腕を無理矢理引きはがし、放り投げた。
 金髪碧眼——睦月である。

「なっ……黒金?!」

「何や。お前さん、格好悪いで」

 睦月は眉をひそめ、茶髪男子を睨みつける。そして白学ランに目を落とし、言葉を吐き捨てた。

「白銀高校。まだお前さんら、他の生徒に手を出してたん?」

「フン。君に何が分かるんだい? 未だに不良のままだろう、黒金は」

「お前さんらと一緒にするな。おいは強い。お前さんらの言う不良じゃないんや」

 白学ランの生徒達は、ふーんとうなずくと提案した。

「じゃぁ、格闘ゲーム大会で決着をつけよう。ねぇ、そうしない?」

「上等や。かかってこい。何人でも相手したるわ!!」


 あぁ、危険な匂い。