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Re: 俺様メイド?!!-クライマックス突入!!- ( No.83 )
日時: 2011/03/20 21:40
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)

第15話

 『華月エターナルパーク』——最近出来た、大きな遊園地である。
 バスで30分ほど揺られ、隣町に行くとつく。

「ほぉう、ここがこのチケットの遊園地かー。楽しそうやな」

 皆よりも1つ年上のくせに、睦月は楽しそうだった。
 優亜は、少し残念だった。
 睦月から聞けば、東は一緒には行きたくないと言っていたらしい。何度も助けられたから、せめて一緒には行ってみたかったが——。

「優亜様、どうしました? お顔が優れないようですが」

「何でもない。大丈夫」

 優亜は無理に笑い、燐の質問に答えた。
 傍でずっと見ていた翔は、ふいと視線をそらす。微かに舌打ちのような音が聞こえた。

***** ***** *****

 入場30分後。

「ですから、次は『炎のゴンドラ』に乗りましょうって言っています!」

「せやからそれは2時間待ちや! 貴様、それに並ぶんか?」

「俺は『小さな小人達の世界が何か歌ってるー』に乗りたいけど」

「……眠くなるだけ。『桜花乱舞』に乗りたい」

「それは気持ち悪くなるよ!!」

 朝から並んでいた為か、案外すいている事を良い事にアトラクションに乗りまくった皆。
 次のアトラクションを決める討論に参戦していなかった優亜は、

「うぇ……、気持ち悪い」

 ベンチに座って下を向き、ボソリと一言。
 すると、全員が優亜に決定権を求めてきた。

「「「「「優亜は何がいい?!」」」」」

「何でもいい」

 というか、乗りたくないと言う前に、皆はまたも討論をする。
 反論しようと優亜がベンチから立った時、誰かに腕を引っ張られた。そしてベンチに座らされる。
 見てみると、妙に青い顔をした翔がベンチにへたりと座り込んでいた。

「どうしたの、翔?」

「うぅ、少し気持ち悪い……。すみません、優亜様。ここに居てもらえませんか?」

 吐きそうな表情で、翔は優亜に訊いた。
 へぇ、完璧男でも苦手なものってあるんだな、なんて思いながら優亜は小さくうなずいた。
 ここで少し休んでいく事を雫に伝えると、雫は「分かりました」とうなずき、皆を連れてどこかへ行ってしまった。

「大丈夫? 何か飲む?」

「平気……。ハァ、きっつい」

 男の口調に戻した翔は、女の姿だと言うのにもかかわらず、どっかりとベンチに座り込んだ。

「この姿だけでもきついのによ。何でアトラクションばかり乗るんだ」

「翔、アトラクション嫌いなの?」

 さっきまでの青ざめた表情は完全に消え、翔は優亜の方を向く。

「嫌いじゃないぜ。俺はどっちかっていうと好きだ」

「じゃぁどうして? 皆と一緒に行けば良かったじゃない」

 いざとなれば携帯があるし、恵梨や博がメアドを知っている。皆について行き、アトラクションに乗れば良かったのに。
 そんな事を思っていた優亜だが、翔はその予想をはるかに上回る答え方をした。

「俺が誰といようが勝手だろ」

 超俺様発言。
 ふと翔の顔を見れば、頬が少しだけ赤くなっている。
 もしや——照れていたりする?

「……何だよ、悪いかよ!!」

「悪くないよ。だって、翔はあたしのメイドさんだもんね」

 優亜はにっこりとほほ笑んだ。
 翔はさらに顔を真っ赤に染め上げると、優亜の手を引いてベンチから立ち上がった。

「え、ちょっと!! どこに行くの?!」

「つ・い・て・こ・い」

 淡々と告げる翔は、何故だか異様に怖かった。


 向かった先は男子トイレ。最初から大きな荷物を抱えていた翔は、一体何をするつもりなのだろうか。
 本人はここに来る前、「これはいつも使用している武器です」と答えていたが。
 翔がトイレに入って数分——やっと出てきた。

「おっそい。何してたの、しょ、う——」

 優亜が顔を上げると、そこに居たのは完全に男の子だった。
 クールな黒いパーカーに、灰色のインナーTシャツ。スラッとしたジーンズに歩きやすいスニーカー。そして黒いニット帽子を身につけた少年である。
 え、何? イリュージョン?

「着替えただけだ。行くぞ」

「え、どこへ?! ちょっと、痛いから!」

 優亜を引き連れ、スタスタと歩きだす翔。
 しばらくは口を開かなかったが、やがて恥ずかしそうなボソボソとした声が聞こえてきた。

「お前に付き合ってやる」

「え、何?」

「おら。乗りたいもの言え。好きなだけ付き合ってやるから」

 パンフレットを押しつける翔は、さっきのように赤かった。
 優亜は心なしか、笑みがこぼれていた。

 どうしてだろう。東と居る時よりか、翔と居る時の方が嬉しい。