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Re: 俺様メイド?!!-クライマックス突入!!- ( No.84 )
日時: 2011/03/21 15:35
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)
参照: 大ヒット御礼、参照600突破ありがとう。

第15話 3部


 『小さな小人が何か歌ってるー』では、船に乗って小人達が歌っている中を見て回ったり。
 『桜花乱舞』では、桜が舞うかの如く綺麗な湯のみに乗って、ぐるぐると回ったり。
 『水のダイブ』では、コースターが水の中に急降下したり。
 まぁとにかく、翔と優亜はアトラクションを次々に回っていた。
 最初は気分が優れなかった優亜だが、徐々にテンションを上げて行った。いつの間にか笑顔。

「ねぇねぇ、次は何に乗る?」

 満面の笑みで、優亜はパンフレットを持つ翔に訊いた。
 途端、翔はげらげらと笑いだした。

「え。何がおかしいの!」

「笑った」

 翔は子供のような笑みを浮かべて、優亜の頭に手を乗せた。
 恥ずかしくなった優亜は、翔の手を振り払い怒ったようにどこかに行く。
 ……男の人が嫌いなのに。どうして翔にだけは、こんなにも恥ずかしく思ってしまうのだろうか。

「好きじゃ、ないもん」

 誰にも聞こえないように、優亜は小さくつぶやいた。

***** ***** *****

 そんな2人を見ている男が1人————。
 金髪の外巻きヘア。切れ長の目で、優亜の隣で笑っている翔を睨んでいた。

「くっそう、優亜ちゃんに似合うのは僕なのに!」

 手に持っているティーカップの取っ手をへし折り、男というか坊ちゃんは叫んだ。
 そして思いつく。
 自分はお金持ちなのだ。あの男1人ぐらい、倒せなくてどうする——?

「もしもし、僕だ。七尾だ」

 携帯を巧みに操り、1つの電話にコールする。
 マイクから聞こえてきた声を聞き、男は笑みを浮かべた。それは、優亜が嫌う不敵の笑みだったが。

「優亜ちゃんと一緒にいるあの男を、ボコボコにしちゃってくれないかな?」

 そして笑う。また笑う。
 高らかに、誰かを踏みつけた後のような、そんな笑い——。
 あの、そこの人? 頼むから、園内ではそんな笑い方をしないでくださいよ。

***** ***** *****

 翔は嫌な予感がして、ふと顔を上げた。
 何かがおかしい。空気が明らかにおかしい。どこか、ピリッとしているような。

「どうしたの?」

 優亜は遊園地のマスコットキャラクターである、兎の『マニー』のぬいぐるみを抱えて訊いた。
 翔は優亜を守るように立ち、そして辺りを見回した。
 誰も怪しい奴はいない。家族連れのお父さんや、恋人達というリア充な奴らだけだ。

「瀬野、翔さんですね」

 唐突に声が降ってきて、翔は後ろを振り向いた。
 現れたのは、屈強な体つきのボディーガード。ちなみに黒人でスキンヘッドというオプションつき。
 嫌な予感はこれだったのか——邪魔だな。

「優亜、走るぞ!」

「え、翔! 待って!」

 翔は優亜の腕を引っ張り、人が溢れる商店街を駆け抜ける。
 スキンヘッドのボディーガードは、一瞬にして2人を見失ったらしく、すぐさま携帯を取り出す。
 仲間の電話番号を呼びだし、コールボタンを押した。

「逃げられた。『ファンシーランド』の方へ向かった」

『了解ぃ。すぐに探すぅ』

 スピーカーから聞こえてきた声は、妙にお気楽そうだった。
 スキンヘッドは、お気楽そうな声に問いかける。

「お前、今何している?」

『別に何も? 俺は、アトラクションに並んでいる女の子を監視中』

「気持ち悪いから即止めろ。クビになるぞ」

『だってねぇ、相崎財閥って言ってもまだ16歳でしょうが。お子さまには興味なし』

 ブチッと電話を切り、スキンヘッドは携帯を握りつぶした。
 粉々になった携帯を地に捨て、思う。
 あいつ、絶対ブチ殺す。


 一方、翔と優亜は『ファンシーランド』に逃げ込んだ。
 人が多い場所——紛れるには絶好の場所かもしれない。そう思ったのだろう。

「な、何なのよいきなり!」

「悪いな。命の危険を察した」

 翔は優亜から手を放し、ツイとそっぽを向く。
 優亜は翔に握られた手を払い、そしてうつむいた。
 少しだけ、翔に手を繋いでもらって嬉しいと思ってしまった。

 刹那、そんな2人の空気をブチ壊す声がした。


「見つけたぁ」


 オレンジ色の髪が、晴れた青い空に舞い上がった。