コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 俺様メイド?!!-クライマックス突入!!- ( No.89 )
- 日時: 2011/03/27 19:43
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)
第16話 3部
その日は、やけにボーとした感じで目が覚めた。
ゆっくりと体を起こして、辺りを見回してみる。いつも居るはずの翔が居ない事に気付いたのは、30秒後の事だった。
「あ、今日は有給か……」
優亜はため息をつき、ベッドから出る。ゆるゆると支度をして、部屋のドアを開いた。
ら、何かゴツイ男達が見えた。
「……えーと?」
優亜はとりあえずドアを閉め、目をこする。
まだ夢でも見るのかなー、早く覚めないかな、と思いながら大きく伸びをして頬をつねる。
ピリッとした痛みが頬を駆け抜けたから、これは夢ではないと。自分で確信した。
「そっか、夢じゃないんだね。燐さん達が追い払ってくれたかなー」
優亜はもう1度ドアを開けた。
……さらに、男達の量が増えていた気がした。しかも、怖い顔のオプション付きで。
「な、何なのあなた達!」
優亜は部屋の隅により、男達に向かってどなる。
すると、男達の先頭に居たスキンヘッドが、事情を説明し始める。
「七尾大輔様の命により、あなた様を連れて行きます」
そんな勝手な事情で連れさらわれる程、優亜はお人よしではない。
しかし、今の優亜に男達を撃退する力など持ってはいない。出来る事と言えば——
(大人しく、捕まるしかないの?)
あの大輔と言う男と結婚なんてのは、死んでも嫌だ。捕まるのも嫌だ。
でも、誰もいないし助けてもくれない。大人しく捕まるのが得策、と言ってもいいだろう。
その時だった。
ギャッという悲鳴や、このっという怒号が聞こえ、入口に居た男達が爆発した。訂正、何者かによって吹っ飛ばされた。
埃が舞い上がり、辺りが1面煙だらけになる。
「な、に————?!」
優亜は咳き込みながら、入口を見やった。
入口にあったのは、2つの人影。1つは髪の短い男、もう1つは三つ編みをした女の人——。
燐と雫だ。
「燐さん! 雫さん!」
優亜が2人の名前を呼んだ瞬間、2人はほぼ同時に動いた。
今まさに優亜に襲いかかろうとする数人の男を、雫が箒から抜き去った刀で仕留める。
その背中を、また3人の男達が襲いかかろうとした。
しかし、燐が麻酔針を仕込んだピストルを使い、男達を眠りの世界へと誘う。
「何だ貴様ら、あの女装メイドと同じ奴か!」
雫に吹っ飛ばされたスキンヘッドは、床に這いつくばりながら3人を見上げる。
その話を軽く聞き流した燐と雫は、部屋の窓を全開に広げる。
「失礼しますが、優亜様は誰の指も触れさせません。本人が嫌がっているのですから、それを尊重するのが従者の美学と言う物ではないのでしょうか」
燐はいつも通りの笑顔を浮かべ、窓から飛び降りた。
雫も優亜を抱えてその後に続く。
3人は、青く青く晴れ渡った空を駆けだした。
「どうするのです、燐。あの者達は、帰るまで絶対に家から出て行きませんよ?」
雫は、チクチクとした口調で燐に問いかける。
隣を走る燐は、困ったように肩をすくめて見せた。
「手はあります。あの人の家に匿ってもらえばよろしいかと」
「あの人の家って、誰ですか!」
雫に背負われている優亜は、燐に訊いた。
燐は「もうお分かりでしょう」とだけ答えると、向こうにそびえ立つマンションを示した。
そう、彼——瀬野翔が住むマンションである。
***** ***** *****
マンションの12階、翔は朝から大変だった。
母親から朝から電話で説教され、学校には行っているのかちゃんと仕事はしているのかを話さなければならなかった。
親(主に母親)の反対を押し切って、無理矢理独り暮らしをしているのだ。
「ったく、朝からうるせぇなー」
ソファに寝転がり、天井に手を伸ばす。
何で今日に限って有給なんだろうか。今からあいつに会いに行ってやろうか、なんて考えた。
翔はふと苦笑を洩らし、ソファから起きあがった。
刹那、インターフォンが鳴り響く。
「誰だ、こんな時間に」
翔は少し不機嫌そうに顔をゆがめると、インターフォンを取る。
「ハイ、瀬野ですけどぉ」
『開けてください。燐です、久遠燐です』
インターフォンから聞こえる燐の声は、どこか慌てているような気がした。