コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 俺様メイド?!!-クライマックス突入!!- ( No.96 )
- 日時: 2011/03/30 22:01
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)
- 参照: いつの間にやら参照700突破! サンクスです。
第16話 5部
「いいか?! 絶対に俺の部屋に入ってくるなよ。絶対にだ!!」
「分かってるわよ! それ、今日で何回言った?!」
それからというもの、翔と優亜は2人で暮らす事になってしまった。
いつものメイド姿で居てくれるなら平気なのだが、そう言う訳にもいかない。何せ、ここは翔の家なのだから。
ちなみに言っておくと、メイド服を着ていない翔は普通にカッコいいぞ。(何を言ってるお前←
「お前の部屋は——……。まぁ、お前の家よりかは狭いけど、ここで良いよな」
燐達が持ってきてくれた荷物を抱え、優亜は翔に案内された部屋に入る。
本宅である優亜の部屋を見れば劣るだろうが、女の子が住むには十分な広さである。
きちんとベッド、机、タンスなどの生活用品は一通りそろっている。元々誰かが住んでいたような、そんな感じをさせた。
翔は、試しに部屋の電気を点けてみる。軽い音がして電気が点き、部屋を明るくする。
「ここは元々、客が来た時に使う部屋なんだ。好きに使ってくれて構わないからよ」
「あ、」
部屋を去ろうとした翔を、優亜は引き止めた。
翔は立ち止まり、「何だよ」と言葉を投げる。
「別に夜襲ったりしねぇからよ。安心して寝ていいぞ。あ、シャワーは隣だから」
「そうじゃなくて!」
一瞬だけ言うのをためらった優亜は、決心したような表情を浮かべ言葉を紡いだ。
「あ、ありがとう。匿ってくれて」
顔を真っ赤にして翔にお礼を言う優亜。
いきなりの事で驚いたのか、翔は固まっていた。だが、すぐにその表情が笑みへと変わって行く。
「1人の女を匿うぐらい出来るしな。心配すんな、俺が守ってやるから」
ポンポン、とあやすように優亜の頭をなでる翔。傍から見れば、そこか恋人のような雰囲気を醸し出している。
一気に恥ずかしさが込みあがってきたのか、優亜はゆでダコのように再度顔を赤く染めると翔の手を振り払った。
翔は、今まさに枕を投げつけようとしている優亜から逃げるようにして部屋から去った。
優亜しか居なくなった部屋で、小さな小さな声が響く。
「……馬鹿。どうして、優しくするの」
一方、翔も同じ事を思っていた。
自分の部屋の前にズルズルと座り込み、深いため息をつく。
「馬鹿だよなー、俺も」
恥ずかしいのか、またはドキドキしているのか翔は火照った顔を押さえながらつぶやく。
「調子狂うぜ——好きな女と一緒に居るなんて」
***** ***** *****
その日、夕方。翔は優亜が居る部屋の前でウロウロしていた。
理由は「今日の晩御飯はどうするか」という簡単な疑問である。客人でもある優亜にも、きちんとリクエストを聞くべきだろう。
翔が迷っているのはそんな事ではなく、「メイドのような声で訊くか否か」である。
それぐらい自分で決めろ。
「……あーもう! もういいや!!」
優亜も女の方が良いだろー、とかやけくそで叫び、翔はドアをノックする。
咳払いをして、中に居るであろう優亜に問いかけた。
「優亜様、今日の夕飯の事なんですがー」
へんじがない、ただのしかばねのようだ。
嫌な予感がして、翔はドアノブを捻った。見たのは意外な光景だった。
「————————」
ベッドにうつぶせになって、すやすやと眠る優亜。まるで子供のようだ。
優亜が攫われたと思った翔は、激しい脱力が体を襲った。
自慢の(なのか分からない)茶髪は乱れ、本当にお嬢様なのだろうかと思うほどに豪快な眠り方である。
「……ったく、本当に疲れさせるなこいつは」
翔はため息とともに言葉を吐き出すと、優亜の髪を1房持ちあげた。
サラリと自分の手からこぼれ落ち、布団に広がる。まるで羽のようだ。
「ま、そこも良いんだけど」
そうつぶやいた翔の顔は、自然と笑っていた。