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- Re: オタクな生徒会長は絶好調!?『番外編11更新』 ( No.142 )
- 日時: 2011/08/06 16:41
- 名前: 棋理 ◆U9Gr/x.8rg (ID: HwpkBxu2)
番外編12『恋を知った私は我が儘になった』
———小学校の時のこと————
あれは小学校の1年生の時。私は自分を取り巻くこの状況を、煩わしく思っていた。
生まれたときから私は「星宮財閥のご令嬢」として扱われてきた。何処に行っても特別扱い。そんな扱いに嫌気がさしていたのも事実だし、いい加減早く独り立ちしたいと思ったのも事実。そういう環境に生まれてきた故か、私は歳不相応に思われていた。むしろ、それを望んでいた。血族なのか、私は妙にプライドが高かった。周りの子どもたちは皆純粋で、人見知りが激しかったりするのに、私だけが違った。友達は作らなかった。休み時間は一人でいた。そんな私を見て心配する教師は、誰一人いなかった。恐れたのだ、私の家のことを。私に注意すれば親に言われ、たちまち自分の立場が危うくなる。だから私はそういう状況を作らないように必死だった。必要最低限の言葉しか教師とかわさなかった。それを見て教師達もいつかは触らぬ神に祟りなしと言った様子で、私の周りには誰も近寄らなくなった。
入学して半年が過ぎた。私は相変わらず一人だった。もうそのことには慣れていたし、今更クラスの輪に入ろうとは思わなかった。
『それでは、道徳の授業を始めます。一人一回は手を上げて発言してくださいね』
『はーい!!』
先生の言葉によい子のお返事が続く。あぁ、またこの時間か。道徳なんて面倒だ。私の発言を聞いただけで、先生は頬を引きつらせるし、クラスの子達は異端者を見るような目で私を見つめる。けれどまぁ、良いか。どうせ後に発言するよりは、早めに言って外を眺めてれば。そう思って手を上げると———
『くだらない』
『……へ?』
私の心境を代弁するかのような、冷たい言葉が先生にむかって放たれた。そしてその言葉の主は、意外にも私の隣にいる男子生徒だった。
『一人一回手を上げるとか、くだらないと言っているんです』
『は、原田君?先生にその口の利き方はダメですよ』
『そうですよね、自分の保身のためにこうやって僕みたいな生意気な生徒にお灸を据えたいけれど、僕の家のことを気にして何も言えないんですよね』
『っ……』
その言葉に先生が涙ぐむ。……さすがの私でも言い過ぎかなと思うくらい、その男子生徒の言葉は容赦がなかった。自分で言うのも何だけれど、いわゆる問題児なのではと思った。けれど———
『お前もなんか言えよ』
『へ?』
私の方を見て、確かに彼はそういった。そしてようやく気づく。彼は私のために言ってくれたんだって。
小学校に上がって、初めて人に興味を持った。自分と同じくらい生意気に思われていて、私のために刃向かってくれた彼に。
『あ、ありがとう……』
『……別に』
授業が終わり、私は真っ先に彼にお礼を言った。けれど彼は読書を続けている。その隙に、私は彼のことを観察してみる。名札は『原田和毅』と書いてある。クラス分けが発表されたとき、私は全員の名前は覚えたけれど顔は覚えていなかったことに気づく。そして、彼の顔を名前を覚えたいと思い、私は彼の顔を見た。正直言って、惹かれた。彼の瞳の色に。この世の全てがどうでも良いような、深く、それでいて濁ってはいない瞳。私と同じだと思った。
『…………』
『……なんだよ』
『へ、へ?』
いつの間にか私は見入っていたらしい。慌てて彼から視線を外した。
『お前、星宮財閥の子だろ』
『…………そうよ』
思わず身構えてしまう自分がいた。ああ、彼もやっぱり私をそういう目で見るのか。期待した自分に失望する。私はこの後適当にあしらおうと考えていたとき、彼から思いがけない言葉が出た。
『……俺も、お前の気持ち分かるから』
『え?』
そう言って、私の方をまっすぐ見て言った。
『友達に、ならないか?』
『っ———!……うん!』
原田和毅。彼は小学校で初めての友達。小学校で初めて会話した人物。小学校で……いや、人生で初めて————恋心を抱いた人物。