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Re: オタクな生徒会長は絶好調!?『番外編11更新』 ( No.143 )
日時: 2011/08/06 17:32
名前: 棋理 ◆U9Gr/x.8rg (ID: HwpkBxu2)

番外編13『恋は時に人を変える魔物になる』

 私は小学校の時のことを思い出していた。どうして今まで忘れていたのだろう。初めて恋をしたこと。そのことを両親に言ったら許嫁の説明を受けたこと。瞬時に諦めなければいけなかったこと。どうして、どうして、どうして。私は自分の浅はかさに絶望する。
 自分の腕の中で絶望しているのが分かったか、奏汰君は私に冷たい笑みを見せる。

「やっと思い出したんだ。原田君も可哀想にね」
「……で、でも。それが私立にすることには関係ないんじゃ……」
「大いにあるよ。言ったろ?彼の父親は玲が通っていた女子校の理事長だって」
「それが何を———」
「君の父親と彼の父親が、君を是が非にでも入学させたがっていたんだ。それを頼んだのは———原田和毅さ」
「なっ————」

原田君が……原田君がお父さんに頼んで、私を入学させようと……?でも、いったいどうして……。

「まだ分からないの?原田和毅は、玲と一緒の中学に通いたかったんだよ」
「で、でも私がいたのは女子中よ。彼がどうやっても一緒に通え———っ!?」
「ようやく分かったんだ」

私が通っていた中学校、魅星夜学園(みほしよがくえん)は女子校。けれど、実際には校舎が男女別に分かれているだけであり、校庭や大図書館、プラネタリウムなどはほとんど共同に使っていた。つまり、ほとんどが共学化していたのも事実だった。
 
「ほとんどが共学化している学校に一緒に通うっていうのは、可能だろ?」
「……じゃあ原田君は魅星夜学園男子棟に通っていたの?」
「そういうこと。けれど君はその環境になじめなかった。小学校の6年間で得てしまった、『普通』の生活が恋しくなった。だから君は父親に頼んでここに来た。それを聞いた彼もまたここに来た。運命だと思ったよ。大好きな玲が僕の所に来てくれたことが。僕から玲を奪った彼がこの学校に来たことが。」
「…………」

私は彼の言葉に何も言えなくなる。どうしてそこまでして私のことを好いてくれるの?私はもう諦めてたのに。私はもう———原田君を好きになりたくなんか、なかったのに。
 奏汰君はようやく私を引き寄せていた腕を放すと、嘲笑う。

「君の両親は今でも君を私立に転校させようと想ってるみたいだね」
「…………」
「そんなに私立が良いのなら、僕が作る。そして———二度と僕以外を選ばせない」

そう言い捨てると、彼は公園を出ていった。

「……なん……で」

何で。どうして。あの頃の奏汰君は何処に行ったの?

「……ごめ……なさっ……」

ごめんなさい。関係ないのに巻き込んでしまって、ごめんなさい原田君。

「……うっ……あ……いや……」

あの日に戻れるのなら。私達の関係を決めてしまった小学校の頃に戻れるのなら。どうか神様、お願い。
 恋なんかしなければ良かった。奏汰君に出会わなければ良かった。原田君に愛されたいなんて、願わなければ良かった。



———————この学校に、来なければ良かった。