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- Re: オタクな生徒会長は絶好調!?『番外編12、13更新』 ( No.147 )
- 日時: 2011/08/10 11:35
- 名前: 棋理 ◆U9Gr/x.8rg (ID: wbEZ.sQ0)
番外編14『運命なんていうのは神様の気まぐれでしかない』
「…………」
ベッドの上で一人考える。どうしてこうなってしまったのだろうか。
あれからどうやって家に帰ってきたのか、正直覚えていない。ただ、帰ってきたときにメイドさん達がビックリしていたのは覚えている。何事かとコックさん達も集まってきた。けれど私はその中でも安心していた。龍が帰ってきていないことに。おそらくまだ文化祭の準備をしているのだろうけれど、そのことに私は感謝する。彼にだけは私に弱さを見せたくはない。ふいにそう思ってしまった。龍は小さい頃から私の事を何故か慕ってくれた。そんな彼に私は、自分の弱さを見せたくはなかった。見せたところで、きっと龍はここにいる誰よりも———両親よりも一番心配してくれそうだったから。それ自体は別に良いのだけれど……ただ、龍が心配することで両親の耳に入ることだけは避けたかった。私はメイドさん達に両親と龍にだけは絶対言わないように口止めすると、重い足を引きずって部屋に帰ってきた———と思う。
「…………」
あれから何時間ぐらい経っただろうか。外はすでに真っ暗で、先ほど龍が帰ってきたらしいということだけは分かった。
目が痛い。きっと泣いた所為だろうな。けれどもう、いくら悲しくったって涙は出なかった。既に頭の中が整理されていて、これからのことを考える事に集中する。
「…………よしっ」
私は自分自身に喝と気合いを入れると、頬を叩く。こんなしんみりはらしくないよ、私!! とにかく今は文化祭のことだ。ここまで準備してきたのだから、今更くよくよしていても仕方がない。理由は分からないけれど奏汰君は今年の文化祭に力を入れているらしい。それよりも私は今、原田君と話をしなければいけないと思った。奏汰君は彼を敵視している。それなのに私たちの状況を教えないわけにはいけない。私は生徒会の連絡網を見つけ出して、原田君の携帯にかけてみる。
「…………」
ちょっと待て。何を話す?というか、まずどこから説明する?そもそも奏汰君が言っていたことは本当のこと?ベッドの上で携帯を片手に、もんもんと自問自答を繰り返す。
どうしよう。どうやって説明しよういやそもそも話してもいいのだろうかいやダメだろう私でさえも一応まだ疑っているのにいきなり話したら混乱しそうだいや絶対混乱するそもそも私がまだ混乱してるのに————
「…………脳内がカオスだわ」
ここまでやって少し落ち着いてみる。うん、自分で自分にツッコメるほど回復はしたみたいだ。けれどここで立ち止まってはいけないと、再び自分に言い聞かせる。奏汰君は文化祭を成功させたいと思っている。それはどんな理由かは分からない。けれど文化祭が成功したとしても、奏汰君の野望は変わることがないと思う。というよりは、文化祭が成功させたことによって奏汰君の勢いは増す。そう直感が告げる。
「まさか日常生活で直感を使う日が来るとはね……」
けれど今ここで考えていても何も始まらないのは事実だ。私は意を決して電話を———
『♪♪〜♪〜〜♪〜♪〜♪♪』
「っ————!?」
する前にかかってきた。ディスプレイを見ると…………は、原田君。もしかして見極められてるの!?私の行動全部お見通し!?なんてアホなことを考えてないで、早く出なきゃ……。
「も、もしもひ!?」
『………頭大丈夫か?』
「電話の第一声がそれってどうなのかなぁ!?」
ただ声が裏返っただけでそのツッコミは酷いと思うのは私だけでしょうか!?
とりあえず私は咳払いで誤魔化すと、原田君が私に電話をかけてきた理由を聞いた。
「な、何か用?」
『……今日、会長と何かあったのか?』
「なっ……」
何で知ってるの?そう言いたいのに言葉がのどに引っかかる。私のその反応を感じて確信したのか、原田君はやっぱりなとつぶやいた。
『なぁ星宮。今から会えるか?』
「へ?い、今から?」
『ああ、そうだ』
私は壁に掛かった時計を見る。時刻は7時。おそらく夕飯時だけれど……、今はそれよりも原田君と話さなくちゃいけない。私の直感がそう告げている。
「……分かった」
『それじゃあ15分後にひだまり公園で』
原田君はそう言うと電話を切った。
…………予想外と言えば予想外の出来事。それになにより、原田君から電話をかけてくるなんて思ってもいなかった。————けれど
「…………行かなくちゃ、始まらないもんね」
私はすぐに支度をする。そして部屋のドアに『就寝中 起こさないでください』の札をかけると、こっそりと裏口から外に出た。
それから一ヶ月後の文化祭。私たちは————
——————奏汰君に負けた。