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Re: オタクな生徒会長は絶好調!?『番外編14更新』 ( No.148 )
日時: 2011/08/11 18:55
名前: 棋理 ◆U9Gr/x.8rg (ID: wbEZ.sQ0)

番外編最終話『新たな決意を胸に』

———あの日の夜———

どうして私と奏汰君の間に何かあったって、分かったの?

『……俺が家に帰ったら、会長から電話があったんだ。そして、全て聞かされた』

…………つまり、奏汰君はあからさまな敵意を彼に伝えたということ。それを聞いて、原田君は何を思ったのだろう。

『俺は確かにずっとお前を思い続けてきた』

……どうして?どうして私なんかを?

『あの時の俺の気持ちを理解してくれるのは、お前しかいなかったから』

それは私も同じだよ。原田君がいなければ、私はきっと今頃どうかしてた。

『会長がお前のことを気にしているというのは分かってた。許嫁って事も知ってた。だから、俺は……』

そんな苦しそうな顔をしないでよ。原田君は悪くない。

『俺は、あいつの野望を絶対に止めたい。お前がどうこうじゃなくて、この学校のために。今この学校は狂ってるんだ。夢も希望のない。それは上に立つ者——会長さんがそうだから。だから、俺は——————』



そう言った一ヶ月後の文化祭では、私たちは為す術もなかった。勝ち負けではないと思う。けれど、きっと後々私はこう思う。『彼以上のものは作れない』
 それほど今年の文化祭は盛り上がり、最高の作品となった。そう、作品なんだ。文化祭は彼が作り上げた作品。そう思わざるを得ないほど、この文化祭は盛り上がり、生徒達が興奮した。その瞬間、私は原田君との約束なんか守れないと確信した。彼との約束。それは———

————この学校を二人ですばらしいものにすること。

けれど、無理だ。きっと。こんなに完成度の高い作品を越えるなんて、私には無理だ。
私たちの夢は……終わった。



———文化祭の後片付け———
「…………」

私と原田君は生徒会の片付けをしていた。他の人たちは今頃、各部活動がだした演しものなどの片付けの指導をしている。正直言って、今他の人がいなくて良かったと思っている。原田君も同じなのだろうか。

「……俺たち、作れるのかな」
「へ?」

唐突に原田君が言った。驚いて原田君の方を見るけれど、顔を上げないでせっせと箒で床を掃いている。それにならって、私も飾り付けを外しながら聞く。

「今日以上の……いや、あいつを越える学校にできるのかな」
「…………」

出来るって言いたいのに、口が開かない。きっと本心では出来ないと思っているのだろう。私は原田君の言葉に、ただ無言で返す。原田君もただ無言で掃除をする。
 
「……出来るよ」
「……へ?」

口が勝手に動く。無意識のうちに言葉が出る。それは、原田君だけでなく自分でも驚いていた。

「出来る。ううん、出来ないとダメ。私は奏汰君の野望を止めたい。だから……この学校をもっと良くして……私立なんかよりずっと良い学校にしたい」

そう、これが私の本音。奏汰君が私立にするのは、私のため。だったら、私も私のために動く。私が大好きな学校にここを変える。そして、私立なんかより、よっぽど良い学校にして……奏汰君が私をうらやましがるくらいの学校になったら……。

「———あの頃に戻れるのかな」
「……星宮」

二人で一緒にご飯食べたり、宿題一緒にやったり。許嫁という関係なんかどうでもよかった、あの頃に。

「少なくとも僕は、今も関係は変わっていないと思うけどね」
「っ———」
「……会長」

生徒会室のドアのところに、いつの間にか奏汰君が立っていた。いつものように爽やかな笑顔で。私は思わず肩に力が入る。肩だけじゃない。足にも、手にも、顔にも、体の全てが硬直する。再開した4月の入学式の頃とは、比べものにならないくらいの変化。そう思っているのは、私だけ。
 ふと顔を上げると、原田君の背中が見えた。どうやら私を庇うように立っているらしい。そのことに唯一の救いだと感じる。

「ふうん、騎士きどり?まったく、妬いちゃうなぁ」
「…………」

奏汰君の冷ややかな言葉に、ただただ無言で返す原田君。私もただ何も出来ないまま、無意識に原田君の制服の裾を掴む。

「……玲、僕は今でも変わっていない。ずっと、これからも変わらない」
「……嘘」
「嘘じゃない。僕は変わらない。小さい頃から君のことだけを想っている」
「……やめて」
「それなのに変わったって想うのは、自業自得なんじゃないかな。君が僕を裏切って、そっちの彼に思いを寄せたりしなければ、こんなことには———」
「いい加減にしろ!!」

たまらなくなった原田君が思わず声を上げる。けれど、実際奏汰君が言っていることは事実だ。私が原田君を好きにならなければ、奏汰君の中のどす黒い感情が生まれなくてすんだはず。私が彼の所に行けば、奏汰君はこうやって歪んだ愛を覚えなくてすんだ。けれど———

「後悔は、してない」
「…………玲」
「こうなったらもう、私は真っ向から奏汰君に抗うよ。奏汰君を越える学校を作る。どんな手を使ってでも」

そう言ったとたん、奏汰君の笑みが冷酷な微笑に変わる。
大丈夫、私は越えられる。2年後に生徒会長になって、必ず、必ず、必ず、良い学校にする。

「そこまで言うなら、良いよ。僕も玲が生徒会長になるまで、私立かは待ってあげる。せいぜい精進してね、愛しい人と」
「何とでも言ってよ、絶対、絶対、ぜっっっっっったい越えるんだから!!」

私はガラにもなく、人差し指を突きつける。



—————今が本当の、始まり。