コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: オタクな生徒会長は絶好調!?『番外編最終話更新』 ( No.151 )
- 日時: 2011/08/12 19:42
- 名前: 棋理 ◆U9Gr/x.8rg (ID: nmP/.Rbk)
第39話『かくかくしかじかって、めっちゃ便利だよね』
「時間が、ない?」
俺は会長の言葉に首を傾げる。俺だけじゃなくて、生徒会も風紀委員会もだ。
そんな俺たちの様子に、会長は真剣な顔をして告げる。
「私と原田君が在籍していた、2年前の生徒会の事よ」
「……委員長が、生徒会に?」
それに食いついたのは、笹屋だった。そして、風紀委員長がそう、と頷く。
<僕は2年前、生徒会に在籍していた。そこで、ちょっとしたいざこざがあってね>
「……いざこざ」
<きっと覚えている者は少数だろうな。熱狂的な盛り上がりを見せた、文化祭の裏で何があったかなんて>
「そうね。きっと笹屋君たち2年生には伝わってないと思うから。
それじゃ、今から言うわ。2年前に起きたこと————かくかくしかじか———ってことがあったの」
その会長の短く、そして果てしなく短い説明に俺たちは———
「「「「分かるかぁぁあああ!!!!」」」」
キレたることしかできなかった!!いやいやいや、実際にかくかくしかじかとしか言ってないんだけど!?小説にすれば「ああ、これだけで説明終わったんだ」とか思うけど、実際にかくかくしかじか言っても伝わることないからね!?いや、伝わるのは手抜きもしくは行数稼ぎだけだからね!?
俺たちの反応に不満だったのか、委員長と会長は不満げに言い訳をする。
「面倒ね……。あ、そうだわ詳しくは番外編をチェック☆とか」
「そんな続きはウェブで的なノリで言わんでください!つーか番外編って何!?いつの間にそんなの書いてたんですか!?」
「棋理って言う人に頼まれて、試しに書いてみたんだけど……どうやらそれが番外編として載ったらしいのよ。だから、それを読めば分かるわよ」
「すっごい投げやりだ!シリアスパートに入ろうとしているのに、すっごい投げやりだ!」
<星宮の辞書に緊張感の文字はないからな>
「分かってるんだったらせめてあなたから話してくださいよ!!」
ちっくしょう、良い雰囲気だったのになぁ!これほどにないシリアスムードで、いかにもフィナーレに突入する感じだったのになぁ。そういう所ぐらい分かってくれると思ったんだけど……どうやら無駄だったらしい。
「とりあえず、話すわよ。手っ取り早くね」
そう言うと、ようやく話し始めた。
————10分後————
「…………どう?これで伝わったかしら」
本気で語り出した会長の雰囲気に飲まれながら、俺たちはしばし沈黙した。その奏汰っていう人の歪んだ愛に、少し驚いた。今風に言うとヤンデレというのだろうか。そんな愛が身近にあると言うことにも、驚く。
「…………って、こんなシリアスな空気になるなんて思わなかったわ」
<それなりに覚悟しておけと言っただろ>
「分かってるけど……。それに、まだ話していないことがあるわ」
そしてまた、神妙な面持ちで語り出した。その後の話を———。
私たちが2年生になった時、会長と幸田先輩は卒業していった。そして新たに入ってきたのは龍だけだった。奏汰君とのいざこざは、私と原田君の秘密と言うことにした。言うわけにはいかなかったから。生徒の中には奏汰君を慕っていた人も多くいた。そんな人たちからすれば、奏汰君を越えようとしている私たち二人の存在は目障りだろう。生徒会長になるという夢を妨害されかねない。そういう理由だった。
2年生ではとりあえず苦労した。原田君と一緒に学校を良くするために動き、働き、時には汗をかいて涙もした。その努力がきっと、3月の生徒会長投票につながると思っていたから。
そして3月。私と原田君しか立候補者はいなかった。それはそれでラッキーなことだった。けれど私たちはたとえ相手が同志だろうと、譲歩しなかった。この学校のトップに立つ者としては、きちんと真っ向から相手と勝負して勝たないといけない。そう思ったから。
『それでは開票します』
いよいよ投票日当日。私と原田君はステージの上で結果を待っていた。二人ともやれることは全てやって、後はただ結果を待つだけだった。全校生徒で442人いるこの学校は、二人で割って221票ずつで同票になってしまう。しかし過去にそんな事例はないために、特に気にもしていなかった。
『結果発表します。星宮玲、221票。原田和毅、221票』
「え、うそ……」
「そんな事ってありなの?」
「つーかどうするんの実行委員?これじゃ決まんないじゃん」
たちまちどよべきが体育館を包む。……夢みたい、だった。当事者の私たちでさえもそう思ってしまうほど、この展開は予想だにしていなかった。それは原田君も同じらしく、らいくもないほどに唖然としてた。
ステージの下で先生達があたふたしている。と、そのとき———
「へぇ、これはすごいや」
「っ———!?」
たいして大きな声でもないはずなのに、その堂々たる姿からか体育館に響き渡る声。本来ならばここにいるはずもない人物。
「奏汰……君」
「……やぁ玲。久しぶりだね」
私たちが生徒会長になろうとしたきっかけの、奏汰君だった。どうして……どうしてここにいるの?一体何しに来たの?今はどうしているの?様々な疑問が頭をめぐるも、なかなか声に出ない。それは彼を見た事による恐怖か、うれしさか。けれど私の気持ちを代弁するかのように、原田君が私を背後に回して言う。
「……何しに来た」
「あれ、敬語じゃないんだ。ちょっと酷いなぁ」
「何しに来た」
はぐらかそうとしている奏汰君に、今度は怒気をあらわに言う。奏汰君の放つオーラは、正直言って怖かった。全てを凌駕するようなオーラを身に纏い、見る者全てが身をすくめるような笑顔。敵意を明確にしていないと言うことが、余計怖かった。
「僕は次期生徒会長の顔を拝みに来ただけだよ。けれど、どうやら面白い結果のようだね」
そう言うと、喉でくっくと笑う。そして私と原田君のいるステージ上に上がってきた。
「……じゃ、これが僕の投票権」
「なっ———!?」
「なんであんたが持ってるんだよ!」
ポケットから取り出したのは、丘の上高校の校章が入った投票用紙だった。
なんで、彼が持っているのか。私は何度も読み返した生徒会長選挙のマニュアルを思い出した。
「…………生徒会長を務めたことのある者にも、投票権を与える」
「星宮?」
「さすが玲だね。そういうことだから、これ、よろしくね」
「は、はい!」
奏汰君から受け取った投票用紙を受け取った実行委員が、票をプラスする。
集まったのは投票数は443。当然同票ということはない。
「では改めて発表します。新生徒会長は———星宮玲さんです!」
その言葉を聞いた瞬間、思わず私は奏汰君の方を見る。そこには、自分の思い通りになったことを喜ぶ、子どものような無垢な笑顔の奏汰君がいた。