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Re: オタクな生徒会長は絶好調!?『第42話更新』 ( No.167 )
日時: 2011/09/18 18:41
名前: 棋理 ◆U9Gr/x.8rg (ID: lIcPUiXw)

第43話『とある風紀委員会の様子』

「……ふぅ」

生徒会室とつながる電話を切ると、僕は自然と溜息をついた。信頼していた風紀委員の彼らにさえ黙っていた過去という名の荷物を、ようやく下ろせたことに安堵する。もっとも、それは生徒会長の星宮も同じだろう。彼女は自分が持っている荷物を他人に手を貸してもらってまで運ぶようなことは、絶対にしない。目的地に着くまで絶対に人の手は借りないし、借りたくても心の中にとどめておく。それが彼女の強さでもあり、また弱さでもあった。
 1年前、星宮が生徒会長になったときは正直言って、悔しかった。正々堂々と勝負していたつもりが、あの男のせいでアンフェアへと暗転した。だからといって、同志である彼女に対して浮かんだ悔しさはほんの一瞬であり、別の道を使って彼女を支えようとすぐに思った。
 けれど、それは先日あの男が来てから壊れてしまった。けれど、良い方向に壊れたのだ。まるで、廃墟となったマンションを崩壊するかのような、善の破壊。あの男は、風紀委員室に来てこう言った。

「君は今の今まで、玲のことを支えてきたことなんてあったのかい?」

無いなと心の中で即答する。そのことに驚いた。それと同時に安心した。あぁ、僕はまだ冷たい人間で居られる。
 この学校を良くするなんて事は、何かの犠牲を無しには出来ない。彼女とは逆に、僕たち風紀委員会は要るものは大切にする、要らないものは捨てるを当たり前にやってきた。そしてそれは、これからも必要なのではないかと思う。学校を良くするという野望がある限り、僕は誰よりも自分に厳しく、他人に厳しくなくてはいけない。

————僕が玲を支えた事なんて、あるか?

わかりきっているのに自問してみる。無い。けれど仕方がなかった。何故か風紀委員会と生徒会にはしがらみがあり、それをようやく解除できたのは僕たちの代と言っても良い。それほど、風紀委員会と生徒会の間には越えられそうで越えられない壁があった。実際、越えられたのは今日だと言っても過言ではない。だから今日になって生徒会とコンタクトをとった。純粋に玲の意見を聞きたかったし、それに至るにはまずわだかまりを解消することが先決だった。
 久しぶりに声を聞くと、ずいぶんと印象は変わっていた。以前は「誰よりも強くあろうとしているけれど、誰よりも芯が弱い女の子」だった。けれど、今は違う。「誰よりも強くあり、誰よりも芯が強い女性」になっていた。女の子から女性への変化。それは身体的にもそうなのだが、やはり精神面での方が強いだろう。はっきり言うと、とても惹かれた。彼女の強さに。初めてあった小学校の時は、全てがどうでも良いような目をしていたけれど、今は全てを良くしたいと思っているような目だ。そのギャップに、恥ずかしながら胸が高鳴った。今彼女とプライベートに話したら、いったいどんな話が聞けるのだろう。けれど、それはこの文化祭が終わってからだ。

「……委員長、只今戻りました」
「あ、ご苦労様」

いつの間にか笹屋が俺の隣に控えていた。どうやらしばらく考え込んでいたらしい。そうしている間にも、風紀委員のメンバーが部屋に入ってくる。

「それにしても、まさか委員長と会長との間にそんなことがあったとは知りませんでした」
「……ずっと話そうとは思っていたけどな」

嘘だった。本当は話す気なんて無かった。というより、話さなくても良いのだったら一生心の中にしまっておこうとさえ思った。

「とりあえず、演しものの事について詳細を決めたいと思っているのですが……」
「今日はもう解散しよう」
「え、ですが……」
「詳しいことはまた明日だ。とりあえず、今日は帰ってくれ」

俺の言葉に渋々とだが、全員が頷く。どうやらこいつらはみんな俺を信頼してくれているらしい。まったく、俺はなんて恵まれているのだろう。



誰も居なくなった部屋で、一人考える。

—————もし俺が今の生徒会で玲と一緒に働いていたら、どうしていただろうか?

……やめておこう。考えても時間の無駄だ。
俺は思考回路を文化祭の演しものの方に修正すると、資料造りに奮闘した。