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- Re: オタクな生徒会長は絶好調!?『第45話更新』 ( No.174 )
- 日時: 2011/09/30 10:59
- 名前: 棋理 ◆U9Gr/x.8rg (ID: Tt5vDeWP)
第46話『文化祭まであと3週間……あ、題名それだけだよ。手抜きとか言わないでね』
「お帰りなさいませ、ご主人様ぁ。ご飯にします?お風呂にします?それとも……わ・た・し?……さんはいっ」
「「「「お帰りなさいませ、ご主人様。ご飯にします?お風呂にします?それともわたし?」」」」
「違う違う!そんな抑揚のない言い方じゃダメよ!もっと可愛く、腰をくねらせて、語尾にハートをつけるつもりで言わないとダメ!」
「「「「お帰りなさいませ、ご主人様。ハート」」」」
「言葉でハートって言うんじゃないわよ!文字で考えるのよ。漫画で言うとご主人様の後にハートマークがつくように言いなさい!」
「「「「帰って下さいますか、会長様」」」」
「すごいね!ご主人様の時にはなかった心がこもってたよ!さすが連帯感のある風紀委員だね!!もう良いわ。今度は執事達よ。そこに整列し『お帰りなさいませ、お嬢様』さんはいっ!」
「「「「お帰りくださいませ、お嬢様」」」」
「客に対する態度がおかしいでしょうがぁぁぁあああ!!!」
会長による会長のための執事・メイド講座が始まってから30分。俺は関係ないが、龍先輩と瑞樹が講座を受けている様子を見ては、「フロアじゃなくて良かった」と心から思っている。今までにないテンションの上がりように、さすがの龍先輩も疲れたようだ。そんな会長のそばにいる風紀委員長も、うんざりしたようにげっそりしている。
「ちょっと原田君。どうして風紀委員の皆さんは執事とメイドがなってないのよ」
「いや、お言葉を返すようだが、風紀委員会は執事とメイドを育てる機関じゃないんだよ」
「けれど、一般常識じゃない!」
「全然ちげぇよ」
認識がまったく別の次元になっていることから、会長と風紀委員長の間には壁があるのではないかと疑ってしまう。まぁ明らかに会長の方が悪いんだけど。
文化祭まであと3週間を切った今日。会長はフロア係に、出来たばかりの執事服とメイド服を着せて、講習を受けさせていたというわけだ。無理矢理だけれど、風紀委員の皆さんは弱音を吐くことなく受ける。どんだけ忠誠心があるんだよ、この人達。その辺りは軽く脱帽する。
「大多喜先輩、何よそ見してるんですか。手伝って下さいよ」
「あ、悪い悪い」
俺と勇翔と終都で、客寄せに使う看板を制作していた。ベニヤ板に『生徒会・風紀委員合同主催 執事・メイド喫茶』とカラフルなペンで書く。正直言って俺たちは雑用なので、特に気合いを入れることなく淡々とこなす。一方、会長の方は————
「もっとにこやかに!無表情なアンドロイドメイドというのも萌えないわけではないけれど、やっぱりにこやかなメイドの方が萌えるでしょ?けれど、ただメイドって言うだけじゃつまらないわよね……。そこのあなたはドジっ娘メイド。そっちのあなたは猫耳メイド。語尾に『にゃん』ってつけておけばたいていだませるから。そんで、そこの髪の長いあなたは女王様メイド!いかにもSって顔しているわよね……。あ、だったらそっちのツインテールで背の低いあなたはツンデレメイド!当日はそこの高いブーツを履いて、おでこを出して『べ、別にご主人様のためじゃないんですからねっ!』を連呼しなさい。執事に関しては、眼鏡男子が多いから特に問題は無し。あぁ、でもやっぱりショタが良いわぁ。背の低い男子がいないのが残念……。原田君はどうして風紀委員にショタを入れなかったのよ……」
「だから風紀委員の根本的な部分を、お前は取り違えている」
「ショタ……眼鏡……鬼畜……ドS……ツンデレ……あぁ、場合によってはヤンデレも有り……」
なんだかぶつくさ言い始めた会長を、全員で無視をする。だって……ねぇ。ものすごくイタいんだもん。見ているこっちもイタい。
今まで会長の講座を受けていた執事・メイドさんも、会長の背後に控えていた会長の家の執事・メイドさん達に講座を受けている。
「颯人……俺たち、雑用で良かったな」
「ああ、心からそう思う」
「俺も同感ですよ」
勇翔の言葉に、俺と終都はおもいっきり首を縦に振った。
その様子を龍先輩と瑞樹が羨ましそうに見ていた。
「それはそうと原田君。原田君だけよ?執事服に一度も袖を通してないの」
「そんなの、当日だけで十分だろ」
「バカねぇ。お客さんっていうのはね、肩に馴染んでいる執事服。すなわち、いかにも着慣れていますっていう執事の方が、好みなのよ!!私の場合は!!」
「それは客の好みじゃないだろう。お前の場合だろうが」
「だって……原田君の執事姿。面白そ———カッコイイと思うもの!!」
「待て、今面白そうって言わなかったか」
会長の言い間違いに、原田君が苦渋の顔でツッコむ。
それをガン無視して、会長はうっとりとした表情をしている。おそらく風紀委員長の執事服姿を想像(妄想?)しているのだろう。おかげで少し大人しくなった。
その隙に、風紀委員長は俺たち雑用係と厨房係に指示を出す。
「とりあえず、大多喜と暁と蒼井は客寄せに使う看板完成したか?」
「あ、はい。一応、これで」
勇翔が完成した看板を見せると、風紀委員長はそれをじっくりと確認し始めた。
執事・メイド喫茶に客が来なければ意味がない。それに重要な看板を念入りに確認し、その看板で客が集まってくるのかを考えているのだろう。会長のことを呆れ半分で見ていた時の目とは思えない、真剣な目で見ていた。
「まぁ良いだろう。一応星宮にも確認してきてくれ」
「分かりました」
風紀委員長の言葉に、勇翔が頷く。……が、本心はそうではないらしい。いまだ妄想している会長を一瞥すると、こっそり溜息をついた。まぁ、気持ちは分からなくもない。勇翔は覚悟を決めたように頷くと、会長の所に行った。
「会長……。看板が出来たんだけど」
「ああん?」
「ああんって……酷い言い方だな、おい。だから、看板だよ、看板」
「はいはい、看板ね。そこら辺に置いておいて。今妄想タイムよ」
「知らねぇよ!良いから早く見ろよ!」
「会長に向けてなんたる物言い……。そこに正座しなさい!ピンヒールで踏んであげるわ!」
「嫌だよ!」
その光景を遠目に見ながら、俺は少し気の毒に思った。…………まぁ、半分ぐらい俺ではなくて良かったって思ったけどな。