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Re: オタクな生徒会長は絶好調!?『参照800突破記念記事更新』 ( No.181 )
日時: 2011/11/17 17:23
名前: 棋理 ◆U9Gr/x.8rg (ID: 3s//keBI)

第49話『学園祭前日の生徒会長』

 時刻は6時を過ぎた。明日は学園祭。クラスの出し物や学校の飾りつけは、ほぼ完璧に終了している。それは私たちの生徒会室も同じ。私、星宮玲が今いる生徒会室はいつもの生徒会室ではなく、変貌を遂げていた。机にはきれいなテーブルクロスと花を飾った花瓶。壁には風紀委員のみんなが扮するメイド・執事の紹介文が書いてある紙を貼った。正直言うと、今年は風紀委員のみんなも手伝ってくれたため、例年よりは生徒会の仕事が少なく、楽だったと思う。
 
「……………………」

そんな生徒会室の中央で、私は近くのテーブルの花瓶に指してある花を弄んでいた。生徒会のメンバーは現在、風紀委員室で最後の打ち合わせをしている。どうして生徒会長である私が打ち合わせに行かないのか。それは———

————手紙が来たから。

今朝登校したら、靴箱に一通の手紙が入っていた。 小花柄が印刷された、可愛い便箋だ。
自慢するわけではないけれど、靴箱に手紙が入っていることは、私にとってそう珍しい出来事ではない。一ヶ月に一通程度に入っている。もっとも、弟は頻繁にあるらしいけれど。
 なので、今回もそういった類の手紙かと思い、中を開けてみた。けれど、宛名からして驚いた。だって。

「……伊集院、奏汰」

急いで封を開けると、そこには白い便箋にたった一文だけの文字が並べられていた。
 

   
          放課後6時。生徒会室で話をしよう



たった一文。それだけで、私は複雑な気持ちだった。
————奏汰君に会える。
嬉しいような、悲しいような。会いたいような、会いたくないような。
けれど、こう思ったのは確か。
————生徒会のみんなには、内緒にしておこう。
何故だか、そう思った。どうしてそう思ったのか、今日一日考えても見たけれど、結局分からなかった。



そして。

「ごめんね、玲。少し待たせちゃったかな」

空が赤色から藍色に染まるとき。奏汰君が生徒会室に現れた。
どういう表情で迎えようかと思ったけれど、私は引きつらないように祈りながら笑顔で迎え入れた。

「……いいえ。私も今来たところですから」

あくまでも、事務的な笑顔と言葉遣いで。
そのことにあえて奏汰君は口を出さず、その代わりにすっかり様変わりした生徒会室を見回した。そして感嘆の声を上げる。

「へぇ。すごいね、これ。……けれど僕たちのときより、ずいぶんと質素だ」

————来た。
さりげなく皮肉を言うあたり、さすがは奏汰君というべきか。相変わらず良い性格をしている。
どうやら前振りはないらしい。いきなり本題に入られた。私もそれに乗っかる。

「ありがとうございます。なにぶん、今年の生徒会は予算が少ないもので」
「ふうん。だからこんなに華がないんだ」
「最高の褒め言葉です」

さっきのお返し。
私たちの間に、冷たい空気が漂う。
ふいに、奏汰君がにっこりと笑って言った。

「明日は学園祭だね。どうだい?準備のほどは」
「みんな頑張ってくれました。生徒会のみんなも……風紀委員のみんなも」

風紀委員の名を出した時。一瞬奏汰君の表情が揺らいだけれど、今はスルーする。とにかく、会話の流れは奏汰君に持っていかれたら、それまでだから。

「今年は例年に無い試みをしてみたんです」
「……なるほど?代々仲が悪かった生徒会と風紀委員が仲良くすることで、生徒の関心を集めたんだ?さすが玲。良く考えているね」
「考え、て……。…………。………………。……え、えぇもちろん。………はい、ちゃんとそこまで考えましたよ」
「…………玲、もしかして考えてなかったんじゃ————」
「そ、そそそそ、そんなこと、ななな、ないよ!?」
「明らかに動揺してるのを誤魔化せるとでも思ってるのかな?」

か、考えてたもん!ふ、風紀委員と生徒会が仲良くすれば、生徒たちが関心持ってくれるんじゃないかなって、考えてたもん!
冷や汗がだらだらとまらない私は、とりあえずいったん落ち着くため、紙コップにお茶を入れる。もちろん、ちゃんと奏汰君の分も。

「あれ、お茶入れてくれるの?それって、僕のご機嫌取り?」
「何を言っているんです?あなたのご機嫌とって、こっちに何のメリットがあるというんですか」

売り言葉に買い言葉。それを重々承知で、私はあえて奏汰君には容赦なく言葉を紡ぐ。
一方、それについては奏汰君は何も言わない。そんな彼の様子に、私は不気味に思った。
どうしても、彼の考えが読めない。彼の気持ちが分からない。彼がここに来た意図が分からない。
 冷静を保つように大きく息を吐くと、私は奏汰君にお茶を渡す。奏汰君は柔らかな笑みとともに、紙コップを受け取った。

「ありがとう」

そして。

「っ————!?」

ふいに、抱きすくめられた。