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- Re: オタクな生徒会長は絶好調!?『第50話更新』 ( No.185 )
- 日時: 2011/12/04 16:13
- 名前: 棋理 ◆U9Gr/x.8rg (ID: 3s//keBI)
第51話『答えを遠ざけて、何の意味があるのか。その答えを知っているのに、人はまたそれを遠ざける』
「…………」
俺、原田和毅は風紀委員室のベランダに出て、すでにやみに染まった空を見ていた。秋の風が上気した頬を冷たく撫でる。その冷たさに、俺は心地よさを感じていた。
風紀委員室では現在、生徒会のメンバーを中心に最後の調整が行われていた。明日が文化祭ということもあって、全体的に浮ついた雰囲気だ。しかし、俺はそれをとがめたりはしない。なんていっても明日は。
「……最後の文化祭だからな」
言って思い出す。さきほど生徒会室の前を通りかかったときのことを。
風紀委員室から出て行ったときの星宮の様子は、明らかに変だった。いや、そのときだけじゃない。今日一日中、ずっと様子がおかしかった。どこか考え込むような、けれどどこか浮ついているような、どちらとも取れる表情。
そして星宮が風紀委員室を出て行って15分。
「遅い……」
生徒会室に行くと言っていたが、さすがに遅い。俺は話し合いを生徒会に任せると、ひとり生徒会室へと向かった。
——後悔した。
軽くしたうちを打ちたくなる。よりによって、最悪のタイミングで来てしまった。
生徒会室の中では、あの人に抱きすくめられた星宮の姿があった。俺はとっさに生徒会室のドアに張り付く。何故あの人が。そう思ったが、ひとつ分かったことがある。星宮が変だったのは、あの人に会うためだったのか。けど。
——だとしたら、どうして浮ついていたのだろう。
…………。
その理由は考えるのをやめた。結果を理解していしまうと、すごく、なぜだか分からないけれど、自分の中でもやもやした気持ちしか残らないような気がしたから。
「今年は最後の学園祭だろ」
ふいに聞こえたあの人の言葉が、外にいる俺の心に刺さる。
——最後の。
それは。
「それは……この丘の上高校にとって?それとも、私にとって?」
俺が疑問に思ったことを、星宮があの人に言う。
その問いに返事は無かった。
「…………」
思考を落ち着かせようと、俺は溜息を細く吐く。
どうしてあの人は生徒会室にいたのだろう。どうしてあの人は干し宮に弱音を吐いたのだろう。どうして——
——どうして星宮は、あんなに苦しそうだったのだろう。
考えてしまう。どうせその答えは分かりきっているというのに。けれど、その答えを遠ざけて。「ありえない」と決め付けて、別の答えを探す。
星宮がなぜか浮ついていたのも。抱きすくめられて抵抗しなかったのも。あの人の言葉を苦しそうな顔で聞いていたのも。その理由は、全部。分かりきっている。けど。
——認めるのが、怖い。
その答えは、俺が負けるということを結論付けている。あの人に、全部、何もかも負けている。
けど。
認めざる終えない。
分かっていた。あいつの中に、あの人を慕う以上の感情があることに。
分かっていた。あの人の中に、あいつを好き以上の感情があることに。
分かっていた。俺は絶対に、何もかもあの人に勝つ術が無いことに。
分かっていた。あの人には絶対、何もかも俺が勝つ術が無いことに。
「くそっ」
明日は勝負の日だって言うのに、俺は何を考えているんだ。
が、一度乱れた思考を元に戻すのには時間がかかる。ほつれた毛糸のように。
少なくとも。
——あいつがあの人のこと、どう思っているかを理解できるくらいに。