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- Re: オタクな生徒会長は絶好調!?『第51話更新』 ( No.190 )
- 日時: 2012/02/24 19:17
- 名前: 棋理 ◆U9Gr/x.8rg (ID: 3s//keBI)
第52話『学園祭の季節はとうにすぎているという突っ込みはご遠慮ください。……えぇ、まじで。いや、本当に』
「ついに来たわよ学園祭————!!!」
生徒会室に来た直後、俺、大多喜颯人は会長の見事な膝蹴りを受けた。
「ぐほっ!?」
「あぁどうしよう大多喜。私、興奮が止められない! だってこんなの、初めてだもの!!」
「俺だって生徒会室入室直後に膝蹴りなんて、初めてですよ!」
「私も生徒会入室直後に膝蹴りを食らわせたの、初めての経験よ」
「あんたもかよっ!!」
「さて、それはおいといて。大多喜、あんたもうちょっと早く来られないの?」
「俺たちの初めての経験をそんなに軽く扱うな! この事態はもう少し議論したいところなんですがっ!?」
そんな俺の言葉なんかもう耳に入っちゃいない。会長は俺に目もくれず、生徒会室に集まっている執事服とメイド服の彼らに言った。
ぐすっ。俺の初めての経験なのに……。生徒会室の入り口でぼろっぼろになっているなんて、そうそうないんじゃないか? それなのにみんな無視しやがって。美味しいネタじゃないか。ほら、ツッコンでツッコンで。
「はい、大多喜がなんか惨めそうだけどいっさい無視でいいから。かわいそうに見えるけど、ぜんっぜん可愛そうじゃないから」
「原因は姉さんじゃないかと思うけど、それは気のせいだよね」
「気のせいよ、龍。さて、本題に入るわよ」
「……たまにここの生徒会がすごく見えるのは、俺の頭がとうとうイカレたからなのか」「そうよ原田君。だから諦めて。
えー、いよいよ学園祭が始まるわけだけど。私たちの真の目的、忘れてないわよね?」
その言葉に、俺はふざけることなく起き上がり、生徒会メンバーのいるところへ向かう。俺だけではなく、生徒会メンバーも風紀委員たちも真剣な顔をしていた。
そう、いよいよだ。
いよいよ、会長と風紀委員長がずっと夢見てきた学園祭が始まる。そして、当然目的は伊集院奏汰という存在を超えるため。そのことを理解しているから、会長の言葉を真剣に聞く。
「私たちの目的。そう、それは——————だしもの選手権で優勝することよ」
『ちっがあぁああああああああうっ!!!!』
欲望まみれに光った会長の目を見て、俺たちは抗議にする!
「なんでだよ! なんでそうなるんだよっ?! 俺とお前で準備してきたこの2年間はなんだったんだよ!! なぁ星宮龍?!」
「そうだよ姉さん! なんかものすごくシリアスで良い雰囲気だったのに、どうしてそんな忘れ去られていたような設定を持ってくるのさ! ねぇ勇翔?!」
「会長、さすがにこれは悪ふざけが過ぎるぜ! そうだよな、瑞樹!」
「ゆ、勇翔先輩の言うとおりです! 僕たちの頑張りがなんでそんな俗物的なことに費やされていたんですかっ?! ね、終都?!」
「そうですね……。というか、出し物選手権の話ってまだ引きずってたんですか。あんなのとうの昔に置き去りにされた設定なのに。ですよね、大多喜先輩」
「ああ、そうだ! 前回までかなりシリアスで、しかもいよいよクライマックス! ってな感じだったのに、なんでいきなりここで伏線回収するんですかっ!? なぁ笹屋?!」
「……絶望ですね、委員長」
「もっといってやれ笹屋! なぁ星宮龍!?」
「ループ開始!?」
マシンガンのごとき抗議に耳をふさぎながら、会長は俺たちに突っ込む。
その突っ込みに、肩を上下させた俺たちは息をついた。
「あ、あのねぇ。何気に笹屋くんのが一番ぐさっときたんだけど」
「だったら笹屋。もう一発いってやれ」
「え、ちょ、原田君、それはだm————」
「……失望」
「そこは絶望したー! って言うところよ……?」
あんたは何がしたいんだよ。
「き、気を取り直して。なによ、ちょっとぼけたぐらいで。だいたいいつまでもシリアスムードで行ったら肩こるじゃない。ただでさえ私、胸大きいから肩こるっているのに」
「さらっと自分の身体的特徴を暴露されましたよね。っていうか、会長の胸ってそんなに大きいですか? ぺったんこじゃないですか」
「龍、大多喜を『主人公剥奪の刑』にして」
「了解だよ姉さん」
「こんなときだけ双子のチームワーク披露しないでください!」
っていうかその刑めちゃ怖いわ! 主人公剥奪とかされたら、俺の存在意義失われるし!
「あの、話、進めません?」
「あー、ごめんごめん瑞樹。
そんで、まぁ出し物選手権は冗談よ。私たちの目的、ちゃんと考えてるから」
そういったあと、会長はやんわりと微笑む。その微笑みに、俺は自分の心を落ち着かせた。
「けどね、せっかくの文化祭よ? ……目的とかは二の次に、まずは楽しむことが重要だと私は思うの。だから」
ね?
「私たちの目的。それは……楽しむこと。これ、会長命令ね」
悪戯っぽい笑顔と共にウィンクをする会長。
その姿に、俺たちは皆無意識に笑顔を浮かべる。そうだな、と俺は思わず舌を巻く。俺たちの会長はそういう人だ。自分の過去とか大切なことはいつも二の次で、その代わりに俺たち生徒を何よりも考えていてくれて。今回の件だってそうかもしれない。楽しむこととかいっておきながら、本当は会長自身が一番思いつめていたり。
けど、それは俺の予想に過ぎない。大事なのは、
「会長」
「何、大多喜」
「文化祭、楽しみましょうね」
俺の言葉が意外だったのか、会長は一瞬虚をつかれたように目を見開く。が、それもすぐに笑顔に変わり、
「えぇ、そうね」
何より大事なのは、たとえ結果が同であれ、会長たちと一緒に楽しむことだ。