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- Re: オタクな生徒会長は絶好調? 『第20話更新』 ( No.51 )
- 日時: 2011/03/06 17:09
- 名前: 棋理 (ID: Fn07flnU)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel2/index.cgi?mode
第20話『この思いでは永遠に——(後編)』
目的地を知らされないまま20分が過ぎた。しかし、目的地には近づいているらしく、心なしか勇翔が緊張の面持ちで歩いていた。
「……着いたぞ」
「へ?こ、ここ?」
勇翔が立ち止まった場所、それは——なんとも豪華な邸だった。俺にはそういう知識はないけれど、何となく西洋のお城みたいな印象がある。そして、一番の特徴はなんと言っても広さ。邸だけでも相当大きいけど、それを囲んでいる庭の広さが尋常じゃない。左側には薔薇園があって、白と赤の薔薇が何とも綺麗に咲き誇っている。そして中央には石畳と大きな噴水。なんというか……本当にどこかの国に来てしまったのかと思った。
「ゆ、勇翔?ここは——?」
「…表札を見てみろよ」
「表札?」
俺の背丈の何倍もある大きな門の隣に、木彫りの表札を見つけた。
——星宮——
「……ほ、ほしみや?」
「そうだよ、ここが会長と龍先輩の家、星宮邸だ」
開いた口がふさがらないというのは、このことだと俺は思った。そして、あのリムジン登校を見た以来、会長と龍先輩は本当にお金持ちで、俺たちとは生きている世界が全く違う、雲の上の人だなと、改めて痛感した。そして、少し寂しかったりもして……。
「颯人、中に入るぞ」
「え?あ、ああ……」
寝癖と服についた埃とかをはたくと、俺はいつもよりも背筋をぴしっと伸ばした。
「お待ちしておりました、大多喜颯人様。お帰りなさいませ、暁様」
「……………………」
絶句。今の俺から言える言葉はそれだけだよ。
「悪い颯人。俺ちょっと便所行ってくるわ。先行っててくれ」
「え?あ、ちょっ、お、置いていかないでくれよ!」
こんなに美人なメイドさんと一緒に何処かに行くなんて……。
ちらりと見ると、メイドさんは俺に天使の微笑みのような笑顔を見せると、こちらへどうぞ、と歩を進めた。
無言で歩くこと数分。広い。本当に広い。多分この廊下で100メートル走の練習が出来ると思う。
そして、1つの大きな扉の前に来た。メイドさんは扉に手を掛ける。
「お嬢様、大多喜颯人様がご到着しました」
「分かったわ、入ってちょうだい」
「かしこまりました」
中から会長の声が聞こえる。そして扉が開くとそこには——。
パン!パン、パン!!
「……へ?」
「「「お誕生日おめでとう、大多喜(颯人)(先輩)!!」」」
クラッカーを持って俺に笑顔を見せている、生徒会のメンバーが居た。
さっき便所に行ったはずの勇翔もそこにいる。
シャンデリアの下には、とても大きなバースデーケーキが置いてあり、とても美味しそうなパーティーの定番料理が並べられている。そして壁には横断幕。書かれている文字は—
——Happy birthday HAYATO OSAKI ——
「……まさかこれ、俺の…?」
「鈍い!鈍いわよ大多喜。それとも何かしら?お誕生日おめでとうの意味から教えてあげましょうか?」
中央でふんぞり返っているのはもちろん、会長だった。
「颯人、せっかくのお前の誕生日に何で泣きそうな顔をしてるんだ?」
龍先輩が爽やかな笑顔で俺の顔をのぞき込んでくる。その後ろでは、ニコニコしている瑞樹と呆れたような笑顔を見せている終都の姿があった。いつもの生徒会だ。
「さぁ、照明を消して!大多喜、さっさとバースデイケーキのろうそくを消しなさい!」
そして会場の照明が消えて、あちらこちらにあるアロマキャンドルが灯る。中央のケーキの上のろうそくが、電気より明るく俺たちの顔を照らす。
「「ハッピーバースデイ トゥ ユー ハッピーバースデイ トゥ ユー」」
名前のところをそれぞれ俺の呼び名で歌う。そして歌が終わり、ろうそくを消す——。
「ふぅ——」
すべて消した後、拍手がなる。いつの間に来ていたのか、メイドさんやコックさん、執事さんも拍手をしている。そして、俺は言いたくても言えなかった言葉を、やっとの事で口に出す。
「会長、龍先輩、蒼井、月島。そして準備をしてくれた皆さん……俺なんかのために、本当にありがとうございます」
「俺なんかのためにですって?私たちが大多喜『なんか』にこんな盛大にするわけ無いでしょ?」
「へ?」
会長の言葉に、俺だけではなく部屋にいるすべての人たちが首をかしげる。
そして、会長は俺の目の前に来るとふんぞり返った。
「大多喜『だから』盛大にお祝いしたのよ」
「「「…………」」」
あぁ、俺は本当に恵まれているな、と実感した。本当に、俺は生徒会には行って良かったと思う。そしてそのチャンスを与えてくれた会長に、心からお礼を言いたい。
俺は改めて思う。
——俺は“世界一幸せな高校生”だと。