コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: Erret Crimson〜紅蓮の契約者〜 【自作絵4つ目】 ( No.100 )
- 日時: 2011/02/19 11:06
- 名前: だいこん大魔法 (ID: TtH9.zpr)
「・・・おおっとぉ、今日の主役の登場だぜぇ?」
体育倉庫、無駄に広いその中には、いまどきこんな格好をしている不良がいんのかよと思うほどの不良チックなやつらが二十人ぐらい待機していた。そいつらは下卑た笑いで俺を嘲笑し、馬鹿にする。その中には当然中西もいて、とくにそいつが一番俺のことをあざ笑うかのような態度で見ていた。
ブチ・・・と俺の中で何かが切れる音がする。それは怒りからくる圧迫で血管が切れた音かもしれない。だけど俺はそれをほうっておく。
すぐにでも俺に殴りかかってくるような奴らがいないか見極めながら、中西のほうを見る。
「・・・ご使命ありがとうございますねぇ。それで本日はどういったご用件で?」
なるべく皮肉に聞こえるようにそういってやると。突然あたりの不良たちがいきり立つ。頭の回転がおろしく速いようで、今の俺の発言をちゃんと皮肉だち理解したようだった。その間にも俺は頭の中で言葉を思い浮かべている。ただの人間相手に使うなんて魔力がもったいないのだが、身体能力をあげてなお魔法を人の目には触れさせない、『イフリートティア』を使わなければ、流石に一発か二発ぐらいもらってしまうだろうとふんだからだ。頭の中で完成した呪文は、俺は小声で詠唱して、炎が噴出さないように最初から腕の中に納めておく。これで十分間俺の身体能力は完全な化物になったわけだ。
「決まってんだろ?お前をサンドバッグにするんだよ。そのために先輩たちも呼んで来たしこのなかにゃ族の仲間だっている。お前一人でどうにかなる相手じゃねぇことはわかってるよな?」
「そりゃご苦労なことで。俺一人のためにどんだけ時間を食ったのか知りたいねぇ」
「・・・てめぇ、調子こいてんじゃねぇ!!」
後ろから、体育倉庫のドアの前で待機していた一人で俺にむかってなにかを振り下ろす。それを見て俺は、おいおいシャレにならねぇぞといいながらその・・・釘つきバッドをかわす。そいつの行動によって怒りがたまっていたほかの不良も俺に鉄パイプやら木製バッドやらをふりかぶってくる。それに俺は、目を細め、軌道線を読み取り、回避行動に移りなおかつできるかぎりの反撃をおこなうことにした。
この人数の不良を相手にする主人公———ああ、なんという漫画なんだろう、なんという小説なんだろう。いつから・・・ていうか昨日からどうも俺の人生はそういった現実的にはありえないものに移り変わってきてしまっている。でもそれもいいと思う。こんなにスリルがあって、こんなに楽しいのなら———脇役として人生をすごすより、やっぱりこっちの・・・化物の道を進んだほうが、楽しいと思う。
俺はおそらくすさまじい勢いでせまるバッドをまず片手でうけとめ、それをにぎりしめる。たったそれだけでバッドの先端も俺が手にしていた部分は粉々に砕けてしまう。それに驚いた不良の一人は俺のによってその場から離脱する。『イフリートティア』を使っている今なら、こいつらの動きはなめくじのように遅く見える。だから、どんな攻撃をされようが、俺に届くことは絶対にありえないと思う。
鉄パイプを殴って折り曲げ、それをつかんでぐいっとひっぱってその持ち主の腹にむかって膝蹴りをはなつ。そこまで本気で蹴っていないのに相手はギャァァとか言いながら味方を巻き込んで吹っ飛んでいってしまう。ほかの不良たちはその異変に気がつくことなく、たった一発蹴っただけで、六十キロ前後ある人間が簡単に吹っ飛んでしまうという違和感に気がつくことなく、俺にさらに武器や拳を、蹴りをはなってくる。
「ああめんどくせぇなぁおい!!」
そういいながら俺は回し蹴りをはなって数人さらに吹き飛ばす。次に一番近くで少しだけキレのいい動きをするやつにむかって頭突きを食らわして消沈させ、後ろからバッドを振り下ろしてきた奴にむかって後頭部で頭突きを食らわしてやる。そして俺はそいつのバッドを強奪してぶん回しながらあたりにいたやつらをなぎ払って、最後にちょっとはなれたところにいたやつにむかってバッドを投げつけて、そいつも消沈させる。
いつのまにやら、不良はもう俺の近くにはいなかった。まだ俺の攻撃を食らっていない不良は完全に俺を化物を見るかのような目でみていて、怯えきってしまっている。それに俺はハァとため息をついて
「・・・もうめんどくせぇからさぁ、とっとと昌子の家で待機しているやつを帰してくんねぇかなぁ?さもなければ・・・」
そこで俺はニヤァと笑う。その表情に中西以外の不良が怯えてしまう。中西は怯えていない・・・というか、完全に震えきってしまっていて、俺のその表情をみてさせもいなかった。
「テメェら全員、この世の者じゃないぐらいに顔面をぐちゃぐちゃにしてやったっていいんだぜ?」
完全に悪役になりきった俺は、おもしろくてしょうがないといわんばかりに笑ってやる。そしてそんなことを平気でいってのける俺にたいして、不良たちは———
「わ、わかりました、兄貴。今度から兄貴には一生逆らいません!!」
・・・あ?
「中西のやろうは後でぶん殴っておきますからどうか見逃してください兄貴!!」
・・・あ゛あ゛?
「お、おい!!兄貴が怒っちまったじゃねぇか。早く椿の姉御の家で待機しているやつを呼び戻せ!!・・・すいませんね兄貴、もう大丈夫ですよ。椿の姉御には手をだしてませんし椿の姉御のご両親にも手を出していませんので」
・・・だから、あ゛あ゛?っつってんだけど?
次々と完全に不良、今まで何人もの人を殴ってきたであろうやつらが俺を兄貴と呼んで慕ってくる。・・・上下関係。強いものは長となり、弱いものは従となる。ヤクザそのものの設定はわからないが、昔みた不良漫画にはそんな感じのことがのっていた。さきほど俺は、こいつらにむかって圧倒的なまでの力をしめしてやった。だから、力の差を完全に思い知ったこいつらは、俺のことを兄貴と慕ってきたのだろう。
・・・といっても、絶対こいつらのほうが年上なんだけどね?
「連絡終わりました!!椿の姉御の家で待機しているやつらは戻ってきます!!そのとき二、三発殴っておきますのでどうかやつらのことは許してやってください兄貴!!」
「あ・・・ああ、じゃ、じゃぁ俺はもう行くけどいいな?」
「おつかれさんした!!兄貴!!」
「お勤めご苦労様です!!」
「あー・・・それと、お前ら、今度人前で俺のことを兄貴だのなんだのと呼んだら殺すからな?」
「承りました!!」
「了解です兄貴!!」
そして俺は、結構満足していたのである。兄貴って呼ばれるのもなんかいいね。
こうして———楽々と事件の収拾はすんだのである———だけどこれが、この事件こそが、この後におこる戦闘の始まりの合図だということは———兄貴と呼ばれて優越感に浸っていた俺には、まったくもって予想できなかったのである。