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- Re: Erret Crimson〜紅蓮の契約者〜 【自作絵4つ目】 ( No.104 )
- 日時: 2011/02/22 21:19
- 名前: だいこん大魔法 (ID: TtH9.zpr)
「修二は———修二はそこで、私と———————————別れようと、いってきたの」
昌子の口からでた言葉———それは男女の仲を切ろうという、言葉だった。
だがそれだけではない。その言葉の裏に隠れている意味を俺は知っている。昔から付き合いがあったから、俺はわかる。
修二から昌子のことを好きになって、告白して、付き合って、断った———それは、修二の好き勝手で、昌子の意思は———どこにもない。
昔昌子は言っていた。自分は修二のことを好きなのかと、修二と付き合っていても、なにも思うことがないと、いっていた。だから、昌子は、なんとなくOKをだしてしまったのだろう。だから昌子の意思はない。昌子は、本当に好きではない相手と付き合って———別れを告げられた。そのあまりの身勝手さに、俺は拳を壁にたたきつけそうになった。だけど、それを俺は必死に抑えて、昌子の顔を真剣な顔でみつめる。内に秘める炎の力を宿した瞳で、今までになく本気で、昌子の人生を、これからの道を、聞く。
「・・・それで、お前はどうしたんだ?別れることは決まったのか?」
「・・・しょうがなかったんだよ。修二は私に答えを聞くこともなく、悔しそうな顔で———『自分は君の本当の好きな人にはなれなかったんだ』といっていなくなっちゃったから」
「そうか・・・じゃぁしょうがねぇよな。誰だって自分のことを本当に好きだと思っていないやつと付き合ったりなんてしたくない。俺だってそうだしな———」
「っ!!私は!!修二のことは好きだった!!だけど———だけどたしかにどこかでは、違うって思ってた・・・」
「それをあいつは見抜いたんだよ。お前と付き合って、俺よりも長い時間お前と一緒にいて———見抜いたんだよ」
その言葉に、昌子の顔がひどく悲しそうに歪む。初めての恋愛に失敗して、昌子は、ひどく悲しそうな顔をする。もとからこういった類の、恋愛の類にはあまり強くない昌子だ。成功すればそれはまぁ喜ぶし、失敗すれば悲しむ。初めてでここまで続いた恋愛は・・・昌子の始めての恋愛は———終わってしまったのだ。だが昌子は———納得がいかないのだ。つい、強く当たってしまいたいのだ———だが、こういうのだ。俺にむかって。
「なら———ならどうすればいいの!?自分でも・・・自分でも誰が好きかなんてわからないのに!!」
悲しそうな顔で俺にむかって叫ぶ。それによって、周りにいた生徒や教室の中で雑談していた生徒達が、なんだなんだと俺たちに好機の視線をむけてくる。それに俺は気まずくなったが、昌子はまだ真剣だった。いや・・・違う。昌子はいつも真剣なのだ。周りを見ないで、なにもかもに真剣に取り組むのだ。だから———この失敗が、わからないのだろう。なぜ自分は恋愛を失敗してしまったのだろうとか、なんで自分は修二ではない誰かを好きになってしまったのだろうとか———そんなことを、考えて、周りが見えなくなってしまっているのだろう。だったら俺も、周りを見ることなんてねぇ。幼馴染の尻拭いは、幼馴染の仕事だ。仲がいいとか悪いとか関係ねぇ。ヘタレだとか関係ねぇ。それは決まっているのだから。俺たちが隣同士の家になったときから———決まっていることなのだ。
「お前・・・『ふざけるなよ』?」
「え・・・?」
「なにもかもを真剣に取り組んで一人で抱え込んで俺になにも話さないで———それで、いざ俺に話して意見を食らったら責任を俺にぶつけるのか?俺はごめんだぞ?お前が一人で抱え込んで、失敗したとき俺に話して———そんな、そんなお前の自分勝手に巻き込まれるなんて、俺はごめんだっていってんだよ!!」
「そ・・・それは」
俺は眉を吊り上げて、昌子を睨みつける。幼馴染としてではなく、ただの男としての一言を、吐き出す。
「だからこれはお前一人で解決しろ、俺はもうやるべきことはやった。不良からお前の家族を助けただろう?だったら男としての俺の出番はもうえねぇよ」
「ゆ・・・ゆうすけ———」
昌子は、ついに涙を流し始めてしまう。彼氏が出来て以来、俺に涙を一切見せなくなった昌子が、俺の前で涙を流す。だけど、昌子はそこでは止まらなかった。第一負けることが大嫌いな昌子だ。事実を言われても、自分から俺を仲たがいさせるようなことをしてしまった昌子だが、口論でも負けることは許されなかったのだろう。それが———昌子のプライドだ。
「うぅ———裕介のバカァ!!幼馴染なのに・・・幼馴染なのにどうしてそんなことがいえるの!?たしかに私の自分勝手かもしれないけど・・・だけど———だけど!!少しぐらい慰めてよぉ!!」
それは昌子の甘えだ。はたから見れば、証拠はただのわがままだ。涙を流しながら昌子は俺の胸倉につかみかかる。周りでみていた好機の視線は俺たちのあまりの剣幕に引いてしまい、いなくなってしまっている。
俺は昌子のその勢いに、満足する。昌子のその言葉に満足する。
そして俺は———昌子の頭を、昔やってやったように、そっと・・・そっと軽く、この儚い少女が壊れてしまわないように、そっと撫でる。
「幼馴染・・・ね。幼馴染だと思っていたのは俺だけだと思ってたが———ちゃんとお前も俺を幼馴染って思っててくれたんだな」
「・・・うぇ?」
「そうか・・・幼馴染か。なら・・・その幼馴染の尻拭いは、してやらねぇとな?」
その言葉に昌子は目を見開く。涙を流しながら、俺のことを上目遣いで見る。それに俺は再びうっ・・・てなってしまうが、今はそんな萌えてる場合ではないので、ニヤリと笑ってやる。
「・・・ま、今は時間が時間だ。俺にできることがあればいつでも聞いてやるからよ、ちゃんと頼れよ?『幼馴染』をな」
「え・・・ふ・・・ふぇ?」
「んじゃ、今日は俺も家にちゃんと帰るから、そのとき泣き叫べばいいさ。そのとき悔しがればいいさ。そのとき不満を吐き出せばいいさ。いつまでも俺はそれを見守っといてやるからよ。お前の中にある不満をすべてぶちまけ終わったら・・・飯でも久しぶりに食いにいこうぜ?」
そういって俺は昌子の頭から手を話す。そして俺は昌子の手をそっと話させて、その場を後にする。
そのとき昌子は———なぜか『キュン』という擬音がついてしまいそうなほどに胸を強くおさえ、顔を真っ赤にしていたが、それを俺は知る由もなかった。
んじゃま、今日も平穏でつまらない一日を始めましょうかねぇ・・・。魔術の関わらない、ただの平穏な日常を、な。