コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: Erret Crimson〜紅蓮の契約者〜 【自作絵4つ目】 ( No.105 )
- 日時: 2011/02/23 17:08
- 名前: だいこん大魔法 (ID: TtH9.zpr)
「・・・裕介、昌子っていう子とはただの幼馴染じゃなかったっけ?」
「・・・んー、そうだけど?」
「ふーん・・・、まぁ裕介がそういっているならそれでもいいんだけどねー」
つまらない授業を寝て過ごし、休み時間もずっと寝て過ごして、今は昼休みだ。俺は学食でパンを買って、屋上まで来ている。その理由は屋上にいるであろうリーとの接触を試みるためだ。
その間にももちろんエルがついてきている。エルはその間に、さきほどの質問を俺にしてきたのだ。まぁその真相がどうであれ、俺はああいうふうにこたえるしかなかったから、適当にそう答えておいた。
エルはそんな俺を疑わしげに見ていたのだが、とくにといってかくしているものもないと感じたのか、納得いかないまでも追求まではしてこなかった。
俺は屋上にいるであろうリーをキョロキョロと首を動かし探す。すると、屋上の給油タンクの裏に、風に揺れているであろう黒いスカートの端が見えた。それに俺は少しだけ笑い
「おーい、リー!!」
と呼ぶ。それに反応したのか、リーが給油タンクの裏からでてきて、こちらまで『飛んでくる』
「ユー!!遅い!!いつまでボクに待たせる気だ!!」
飛んできて・・・突然目を吊り上げて怒鳴ってくる。いや、たしかに朝から昼まで待たせるのは悪いと思うけど俺、授業があるっていっていたような気がするんだけど・・・うーん、まぁ、一応あやまっとくっちてもんがヘタレ魂の行く末だ。
「いや・・・あの、すいません・・・」
「うぇ!?べ、べつに謝るようなことじゃないよ!!」
どっちだよ・・・といいたい気持ちをグッとこらえて、俺は一応頭をさげておいた。リーは俺よりも身長がすさまじく小さいので、頭をさげたら丁度俺の頭がリーの顔と同じ位置に来てしまうのだ。リーは継ぎ接ぎだらけの人形を胸の前で抱えながらあわあわと焦って、俺の頭を必死に上げようとする。・・・ふむ、ということは本当に誤るほどの事でもなかったようだなぁ・・・。
「んー・・・じゃ、飯食おうぜ、リーは昔から苺ジャムのパンが好きだったよな?」
「うん!!」
「んで・・・エルはこれでいいよな、チョコパン」
「・・・覚えててくれたんだね」
「まぁなぁ・・・。ていうか、記憶が思い出されたときに同時に思い出しただけなんだけどな」
「ん・・・それでもいいよ、うれしい」
エルとリーは二人ともうれしそうに俺からパンをうけとる。パンだけで、この二人のこんなにも美しい笑顔を見られるなら、安いもんだなと思いながら、学食の中で一番安いただの食パン一枚を俺は頬張る味は全くないにも等しいのだが、おいしそうに食べる二人を見るだけで、少し軽くなってしまった財布の中身は、どうでもいいことと思えてくる。・・・うーん、でも、毎日こんな感じの生活はできないから、明日からはおにぎりでも作って食うかな。
「あ・・・そうだユー」
「ん?どした?」
パンをかじりながら俺は聞き返す。リーはそれにたいして少し笑うと、行儀が悪いよぉとかいいながら言う。
「暇な時間に【氷翼の魔術師】の動きをしらべてたんだけど、どうも不思議な行動をとっているとしかいえないような動きをしていたんだ」
「・・・不思議な動き?」
「うん、不思議っていうよりは妙な動きという言葉のほうが合うかもしれないね」
「あ、そのことなんだけど、私も思ってたのよ」
「・・・エルもか?」
・・・二人ががんばっている間に寝ていた俺はなんなんだろうとか悲しそうな顔をしながら俺は聞き返す。エルはそんな俺を当然のように無視して口を開く。
「あの・・・なんていうか、宮西高校の近くではないんだけど・・・確実にここを中心として町を円を描く様に回っていたの。その間に何らかの魔術を地面にしかけていたらしいんだけど———なにぶん距離が遠くて、私には構成を見破ることは出来なかったの」
「ボクもこのクソ魔女と同じ意見だね。でも壁による障害がなかったから一つだけ情報の違いがあるね」
「・・・どんな違いだ?」
「魔術は十メートル歩くごとにしかけられている。つまり、十メートルに一個ずつしかけられている。その一つ一つは小さいんだけど・・・まるでなにかを予知しているかのように、予想しているかのように、その動きには迷いがなかったね。『あいつ』とコンビを組んでから何度か【魔術】を目の辺りにしてきたけど、こんな大規模魔法は初めてだ」
なにかを準備しているみたいだ、という言葉を残して、リーは苺ジャムのたっぷりかかっているパンをパクリ、と食べ始める。エルはそれ以上情報がないといわんばかりにチョコパンを食べ始める。そんな中、俺はというと、屋上のフェンス越しに学校の外を見る。そのさきで、いつもどおり、人間が、日常を過ごしている。その中にひとつの違和感があるとすれば———
「あそこ、だな」
俺は目をこらす。違和感を感じる場所を、目を凝らして見始める。すると、俺にさまざまな情報の光景が流れ込んでくる。空を切り裂き。
大気を切り裂き違和感の先まで俺の見えている光景だけが動く。俺の体はそのまま屋上にある。目もそこにある。だけど、魔力の瞳だけが、俺の体から抜け、違和感の場所まで迫っていく。
そしてその場所にあったのは・・・
「『氷の・・・花』?」
俺はそう呟く。一般の光景にまじる、一輪の氷の花。それが十メートル置きに一輪ずつ咲いている。それに不思議がる人間はいない。それにまるで———結界でもはっているかのように、普通の、魔力を持っていない人間は、反応しない。
ん・・・?———結界だと?———
「・・・おい!!」
「ふ、ふぇ!?」
「は、はい!?」
俺は二人を呼ぶ。二人は俺のちょっと大きな声に反応して体をビクッとさせる。それを俺はあえて無視して、真剣な声で、あまりにも緊張しきった声で、いう。
「・・・エル、お前はいつ【氷翼の魔術師】の動向を探り始めた?」
「え・・・えっと、四時限目の最後あたり・・・かな?」
「リーは?」
「お、同じぐらいです」
「・・・やべぇぞおい!!今すぐここから逃げるぞ!!エルはローラたちに通信を始めろ!!俺とリーは———逃げ道を確保する!!」
そして、その俺の言葉を待っていたかのように———学校を覆うように、水色の、ところどころゴツゴツした、氷を思わせるような結界が———張られ始めた。
そして声が聞こえる。自分の妙な動きを探らせて———逆に位置を知ると言う高度なだましを披露した本人が———笑い声をあげる。ひどく嫌悪感を思わせるような声で、ひどく絶望しきった声で———笑う。
そしてこういうのだ———まだ立ち上がることさえ出来ていない俺たちに向かって、こういうのだ———
「さぁ笑おうぜぇ!!この史上最悪のショウタイムを歓迎して、笑え!!紅の炎と氷結の翼のデスゲームを———楽しもうぜ?」
屋上に必ずある給油タンクの上に———その、水色の、悲しい氷の色をした長髪の、サングラスをかけた男が、【氷翼の魔術師】が———
立っていた。