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- Re: Erret Crimson〜紅蓮の契約者〜 【自作絵4つ目】 ( No.106 )
- 日時: 2011/02/25 00:48
- 名前: だいこん大魔法 (ID: ikrpTGuK)
「・・・ほぅ、寝返ったか?【孤独の人形師】」
ニヤリ、と髑髏を思わせる笑みを顔に貼り付けながら、【氷翼の魔術師】がリーにむかって話しかける。するとリーも、凶悪な笑みを、狂気に狂ったような笑みを、【氷翼の魔術師】にむける。まるで憎き相手を殺せることを悦んでいるかのように———
「ハッ、ボクからユーをうばったくせしてよくいえるねぇ、グレン・ユーリッド。昔ボクの記憶をユーから消し去ったのは君だろう?」
その言葉に当然、【氷翼の魔術師】、グレン・ユーリッドは頷く。俺の記憶の中にもたしかにこいつに似た姿をした魔術師があらわれて俺の記憶を消した———・・・こいつが、こいつが俺の記憶を消した奴なのか。
「魔術師でもなんでもないやつが魔術師と関わるなんてどうかしているだろう?リーナ・ディゼア。それともお前はあれか?≪結社≫の中のルールもしらねぇくずなのか?」
「≪結社≫?ユーの命を狙うくそみたいな組織のルールなんかボクにはわからないね。大事なのは君がボクから大切な人をうばったことだ」
「ヒャハハハ!!【孤独】の魔術師に大切な人がいるってこと事態に驚きを隠せない俺がいるぜぇ?」
「馬鹿にしていられるのも今のうちだ。今のボクは【孤独の人形師】としての名を語らない・・・」
「ならなんて名乗る?二つ名のない魔術師なんて魔術師じゃねぇぞ?魔術師は二つ名こそが命だからなぁ?」
二人は会話をやめない。まるで今までの不満をぶつけるように、しゃべり続ける。そんな中俺はエルの様子をみて、ローラたちに通信ができているのかを確認する。エルはそれに答え、ちゃんとできてるよ、とうなずく。
「まだ誰にもボクの二つ名は教えてないんだけどね・・・いいよ、教えてあげるよ。これから≪結社≫最強伝説に謳われる【氷翼の魔術師】を殺すものの名は———【死愛の人形師】」
「ヒャハハハハハハハハ!!いいねぇその表情!!狂気に狂い咲く一輪のバラってか?おもしろいねぇ!!そういうやつを打ち殺すのは最高だ!!じゃぁもういいだろう?裏切り者にはきちんと———処刑をくださなければなぁ?」
リーが胸にかかえている人形をギュッとにぎる。リーにとって、【氷翼の魔術師】は上の存在だ。リーの実力が≪結社≫の最上級魔術師で止まってしまうのとは、また別のものなのだ。そう・・・【氷翼の魔術師】は≪結社≫の幹部の地位まで上り詰めていた時期があるのだ。
≪結社≫の地位段階というものがどれほどあるのか俺にはわからないが、≪幹部≫と≪最上級魔術師≫は、階級が違うということぐらいわかる。それに、蛍の話を聞く限り【氷翼の魔術師】は≪幹部≫から≪最上級魔術師≫におとされたのだという。ならば———やはり実力は、【氷翼の魔術師】のほうが上なのだ。それに、落された理由は実力不足ではなく、一時的な狂いが原因だから、力も≪幹部≫にいたころとなんらかわりはないだろう。たしかにリーの強さも異常なものだ・・・だけど、それはやつにとって、驚異的な存在になるのだろうか?
俺は拳を構える。グレン・ユーリッドはそんな俺に目をむけない。もはや俺なんか眼中にないかのように、おもしろいこと・・・リーと戦える、リーをつぶせるという思いが強すぎるのか、リーにギラギラとした魔力のこもった目線をむけていた。
はたから見ている俺は、その視線に背筋を凍らせてしまう。それはなにもかもを凍らせる力をもったもののみが使うことが出来る・・・いやちがう、すべてを破壊し尽くす力をもった魔術師のみ使うことの出来る・・・魔眼の一種だった。
魔眼はエルにも使うことが出来る。エルは———俺と出会ったとき、その魔眼を使っていたのだという。だけど、それが俺には泣いているようにしか見えなくて、そして魔眼をやりすぎたエルは、本当に涙を流してしまった。俺はエルの魔眼がどういった類の力をもつかわからない。だけど、それは相当な力をもっているものだったと思う。なぜなら、エルの実力はグレン・ユーリッドと同じ『だった』。なら、今俺が感じているこのはたから見るだけで背筋を凍らせるほどの力をもった魔眼と・・・同レベルのはずだからだ。
ああ・・・ってくそ!!たしかにリーが仲間になったのはいいんだけど、こいつに勝てる気がしねぇ。エルに昨日はこいつはエルのことを襲わないとかなんとか断言したけど、やっぱりきちゃったじゃん。ならどうすればいい?エルに死の恐怖を味あわせないためには・・・どうすればいい?
「・・・チィッ!!やはりてめぇに魔眼はきかねぇなぁ。≪幹部≫のやつらだって俺の魔眼に怯みやがるのになんでてめぇにはきかねぇんだろうなぁ?少し、ほんのすこしばかり俺の興味をそそらせる話だが・・・まぁいい。とっととお前を殺して眼球えぐって、解析してやるからよ」
「ハッ、ごめめんだね。ボクの体の一部を君に触らせたりなんてしたくないしね。だから悪いけど、ここでは君が死んでくれよ」
二人の間には再び険悪なムードが流れる。それは傍目から見ているだけで泣き喚いて逃げてしまいそうなほどに重苦しく、狂乱していて———俺にはもう、たえられなかった。
「・・・お前が———【氷翼の魔術師】か?」
次の瞬間には、俺はもうそう口にだしていた。それにリーは、初めて俺が隣にいることに気がついたといわんばかりに目を見開き、グレン・ユーリッドもこちらに反応する。するとグレン・ユーリッドは、サングラスをはずして、ダークブルーのすべてを射抜かんばかりの瞳で俺をにらみつけてきて———ああ、と口元をゆるめて、馬鹿にしたかのように笑う。
「テメェはあれか、俺が記憶を消したやろうか。っちゅーことはつまり———お前が≪紅蓮の契約者≫で、リーナ・ディゼアの大切な人か。ふむふむ・・・ずいぶんとこれはまぁ当たりくじを引いてるもんだなぁ。俺にとっては不幸でしかねぇけどなぁ」
ニマニマと笑いながら俺のことを見る。それを俺はにらみ返して応戦する。だがしかし、まだ発動しているであろう魔眼に俺の体は震え上がりそうになる。俺はそれを必死におさえようとするが、それが顔にでてしまったのか、グレン・ユーリッドがさらに笑う。
「ヒャハハ!!無理するな無理するな!!お前みたいな素人が俺の魔眼に耐えられるわけがないしなぁ!!お前はかの有名な【紅の魔術師】ではなく、その契約者であり素人でもある【紅蓮の契約者】でしかないからなぁ?お前がいくら【紅の魔術師】の契約者だろうがなんだろうがそれはかわりねぇんだぜぇ?そのへん理解してたのか?」
・・・それは、その通りとしかいいようがなかったから、俺は言い返すことができなかった。というか、俺は一度も、自分をエルに重ねて考えたことはない。自分が【紅の魔術師】の契約者だからといって、すぐに強くなるだとか、そんなことを考えたこともない。自分は、エルを守るために、早く強くなろうと焦っているだけなのだから。