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Re: Erret Crimson〜紅蓮の契約者〜 【自作絵4つ目】 ( No.109 )
日時: 2011/02/26 10:05
名前: だいこん大魔法 (ID: ikrpTGuK)

「んじゃ、どうせすぐに殺しちまってもつまらねぇし、時間ギリギリまで楽しもうじゃねぇか?【死愛の人形師】、【紅蓮の契約者】それと———【紅の魔術師】とここにむかってきている魔術師四人さんよぉ!!」

そうグレンはさけぶ。さけぶと同時に真っ直ぐに俺にむかってとびかかってくる。ただ飛び掛ってくるだけという単純な動きならばここは楽々かわしてやりたいところだが、一撃目は、頭の中で自然とフェイントだとわかった。俺は体をその位置そのままに固定しながら、ほんの少しだけ上半身を斜めに傾けさせる。
・・・人間っていうものはたしか、自分を殺せるであろうなにかが前に迫ってきているときに、咄嗟に利き手の方向にかわしてしまう癖があるのだという。そして多くの場合が、右手が利き手の場合がおおいい。だからグレンも、真っ直ぐに飛んできているように見せかけて少しだけ右方向を狙ってとびかかってきたのだ。これはただの俺の推測にすぎないのだが、その推測のおかげで、俺はその攻撃をかわすことができた。グレンは俺の横を通りすぎるとき、少しだけ驚いた風な顔を見せたが、すぐにニヤリと笑って、そのまま俺たちの後ろにいたエルにむかって突き進んでいく。俺が気がついたときにはもう遅い、グレンはエルにむかってなにかの【魔法】詠唱を開始していた。

「さぁさぁどの程度強くなったかたしかめさせてもらおうか【紅の魔術師】!!Rrine ne ruts lashte akull Flaka!!『焔を貫く原初の氷轍』」

その魔法が発動すると同時に、グレンの右手首さきから氷が顕現し始める。それはグレンの右手全体をおおい、そのまま伸びていき・・・氷の手刀とでもいうのだろうか、ブレードのような刃が完成した。———『形状固定化魔法』をあそこまで短縮した詠唱で唱えられるなん
て、やはり格が違う。だがそうもいっていられない。俺もエルのほうにむかって走り出し、詠唱を開始する。

「World shkaterrimin zjarr i madh ne dore, ne zjarr dore, ne te gjithe e hani『劫火を手に、業火を手に、我は全てを食らう』」

おいかけている俺の両腕に紅蓮の炎が宿る。魔術関係上炎が凍りよりも弱い。だが、今それは気にすることではない。今更そんなことを気にしたって、俺には炎系統以外の魔法は使えないからだ。俺はそのまま右手の炎を握り、『形状固定化魔法』に変化させる。それをせまりくるグレンにたいしてどういった魔法を使おうか思案していたエルが見て、驚く。だけどその驚きの表情はすぐに、自分の手下が強くなってうれしい・・・っといったふうな笑顔に変わった。
どうも、『形状固定化魔法』というのは初心者ができる魔法ではないらしいのだ。そのことに関して、エルは驚いたのだろう。なんつっても俺はまだ魔術師になったばっかりで、そん知識もないはずなのだ。だけどどうにも俺にはできてしまった。それは———俺が魔力的にタフだからという理由が一番大きいのだろうが、その元もエルだ。タフもなにもないはずだ———ということはつまり、俺がただたんになれるのが速かったってだけか?ま、そんなんでもいいさ。そんないい加減な理由でもいいさ。だからよ———

「爆砕して喰らえ!!『イフリート』!!」

ティアとブレードというのがなんかめんどくさかったので省略。俺は両腕を頭上から振り下ろし、グレンのむかって炎をはなつ。それに気がついたグレンは舌打ちをして、真横にステップをする。俺の炎はそのままグレンのいた場所を通り抜け、エルにむかってとんでいく。それに俺は少しヤバイ、と思ったが、エルがニッコリと妖艶に笑い

「Tete e dragoit purpur ju, cfare do te ngrenit e mia i ndjekin femijet tane te kundershtoje『紅蓮の八大大蛇よ、子を従え我に刃向かうものを喰らい尽くせ』」

詠唱をする。
その詠唱が終わった瞬間、エルの背後から、炎が吹き荒れる。それは熱風となり、俺はそれにふきとばされそうになる。あまりにも強大な魔力が荒れ狂い、それは形をとり、エルの背後にあらわれた。
それは・・・それはまるで、昔話に登場するような、化物と同じだった。八頭の竜の頭を携えた炎の蛇———そうとしかいいようがなかったのだ。あまりにも巨大で、強大で、圧倒的な力。俺とほぼ同じ量の詠唱でここまで力の差がついてしまうほど・・・エルの魔力は強大そのものでしかなかった。
一頭につきこの五階建ての宮西高校の縦の長さと同じぐらいの大きさをもつ炎の蛇が、俺の炎を吸収し、さらに肥大化する。グレンもさすがにこの炎の怪物には驚いたようで、目を見開いて頭上をみつめている。俺とリーはもはや・・・言葉をだすことさえできていなかった。
エルは再び笑う。背後に圧倒的な存在を携えたまま、笑う。

「・・・誰が誰を殺すのかな、【氷翼の魔術師】?」

だが、その言葉をエルがいった瞬間、俺の中に違和感が生まれた。
どうして・・・どうしてエルの言葉には、自信が含まれていないんだ。俺からみた感じだけどこの炎の蛇は絶対に【氷翼の魔術師】を排除できるほどの力をもっている。それこそエルが命令したら一瞬でことがすむだろう。なのになんで、エルはそうしないんだ?
・・・もしかしたら、それが、昔エルがこいつにやられかけた原因なのか———?
そして俺がハッとなってグレンを見る。だがもう気がついたときには遅い。グレンは顔を凶悪にして笑い、サングラスをおもいきり顔から『切り離す』。そしてそこから見えたのは———瞳に宿る、一対の翼。
俺は走り出す。あのままだとたぶん・・・いや確実にやばいと思ったから走り出す。だがその間にも、グレンは口を開く。

「ハッ、俺が知らない間にずいぶんとまぁご大層な使役魔法を完成させたようだなぁ【紅の魔術師】!!だがよぉ・・・お前、なにか勘違いしてないか?」

その言葉にエルの顔が強張る。それはそうだ。エルは知っているのだ。この男の実力を・・・『サングラスにかけていた呪い』が無くなったときのこの男の実力を知っているのだ———

「お前がどうしても生きたいっていうんなら、本気の俺を倒さないと意味がないだろう?ならやってやるよ、お前の生きる力ってものを見せてみろ!!」

エルが手を振り下ろす。それにしたがって蛇がグレンを喰らいにかかる。だがグレンは、ニヤリと笑い、ただ一言、言葉を呟いた。

「Absolut『絶』」

そして俺は目のあたりにする———【氷翼の魔術師】の本当の力を知らないリーも目のあたりする。俺が人数が多ければたぶんいけるんじゃないかと思っていたやつの力を、エルと対峙していた男の力を、エルが怯えるほどの力をもっていた男の力を、その目に焼き尽くされる。
そう———それはたった一言の詠唱で、エルの紅蓮の蛇すべてを凍りつかせたのだ。