コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: Erret Crimson〜紅蓮の契約者〜 更新速度低下 ( No.124 )
- 日時: 2011/03/08 22:00
- 名前: だいこん大魔法 (ID: ikrpTGuK)
人間だれしも不可能を可能にする力をもっているのだという。それは、本人の努力次第による結果だったり、本人の運のよさだったりといろいろな理由があるわけだが、その中には覚悟という言葉もはいるのだと思う。
絶体絶命。あいつは俺よりも足が速い!!だけど俺はこいつと正々堂々と戦う覚悟をした!!絶対に勝ってやる!!と本番直前に思ったりなんなりすると、あら不思議。その足が速いと思っていた奴は昔足がはやかっただけで今は自分のほうが足は速かった———とかな。自分では不可能だと思っていることでも、なんやかんやの覚悟を決めるだけでその不可能があんがい覆ったりもするのだ。
俺にはそんな経験が一度だけある。空手の大会で、たまたま体格が俺よりもでかくて帯の色も一段階うえのやつに当たったとき、俺は絶対に負けない。この大会で優勝すると決めたんだ!!とかなんとかいった言葉を胸に、覚悟をきめてその相手と戦い、見事勝利した。まぁそのときは準優勝で終わったのだけれど、自分で勝つことは不可能だと思った相手に勝つことが出来た。
そう・・・いうなれば、人間と不可能を可能にすることが可能だ。最初にいったと思うけど、これは一番重要なことだ。
———だから、これはその延長ともいえる。空手で優勝するんだと覚悟を決めて、体格のでかくて帯も一段階上の相手に勝ったはいいけど準優勝で終わってしまった———とかなんとかの時の、延長なのだ。
勝負は決勝戦。七対一だが力は俺たちのほうが下。だけども、あきらめさえしなければ、不可能を可能とする事だってできるはずなのだ。
俺は両手の武器をふりかぶる。制服のボタンが逆風、グレンの持つロンギヌスの魔力のせいでふきあれる強風を真正面からうけていたせいで、ふきとんでいってしまう。俺の制服は自然と全開になるが、幸いなのはズボンがちゃんとしまっていてくれたことだ。・・・こんな真面目な勝負にパンツ一丁ってのはありえないからな。
俺は一気に両方の武器をふりおろす。頭上で交差するようにかまえられていた剣は弧を描くように振り下ろされ、そこから炎撃波が生まれ、それも交差するように、Xの形をとってグレンにせまっていく。
まず第一に、リーがそれに気がついた。最初は新手の魔術師だと思ったのか、険しい顔をこちらにむけてきたが、俺だと見た瞬間、顔を一気にほころばせる。ローラもそんなリーの表情をみて、俺のほうをむく。そして俺のことを確認すると、フッと笑って、よく戻ってきましたといわんばかりの表情をする。それは蛍も同じだった。蛍は俺が攻撃をはなったと知った瞬間すぐにグレンから距離をとって、グッと親指をたてて、ナイスッといいたげな表情になる。ルミはグレンの攻撃をふせいでいるため俺に気がつくことはなかった。レイも同じようにグレンの攻撃を防いでいたが、なんとなく俺がいることに気がついたのだろう。だから険しい表情をいっぺんさせて子供らしい、無邪気な笑顔になる。
———エルは、俺のほうを見ていなかった。ただグレンの攻撃を防ぐのに必死で、ただ負けたくないという思いでいっぱいで・・・ただ俺が無事に逃げれたのかどうか心配するように結界の外を見透かそうと横を見て———涙を流しているだけだった。
・・・だがそれは後だ。俺が戻ったことをエルに伝えにきたわけではない。俺がヘタレじゃないとかエルに言いにきたわけじゃない。俺はエルたちを守りにきた・・・いや、逃がしに来たといってもいい。自分の命をぶち壊してまでも、こいつらだけは、生かさないといけない。
これからどんな魔術師やらなにやらがエルの命を狙うか分からない今、弱い俺よりも、強いこいつらのほうがたよりになるからだ。だから、この勝負でグレンを倒せないでも、エルたちが逃げることによって打開策が生まれるかもしれない。次は負けないように強くなろうとするかもしれない。そうなればきっと・・・こいつらは、無敵だろう。だから、ここで俺の命がぶっ壊れようがなんだろうが知ったこっちゃねぇ。最初からあきらめて逃げようとした奴の命なんて、ゴキブリ並の価値しかねぇってもんよ。
俺はもう一度さきの行動を繰り返す。武器を振り上げ振り下ろす。それをもう一度、もう一度、さらにもう一回、もうさらに一回。何度も何度も振り上げては振り下ろし、グレンにせまりながら炎撃をはなちまくる。
第一陣が、グレンの間じかにせまったとき、グレンは強者の余裕の表情を消して、俺のほうを振り向く。だがその瞬間にはもうXを描く炎撃はグレンをとらえ———爆発、炎の柱をあげた。
「ぬううぅぅああああっ—————ああああぁぁ!!」
それをきっかけに次々と俺のはなった炎撃がグレンにぶつかっては炎の柱を上げる。最初は電信柱なみの太さの炎の柱が、次々に肥大化していき、最終的には千年ものの大樹の太さぐらいまでになった。
————『アスカロン・ディザスター』。それは太古の戦争で炎の女神が武器を振るうたびにはなたれた邪を祓う炎撃。いつのまにか覚えていた魔法をいまさら頭の中で整理しながらも俺は、空中で一度宙返りをして炎の柱の目の前に着地する。・・・あやうく自分の炎に殺されるところだったぜ・・・。
って・・・おいおい、今の俺って二刀流の剣士みたいなんじゃね?・・・くぅ———!!モ○ハンで『双剣』ばっかつかっているだけあってやっぱり俺このスタイル好きなんだよなぁ・・・ってだめだ。今そんなこと思っている場合じゃねぇ・・・とか、いつものごとくピンチなわりには結構余裕な俺である。