コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: Erret Crimson〜紅蓮の契約者〜 更新速度低下 ( No.126 )
- 日時: 2011/03/17 20:48
- 名前: だいこん大魔法 (ID: IZus4UZf)
そんなふうに好き勝手言った後、レイは俺からはなれてローラたちの横につく。あいつはあいつなり、馬鹿は馬鹿なりに考えるところがあるらしい。今回もその類だろう。いくら馬鹿だといっても、本能的な恐怖には勝てない。それなりに長い魔術師は敵の強さを見間違えたりはしない。だから、今回はふざけている場合ではないと思ったのだろう。普通ならさんざん俺を罵倒してもいいはずなのに、それをしなかったということは、そのことをはっきりとわかっているのだろう。でもまぁ所詮馬鹿だけどな。
「んで、ルミはなんかいいたいこと、あるか?」
レイとのやり取りが終わってすぐに、俺は抱きついたまま一言もしゃべらないルミに話かける。ルミはローラたちと同じく、昨日であったばっかりだ。だけども、その一日で、俺はルミのことを少しだけ知った。長年≪結社≫により実験され、孤独を味あわされてきた少女。それは自らが望んだことではないことも、実験が繰り返されるたびに泣き叫んでいたことも、俺は知った。そんな過去があるルミだが、今は、普通の女の子と、魔術が使える以外普通の女の子とかわらない生活をおくっているルミを、妹みたいに思っている。孤独のせいで幼い心のまま止まってしまっているルミだって、別れは寂しい、共感しあえばうれしいはずだ。だから、唯一、ルミの能力の一環で見えてしまうあの現象を共感できる相手———俺は、おそらく彼女の中で、すこしだけ特別な存在になっていたのだと思う。それがたとえ俺の思い違いでも、少なくとも俺は、ルミのことを少しだけ特別に思っている。
「・・・う〜ん、まぁ・・・今回は許してあげる!!それじゃね!!」
そう言い放つとすぐに俺からはなれて、ルミはローラたちのほうにむかって走って言ってしまう。うーん・・・ルミなりにも思うところはあったのだろうか?・・・それでもま、いいか。
「ボ、ボクは・・・えと・・・ああもう!!ボクをおいていくんじゃない!!」
・・・すると、その後ろに隠れていたはずのリーがとびだしていってしまう。・・・ううん、やはり俺はリーに嫌われてしまったのだろうか?でもそれはしょうがないさ。俺は・・・一度、裏切ったも同然な行為をしたわけだしな。
それでも、だ。それは些細な問題だ。俺にとって、今一番大切な人はただ一人、いま一番俺が話しかけたい人はただ一人。仲間として、自らの主として、契約者として、友達として———そして、恋を抱くものとして、俺は・・・エルシャロン・ユアハーツに、話しかけたい。
・・・俺はエルのほうを静かにみつめる。エルは、俺のことにまだ気がついていない。突然の炎の出現によって、グレンがうごけなくなり、少しでもいいから休憩しようと、魔力を大気中から吸収して、この戦いだけでも乗り切ろうとしている。そんなエルのことを俺はみつめながら歩み寄る。静かに、エルの集中を切らさないように、歩み寄る。
後ろではまだ、俺のはなった炎が火柱をあげて燃え上がっている。その中でグレンがどうしているかはわからない。だけどそれがけして致命傷ではないことはわかっている。だけど、俺は静かに、一歩一歩と、歩みを進めていく。
辺りの凍りついた空気は溶けて、普通にもどっている。逆にいえば、俺の炎のせいで少し酸素がたりないぐらいだった。でもまぁそのぐらいなら生死にかかわる問題ではない。空気が凍っていてしまっては、微量の魔力しか体内に取り入れることが出来ない。それが意味することは、魔法の力を強めることが出来ないということだからだ。
魔法は、その人の元からの魔力と、その場で取り入れた大気の魔力の量によって力がかわる。俺の場合は、『イフリートティア』によって魔力を底上げしたりするから、そういうことはやっていない、ていうかむしろやりかたがわからないからやっていないのだが。エルとか、ローラとか、蛍とか、ルミとかは・・・同属性のレイのように、魔力を大気から取り入れることが出来なくなってしまっていたのだ。だからどうしても、押され続けていたのだろう。それがおそらく、グレンの狙いで『ロンギヌス』の・・・力だ。
それが今はなくなっているから、エルは思う存分に大気から魔力を取り入れることが出来る。そのことによって、枯渇にむかっているエルの中の魔力を補強できるのだ。それを少しでも多くさせるために、俺はゆっくりとエルに近づいていく。
右手に力を入れる。すると、そこから赤い、紅い・・・業火の剣から現れる。その炎の剣から絶えることなくあふれでる炎は俺の右腕全体を包んでいく。左手にも力をいれる。そこからは白い光がはじける。その光はやがて剣の形となり、俺の左腕はガントレットにつつまれる。
だが、俺はだしたところで、剣だけをしまう。エルと対話するために、剣はいらない。剣があっては、逆にエルを傷つけてしまう可能性がある。俺の主はエル、魔力の主もエル。だからエルのことを傷つけないとは思うのだが、念には念をいれて、だ。
紅き業炎をやどし、白き火焔を宿し、俺はエルの前に立つ。エルはうつむきながら集中して、魔力を必死に溜め込んでいる。俺はそんなエルの肩にポン、とやさしく手をおき、こちらに注意をひく。