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- Re: Erret Crimson〜紅蓮の契約者〜 更新速度低下 ( No.127 )
- 日時: 2011/03/17 21:04
- 名前: だいこん大魔法 (ID: IZus4UZf)
そこでエルは、初めて俺のほうを見た。その美しく、可憐で・・・でも感情の色が消えうせてしまっているその顔に、驚愕の色がうかぶ。
そんなエルのことを、俺はただただみつめるだけだった。かける言葉が今になって思い浮かばないのだ。
・・・俺は情けない。いや、無様といってもいい。脇役にふさわしい男だ。そんな俺が、自分のことを本当にただの脇役なんだとエルに見せ付けた・・・つまり、なさけない姿をさらしたばかりなのだ。その姿をみてエルは・・・深い絶望を押し殺した、悲しみの表情を、した。
なのに俺はのこのこと戻ってきた。あんな顔をさせた張本人の俺が、戻ってきたのだ。
・・・再び俺は、逃げ出してしまうかもしれない。そのことによって、エルを再び悲しませてしまうかもしれない。俺が戻らなければ、二度とエルはそんな思いをせずにすんだというのに、俺はそんなことおかまいなしに戻ってきてしまった。それ相応の覚悟はしたつもりだ。
俺は弱くても主を、そしてその仲間を、守る、あるいは逃がすための囮になってみせると、決意したはずだ。だけど、それとこれとは別だ。
今俺は———どうエルに言葉をかければいいかなんて、わからない。
「・・・ゆう、すけ?」
か細い声で、今にも消え入ってしまいそうな声で、エルがつぶやく。だけどその声には、疑念の色しか宿っていない。次第にそれは大きなものになっていく。エルは肩におかれる俺の手を思い切り振り払い、瞳に激情の色を宿らせ、吼える。
「・・・なに!?なんでもどってきたの!?どうして!?どうしてなの!!もうこの世界からいなくなってよ!!私のことなんてほっといていいから!!一度逃げて・・・また帰ってきて、もう一度一緒に戦おうとでも言うの!?この世界はそんなに生易しいものじゃない!!裕介が思っているほど簡単じゃないの!!だからもういいよ・・・っ、裕介には・・・死んで欲しくない・・・から・・・もう・・・この場から、この世界から・・・いなくなってよ・・・!!」
頭をぶんぶんとふり、俺を拒絶する。魔術師は契約者のことを一生愛する、という言葉を俺を思い出す。エルは・・・俺を愛するがために、この世界から逃げて欲しいと・・・言っているのだ。これ以上エルと俺の間になにかが生まれたら———俺は一生この世界からはなれられなくなる。その文・・・死ぬ可能性が、大いに高くなる。だからエルは、もういいと言っているのだ。この戦い、全員で挑んでも傷一つ負わすことの出来ない相手を目の前にして、俺は命の危険を感じて逃げた。エルは、俺に死んで欲しくないと願い、それを止めなかった。な
のに、それを俺は裏切った。主を裏切ったのだ。・・・でもよ、それは———あのまま逃げて、エルのことを忘れて、のんきに脇役として過ごすよりは・・・正しい判断だったと思うぜ?だからさ・・・エル
「もう、そんなに悲しそうな顔は・・・するなよ」
俺はエルのことを真っ直ぐとみつめてそういう。その言葉にエルは、またぶんぶんと頭をふる。その言葉を聞きたくないというふうに、もう俺の声なんか聞きたくないといわんばかりに、拒絶する。
「悲しくなんてない!!寂しくなんかない!!だから・・・もう裕介は私のことなんかほっといて逃げてよ!!そしたら・・・私も思い残すことなく・・・死ねるから———」
「———簡単に死ぬとかいうんじゃねぇよ」
「・・・え?」
「簡単に死ぬとかいうんじゃねぇっつってんだよ!!」
その言葉とともに俺は右手をふるう。振るったと同時に右腕に宿る炎が反応し、人間の簡単につつみこめるほどの大きさをもつ炎の球がエルにむかって飛んでいく。エルはそれに目を見開く。咄嗟にかわそうと思ったのか横にジャンプしようとするが、混乱のせいで足がもつれて、その場にたおれてしまう。
もとよりあてるつもりのなかった炎の球はそのままエルの上を通過していき、フェンスを貫いて爆発する。
エルをそれをみて、泣きそうな顔をする。俺は、昔からエルのことを人一倍大切にしていた。そんな俺が・・・エルのことを攻撃した。そのことから、エルは俺に嫌われてしまったのではないか———と、悲しみに満ち溢れて、涙を流し始める。
それはやがて嗚咽となり、エルはたおれたまま泣く。そんなエルに俺は近づいていき、しゃがみこんで、左手で・・・そっとエルの頬にふれる。
その瞬間、左手に宿る白い火焔がエルをやさしくつつみこむ。頬から体全体に伝わり、俺の左手に宿っていた力がすべて、エルに流れ込んでいく。それにエルは不思議そうな顔をする。俺は、エルの頬にふれながら、やさしく笑い、話しかける。さっきまで思い浮かばなかった言葉が次々に思い浮かんできている今なら・・・話せる。
「・・・エル、簡単に死ぬなんていわないでくれ。俺は・・・お前に死んで欲しくなんかない。・・・お前が俺に死んで欲しくないっていっているのと同じさ、俺はお前に死んで欲しくない。だから・・・さ、俺だけ逃げるってのは無し、エルだけ残るってのも無しだ」
「・・・」
「どっちかが生き残ってどっちかが死ぬなんて洒落にならないだろ?だからよ、今回はちゃんと乗り切ろうって俺は決めたんだ。二人で・・・、いや、みんなで乗り切ろうってな。それが生易しい覚悟かなんて自分じゃわかんねぇけど・・・、俺はお前と一緒に戦う。いや違う、
戦わせてほしい。」
俺は真摯な思いをこめてエルに自分自身の言葉を話す。エルはその言葉にどういった反応をしていいかわからず、いつのまにかやんでしまっていた涙にも気がつかない。そんなエルの上半身をやさしくもちあげて、ギュッと、自分自身の体に密着させる。エルの体は細くしなやかで・・・今にも壊れてしまいそうだ。だけどそこにはたしかな体温がある。そして俺は誓う。か弱き主を・・・守ると。
ああくそ・・・!!主人公っぽくなるとやっぱり言葉がおかしくなっちまう。・・・ちゃんと伝わっといてくれよ、んで・・・今から口にすることはもう絶対恥ずかしくて口にだせないと思うから。
「俺は・・・エルと一緒にいたいんだ」
その瞬間、ボッと言う音が聞こえる。何事かと思ってエルの体をはなしてみると・・・エルの顔が普段より一倍か二倍ぐらい・・・紅く染まっていた。・・・ておい、今のって・・・ものによれば告白とかじゃねぇだろうな!?や、やべぇ、俺はいつのまにかそんな大胆なやつになっちまったんだ!?
「あ・・・あの、だな、今のはこ、告白とかじゃなくて、だな、あー・・・その、た、ただエルには死んで欲しくないってだけで・・・うぇ」
自分の言葉の意味に気がついて俺はそれを弁解しようと言葉を発するがそれはしどろもどろなものになってしまう。く・・・くそ!!さっきまで思い浮かんでいた言葉はどこにいきやがった!?