コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: Erret Crimson〜紅蓮の契約者〜 【初企画始動】 ( No.132 )
- 日時: 2011/03/21 19:02
- 名前: だいこん大魔法 (ID: IZus4UZf)
「うん、そう、俺はエルに死んで欲しくない!!ただそれだけ伝えたかったんだ!!えー・・・と、だからそのぅ・・・」
「クス・・・」
「・・・クス?」
しどろもどろになって俺がおかしなことばかりをぬかしていると、エルが・・・目の前で、笑った。なんの余興もなく、エルは、顔を紅くしながら、笑った。ただその美しい顔で、表情という名前の欠片を取り戻したより一層美しい顔で、エルは笑ってくれた。
「クス・・・そうだよね。裕介は・・・昔から一回あきらめかけて・・・それでもすぐに立ち上がって・・・もう一度それをやるっていう性格なんだもんね・・・。それで・・・その立ち上がったときの裕介は、本当に無敵だった」
・・・たしかにそんな記憶もあるっちゃある。俺は昔エルに縄跳びを見てもらったことがある。そのとき俺は、二重飛びに挑戦して、失敗した。なかなかうまくいかないことに腹が立ってそれを投げ出したけど、その十分ぐらい後になにかをつかんだような気がして、もう一度挑戦すると、見事に成功した———というものだ。そのときと今は、ことの大きさが違えど、やっていることは・・・同じだ。
「私の目の前で喧嘩に負けたこともあったね・・・。そのときも裕介は、一度涙を流して、そのまま謝っちゃったよね。自分が悪かったです・・・って。だけど、その喧嘩していた相手が私に触れようとしたとき、裕介は立ち上がって、あっという間にその相手を叩きのめしちゃったよね?」
そんなことも・・・あったのかなぁ?あの時の俺は、エルのことを普通のか弱い女の子だち思っていたわけで、そのことをしっていたら間違いなく手をださなかったんだろうけど・・・まぁ、いいか。そんなことはどうでも。
「・・・そして今回も、裕介は相手の圧倒的な力を前に逃げて・・・だけど———【禁呪】を手に、戻ってきた」
「・・・は?」
「わかるよ・・・。さっき裕介が私におくりこんでくれた『力』が———」
「な———!?ちょっとまてエル!?【禁呪】?俺はそんなんもってないぞ?」
その言葉にエルは不思議そうな顔をする。首をかしげながら俺のことをみつめてくる。だが俺は少し混乱してしまっていたのでそれに気がつくことが出来ない。
それをみたエルは、なにかを納得したかのような顔になって、うれしそうな顔で俺のほおにふれる。・・・さっきの俺のまね・・・か?
「こんなにも早く裕介が【禁呪】を覚えるだなんて思っていなかったから伝えていなかったんだけど・・・【禁呪】はね、最初に発動したときはだいたい無我夢中って時がおおいから、本人にはそれが【禁呪】だとわからないことがあるの。裕介のそれはたぶんね、それだよ」
「・・・っておいおいうそだろ?てかまだ俺は魔術師になって二日だぞ?【禁呪】はおろか初歩の魔法だってろくに使えないんだぞ?」
それにまたエルが不思議そうな顔をする。不思議そうな顔をしながら、いう。
「初歩・・・?裕介の『イフリートティア』は最上位付加魔法だよ?それに、そこから派生した『イフリートブレイド』だって最上位形状固定化魔法だし・・・って裕介、もしかして気づいてなかったの?」
「・・・最上位って・・・まじですか?」
「あー・・・うん。私も裕介がその魔法を使っているのを見て、こんなに早く強い魔法を覚えるなんてってびっくりしたんだけど・・・、裕介は昔から才能あるからね〜って納得してたんだけど・・・本人が無自覚なんて、ねぇ?」
そういってエルは、さきほどの悲しそうな表情をどこへやら、悪戯っぽい表情で俺のことを見上げてくる。俺はうっ・・・とうなりながらも、反論をする。
「しょ・・・しょうがないだろ!?第一魔法は初歩と達人しかないと思ってたし・・・それにまさかそんなに早く強い魔法を覚えるなんて思わないだろ!?」
「ん〜・・・どうかな〜?ただ裕介が鈍いだけなんじゃないのぉ〜?」
「そ、それとこれとは別だろ!?」
「・・・でも、ま、そのことはどうでもいいからおいとくよ?」
「俺にとってはどうでもよくはないんだけどな・・・」
エルにたしなめられてから、俺はエルをたたせてやる。エルはそれに素直に従う。まずエルのことを抱きかかえて、お姫様抱っこの形をとってから、足を支えるほうの手をゆっくりとおろしていき、足を地面につかせてやる。そのままエルはバランスをとって立ち上がり、完全復活・・・ってか?
「裕介の【禁呪】の名前は・・・『アスカロン』。私の中に流れ込んできた魔力の名前・・・かな?たぶんね、『アスカロン』は私の【禁呪】、『ブリューナク』の子供みたいなものなんだと思う。だって・・・それが私の中に入ってきた瞬間、私の魔力が・・・暴走するんじゃないかってぐらいに膨れ上がったんだもん」
エルは、それをうれしそうに語る。魔力が枯渇しかけてきているエルにとって、俺のとった行動は正解だったようだ。俺の魔力はエルのものだ。ということはつまり、俺の今持っている中でもっとも強いと思われる今の魔法をエルに流し込めば、エルの力は強くなるのではないかと思ったのだ。・・・よしよし、ナイスな判断だったな、俺。
・・・っておいおい、そろそろこんなのんきに話している暇はなくなるぞ?
「なぁエル・・・その俺の【禁呪】とかの話はまぁまずおいといて・・・」
「・・・うん、大丈夫。裕介のおかげで・・・ずいぶん落ち着いたし、それに———もう魔力を大気から取り入れる必要も無くなったから」
そういってエルは、その細い右腕に青白い炎を浮かべる。・・・それに一瞬俺は、目を奪われてしまった。極限まで赤を殺し、青を主な色とするその炎は、よく見るガスバーナーの火だったり、ライターの火だったりと、その比ではない。ただ極端に、霞一つ無い、澄み渡る海の水のごとくに・・・綺麗だった。
それに見惚れていたせいで、俺は気がつかなかった。そのときエルは———俺と同じように、詠唱をしていなかったことに。
「・・・【封呪】。それは、その人本人が生まれながらにして持っている魔法・・・」
「って・・・おいおい、どんだけ魔法の種類があんだよ!?」
その言葉を聞いてハッと我に帰った俺は、咄嗟にそのことにつっこんでしまう。エルはそれにたいして困ったように笑うと、曖昧な答えをかえしてくる。