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Re: Erret Crimson〜紅蓮の契約者〜 【初企画始動】 ( No.136 )
日時: 2011/03/27 17:56
名前: だいこん大魔法 (ID: IZus4UZf)

その歩の言葉に、またってなによまたって!!と愛は憤慨する。それに歩はだってお前いつも俺たちが喧嘩しようとすると横槍いれてくんじゃん、と言い返す。それに愛はあのねぇ、喧嘩なんて見ているほうもいやな気分になってくるって知ってる?と言い返す。そんなやりとりをする二人を俺はただ、眺めるだけだった。まるで仲のよい夫婦のように戯れる二人のことを、ただただ憧れと羨望の眼差し・・・なにかに必死に取り組んでいて、それでいてこのように心底楽しそうな笑顔を見せる二人を見て、俺は・・・もう一度なにかに必死に取り組むのも悪くないか?と思う。そうすることによって、自分が主人公のことを妬ましく思うたびに心に芽生える、記憶の違和感を・・・感じなくてすむと思うから、もう二度と、友のことを妬ましく思うこともなくなるだろうから。
・・・そんなことを思う自分が、俺は嫌いだ。友をそんな目で見る自分が嫌いだ。ただ俺は、人生の主人公に媚び諂う脇役。主人公のことを妬ましく思うなんてことはあってはいけない。それだから俺は、この二人が仲良くなる、それも男女関係の中で仲良くなるのならば応援すればいいし、もしも歩が彼女という存在ができたなら俺はそれを応援すればいい、愛に彼氏というのができたら、それを応援すればいい、見ている側にとっては本気で応援しているように見える笑顔を取り繕って、ただ応援すればいい。
だが・・・やはりそのときの俺はまだ完璧ではなかった。中学生という不安定な時期に、自分は人生の脇役だと言い聞かせ、他人に見せて何にも違和感の無い表情を取り繕う。それだけならばまだ簡単だ。それだけなら、小学生も無意識にやってのけることは可能だ。だけど、そこからさき、自分の友達が自分をおいていってしまうのではないかという不安、自分のちょっと好きになりかけている子がだれかの物になってしまうときに感じる嫉妬の念。それに中学生という生き物は押し流されてしまうことが多いい。それはもちろん、俺にも言える事だった。一度恋愛というものに裏切られている俺にとってはそんなもの・・・苦痛でしかない。他人の恋路を応援するなんてまねは、できない。

「・・・ちょっくら図書室行ってくるわ」

そう俺は静かに告げる。すると、今まで歩と楽しそうに話していた愛が

「え?図書室行くの?な、なら私もついていってあげなくも無いよ?」

少しどもったような声で愛はそんなことを言う。その言葉に隠されている真相をなんとなくだが見透かした俺は、勝手にしろ、と無愛想にいって教室からでていく。その後は愛はまるで小動物のようについてくる。教室で歩は、俺が暇だからなるべく早く帰ってこいよーと大声をだしている。
昼休みの喧騒。ギャハハとうるさい笑い声をあげている男子生徒の集団、廊下に座って陣取っている女子生徒の集団。そういった連中の間をすりぬけながら、俺は、図書室とは別の方向を目指す。愛もそれに気がついたらしく、そそくさと俺の隣に歩いてきて、同じペースで歩き始める。
・・・愛が俺についてきた理由、それはおそらく昨日のことで謝らなければならないと思ったのだろう。
それをなんとなくだが感じ取った俺は、愛に気を使って人気の無い場所に行くことにしたのだ。
・・・二人とも黙っていては、なんというか空気が悪い。そもそも俺は愛と喧嘩したわけではないし、愛の昨日の行動は俺に気遣ってくれたためのものだ。感謝こそしても恨むことなんて何一つとしてない。だから俺は、なるべく愛が気を使わない程度に明るい笑顔をみせて、話かける。

「なぁ愛、もうすぐバレンタインだよな?」

「うえぇ!?な、なにいきなり!?」

愛は、俺が話しかけてくると思ってなかったのか、素っ頓狂な声をあげる。俺はそれに笑いそうになるが、今は取り繕った笑顔のほうが自然に見えるだろうからそれを我慢する。愛は俺がニコニコしているのを見て、・・・昨日のこと、怒ってないのかな?と疑問の念を顔にうかべるが、今は人気が多いからそれをいえないでいる。そんな愛に気を使って俺はもう一言声をかける。

「お前この中学はいってさぁ、好きな奴とかできた?」

・・・聊か女子に聞くに対して失礼だとも思うのだが、ただなんとなくこれを聞いてみたかった。べつに愛に答えて欲しいわけではない。
ただ愛に好きな奴が出来ていれば、そいつとの進展を応援するために、心の準備と、笑顔の練習をしなければならないから、速いうちに愛の態度を見ておきたいと思ったのだ。・・・自慢ではないが、俺は他人の感情、心を読み取るのが得意だ。それは別に、相手の心を本当に読んでいるのではなく、表情にでてくる感情を読み取っているに過ぎないが、人間の恋愛的感情というのは読み取りやすいものだ。意識すれば、人は多少うろたえるし、うろたえなかったらそれは本当に好きな人がいないという証だが、多少でもうろたえるようならば・・・そいつには好きな奴、意識しているやつがいる可能性がある・・・と読める。
愛は突然俺のふった話題にどう答えて言いかわからないといったふうな表情になり、一度俺のことを恥ずかしそうにチラッと上目遣いで見てきて、指を胸の前で絡めるように組んで、モジモジとしだす。足取りはおぼつかづ、明らかにうろたえているように見えた。
・・・間違いないな、愛には好きな奴がいる。そんでもって、俺のことを見たということは・・・いつも俺の近くにいる人が好きだっていうことだ。・・・それは歩かもしれないが、そっちの線は薄いと思う。もしかしたら、俺の近くにいるやつではなく、俺が毛嫌いしている奴のことかも知れないし、俺がうざいと思っている奴のことかもしれない。・・・それでもまぁ、愛には好きな奴がいることは、おそらく、間違いはなかった。
それを読み取った俺は、愛がこれ以上困らないように手で制して、

「あー・・・これはなかなかプライベートにつっこんだことだったな、悪い、忘れてくれ」

といって、愛の様子を伺いながら歩き出す。愛はホッとしたように胸をなでおろし、俺の後ろを再びついてくる。さぁて・・・んじゃま、昌子の時みたいに・・・あきらかに避けるような態度をとらないために、今から練習でもしておきますかね。
俺は再び笑顔の愛に見せる。だいぶ人気がなくなってきたからそろそろ昨日ののことに触れておかないといけないし、好都合だ。俺は立ち止まって、あたりに俺たちの会話を聞いているような輩がいないことを確認して、愛にいう。